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「アンチウイルスだけ」では企業を守れない時代:Microsoft Defender for Endpointが選ばれる理由と導入戦略

「アンチウイルスだけ」では企業を守れない時代:Microsoft Defender for Endpointが選ばれる理由と導入戦略

テクノロジー
2025年12月23日 2 min. read

「ウイルスの検知ソフトは入れているから大丈夫」。 もし、セキュリティ対策に対してこの認識でいる場合は、非常に危険な状態にあるといえるかもしれません。昨今のサイバー攻撃は非常に巧妙化しています。メールの添付ファイルを開かなくても感染する「ファイルレス攻撃」や、正規のシステムツールを悪用して検知をすり抜ける手口が一般化し、従来のアンチウイルスソフト(EPP:Endpoint Protection Platform)だけでは防御しきれない事例が急増しています。 

こうした脅威に対抗するために、多くの企業で導入が加速しているのが、Microsoft社が提供しているエンタープライズ向けエンドポイントセキュリティプラットフォーム「Microsoft Defender for Endpoint」です。 

Microsoft Defender for Endpoint(以下、MDE)は、WindowsPCに標準搭載されていたアンチウイルスである「Windows Defender」に加えて、企業に必要な機能を内包したより強力なプロダクトとなります。MDEは、ウイルスの侵入を防ぐ「予防(EPP)」と、侵入後の脅威を検知して対応する「EDR(Endpoint Detection and Response)」を統合した包括的なセキュリティプラットフォームです。さらに、Microsoft社のクラウドパワーとAI(人工知能)を活用し、世界中から収集される膨大な脅威インテリジェンス(Microsoft Threat Intelligence)を基に、リアルタイムで検知・防御することもできます。 

その他、市場評価も極めて高く、Gartner社が公開する「Magic Quadrant for Endpoint Protection Platforms」では長年にわたり「リーダー」の座を維持してきました1)。さらに 2025 年 5 月、AV-Comparatives が実施したAnti-Tampering Testにおいて、MDEはあらゆる改ざん試行を完全に阻止し、最高評価を獲得しています2。攻撃者がレジストリ改変やサービス停止、マルウェア除外設定の挿入などを試みても、MDEの組み込みアンチタンパリング機能がユーザー権限や管理者権限を問わず不正操作を封じ、攻撃後の隠蔽活動を未然に防ぐことが可能となります。 

では、MDEのような高度なEDRソリューションを導入していない場合、企業や現場はどのような課題に直面し続けることになるのでしょうか。
 

課題①:「侵入されたことに気づけない」サイバー潜伏のリスク 

従来のアンチウイルスソフトは、「既知のウイルス」をブロックすることには長けていますが、近年主流となっているファイルレスマルウェアなど、従来のパターンマッチングに該当しないケースには無力です。また、ランサムウェア攻撃の多くは、侵入してからデータを暗号化するまでに数週間から数ヶ月の「潜伏期間」を設けることがよく見られます。この間、攻撃者は社内ネットワークを探索し、機密データを盗み出す行為など、いくつもの要素があるため、従来のEPPのパターンマッチング「対象ファイルが不審かどうか」を判断するだけでは、脅威を完全に認識することが難しくなっています。結論として、EDR機能を持たない環境では、この「潜伏している攻撃者」を可視化できません。被害が発生し、画面がロックされて初めて「攻撃されていたこと」に気づく状況だと、対応としては遅れが生じてしまいます。
 

課題②:セキュリティツールの乱立による「運用疲れ」とコスト増 

多くの企業では、以下のような「継ぎ接ぎ」の対策が行われています。 

  • PCにはA社のウイルス対策ソフト 
  • サーバーにはB社のセキュリティ製品 
  • 脆弱性管理にはC社のスキャンツール 
  • ログ管理にはD社のシステム 

このように統合されていないツールが存在することで、ライセンスコストの増加だけではなく、管理画面を行き来するIT担当者の負荷(運用コスト)も肥大化してしまいます。
 

課題③:ハイブリッドワーク環境における「境界型防御」の限界 

これまでは社内にファイアウォールやUTM(Unified Threat Management)、IPS/IDS (Intrusion Prevention / Detection System) を設置し、「社内ネットワークは安全、社外は危険」という境界線を引く対策が主流でした。しかし、テレワークやハイブリッドワークが普及した現在、社員は自宅やカフェからクラウドサービスに直接アクセスすることが一般的になっています。 

従って、従業員が業務をする環境・場所によって、統一されたセキュリティポリシーが適用されず、端末の安全性を確保することが困難になります。

MDEを導入することで、企業は「侵入を防ぐ」だけでなく、「侵入を前提としたゼロトラスト型の防御運用」を実現することができます。ここでは、MDEが提供する5つの主要メリットを解説いたします。
 

メリット①:予防から事後対応までを統合(EPP + EDR) 

MDEは、次世代型アンチウイルス(Next Generation Anti-Virus)による強力な「予防」と、侵害を前提とした「検知・対応(Endpoint Detection and Response)」を一つの機能として提供しています。攻撃の予兆を検知すると、管理者へ即座にアラートが通知され、「いつ、どこから、どのように侵入し、どの資産に影響したか」というインシデント情報を時系列で可視化できます。これにより、原因究明にかかる時間を大幅に短縮することができます。
 

メリット②:自動調査と修復(Automated Investigation & Response) 

MDEの特長のひとつが、AI による自動調査・自動修復機能です。従来は専門人材が手動でログ解析・端末隔離を行う必要がありましたが、MDEは検知した脅威を自動的に分析し、必要に応じて「ネットワーク隔離」「悪性ファイルの削除・検疫」などを自律的に実行します。2023 年にはデセプション技術も追加され、攻撃者の挙動を早期に誤誘導し、被害を未然に防ぐ仕組みも強化されています1)
 

メリット③:「脆弱性管理」のリアルタイム化(Microsoft Defender Vulnerability Management) 

MDEには、一般的に他社では別製品となる「脆弱性管理機能」が標準搭載されています。エージェントがリアルタイムで端末状態を監視し、OS やアプリケーションの脆弱性を一覧化するとともに、「優先度」に基づく具体的な修復アクションを提示します。これにより、IT管理担当者はリスクの高い部分から効率よく対策を行うことができ、全体のセキュリティポスチャを継続的に最適化することが可能となります。
 

メリット④:導入の手間がない「エージェントレス」アーキテクチャ 

Windows10/11にはMDEセンサーがOSカーネルレベルに組み込まれており、端末に別途エージェント導入は不要です。クラウド側でライセンスを有効化するだけで即時に防御が開始されます。また、macOSやLinuxなどOSの他に、iOS,AndroidなどのモバイルOSも対応していることから、企業全体のデバイスを統合的に保護することができます。
 

メリット⑤:Microsoft 365 とのシームレスな連携(XDR) 

MDEはMicrosoft 365と密接に連携が可能であり、Microsoft IntuneやDefender for Office 365と連携してより統合的なXDR(Extended Detection and Response)を実現します1)。また、ログ分析基盤として有名なMicrosoft Sentinel(SIEM)やSecurity Copilot(AI SOC 支援基盤)とも連動し、分析の自動化ルールやプレイブックで全体を管理することが可能となります。これにより、専門人材不足の課題を解消しながら高い運用レベルを維持することを期待できます。

Microsoft Defender for Endpointは、極めて高性能なエンドポイント防御ソリューションです。しかし、最大限の効果を引き出すには、適切な初期設定、継続的な運用体制、経営視点でのリスク管理が不可欠です。「ライセンスだけ購入し、設定はデフォルトのまま」「アラートが氾濫して重要通知を見落とす」といった状況では、投資効果を十分に発揮できません。 

RSM汐留パートナーズがアプローチする際の強みは、単なる技術支援を超えた「業務理解に基づくソリューション提供」にあります。例えば、会計データの処理においては、単に技術的なデータ変換だけでなく、会計基準やコンプライアンス要件を踏まえた適切なデータ処理手法を提案します。また、データガバナンスやセキュリティ面でのベストプラクティスも併せて提案し、安全かつ効率的なデータ活用環境の構築をサポートします。 

PCを守ることは、会社の信用と未来を守ることです。 Microsoft Defender for Endpointの導入や運用などをご検討の際は、ぜひ当社の「サイバーセキュリティ支援」と「業務DX支援」を一度ご確認していただけたら幸いです。
 

参考資料 

1)Microsoft is a Leader in the 2023 Gartner® Magic Quadrant™ for Endpoint Protection Platforms | Microsoft Security Blog 

2)Defender for Endpoint successfully passes the AV-Comparatives 2025 Anti-Tampering Test | Microsoft Community Hub 

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