ホーム/コラム/会計・税務/税務調査の今後の見通しについて
シェア
長谷川 祐哉 Yuya Hasegawa

この記事の著者

長谷川 祐哉 Yuya Hasegawa

パートナー  / 税理士

税務調査の今後の見通しについて

2020年11月20日

2020年の税務調査は、新型コロナウイルスの影響で新規調査の先送りがなされていましたが、10月よりいよいよ本格的に再開されました。コロナ禍で税務調査のやり方等に変化が生じていますので、本記事で詳しく紹介します。

税務調査に関する基本的情報

まずは税務調査に関して理解を深めていきましょう。

税務調査とは

税務調査とは、国税庁や税務署が納税者の税務申告が法律に基づいて正しく実施されているかを確認し、誤りがあれば是正を求める一連の調査です。

日本では国税のほどんど(所得税、法人税、消費税、相続税)が「申告納税方式」によって行われています。申告納税方式とは、納税者自らが税法を正しく理解し、所得に基づいて税額を決定し、納付する制度を指します。

そのため、納付者は自身の所得や税額を計算し、税務申告を行う必要があります。税務調査は、所得を正しく申告しているか、計算方法は正しいか、虚偽の申告はないかなどを確認し、必要であれば是正を求めます。

税務調査の実施時期

税務調査は一年を通して実施されますが、特に多いのが8月から年末ごろといわれています。その理由として、国税庁では人事異動が終わる7月に新事務年度が始まることになっているため、7月以降が新体制での活動に都合がよいためです。他にも、日本で多い3月決算の会社の確定申告が5月末までのため、7月ごろが税務調査に最適という理由もあります。

税務調査の種類

税務調査には「任意調査」と「強制調査」の2種類があります。

任意調査は、納税者の同意の上で行われる調査を指します。電話や文章で1週間以上前に事前通知があり、スケジュールが合わない場合には日程変更も受け付けてくれます。

一方で強制調査は、巨額の脱税や悪質な隠蔽工作の疑いがある場合に、裁判所の令状を得て共生的に実施する調査です。ニュースなどで脱税の疑いで強制調査が行われたと報じられた場合には、こちらの調査を指します。

どちらの調査においても、調査官は強い権利を有していますが、強制調査においては納税に関する資料を押収できるなど、より強い権限があります。脱税行為が特定された場合には検察庁に告発され、刑事事件として処理されます。

コロナ禍での税務調査の概要

コロナ禍では税務調査が一時的にストップしていましたが、10月より再開されました。ただし、新型コロナウイルスが拡大している現状もあり、9月18日に国税庁より公表され「国税庁における新型コロナウイルス感染症の感染防止策について」に従って実施されています。

具体的には以下のような取り組みが実施されます。
・身体的距離の確保
・マスクの着用
・手洗いの徹底
・検温の実施
・咳・発熱の有無の再確認
・3密の回避
・職員人数と滞在時間の縮小

また、テレワークが実施されている現状を踏まえ、スケジュール調整については以前よりも柔軟性が高くなっています。

現地での調査が制限される一方で、電話や書面による調査はより厳しく実施されているようです。現在行われている調査の変更は、新型コロナウイルスの拡大による一時的な変更といえますが、ウィズコロナ以降の税務調査にも大きな影響を与えるであろうことから、今後の動きにも注目が集まります。

税務調査のデジタル化

新型コロナウイルスによる現地調査の困難性と、将来に向けたデジタル化の観点から、税務調査にも変化が見られます

これまでは調査対象者の預貯金情報に係る国税当局と金融機関とのやり取りは書面で行われていましたが、その一部をデジタル化し、オンラインでのやりとりを可能にしています。これにより、人的負担や郵送コストを削減できるとともに、タイムラグを少なくし、迅速な確認が可能になります。

現在はまだ実証実験の最中であり、対象機関は東京国税局、仙台国税局、神奈川県管内及び福島県管内税務署のみですが、今後は全国に拡大していくと考えられています。将来的には、税務調査のデジタル化、オンライン化が実施されるとみて間違いないでしょう。

おわりに

本記事では、コロナ禍における税務調査の現状と、コロナ後の税務調査の予想について紹介しました。今後は税務調査がデジタル化、オンライン化されていくと考えられます。今後の動きにも注目してまいりましょう。

お問い合わせ