ESG・サステナビリティの領域は、まだ一般的に十分理解されていない――私たちRSM汐留パートナーズは、最近あらためてそのことを実感しています。実際、クライアントや周囲の方から「サステナビリティコンサルタントとは、具体的にどんな仕事ですか?」と問われる場面も少なくありません。
私たちが「企業が環境・社会・地域・従業員・取引先などに与える影響を適切にマネージし、リスクと機会を踏まえた経営を進めるための助言・支援を行っています」と説明しても、すぐに業務イメージが湧かない反応をいただくことがあります。サステナビリティは、カタカナ用語が多く対象範囲も広いため、会計・税務や監査、労務といった専門業務に比べて“具体像”を描きにくいのかもしれません。
ただし本質は、“特別な取り組み”ではなく、日々の事業活動の中にすでに存在しています。そこで本稿では、まず多くの企業にとって具体化しやすい環境(E)を切り口に、サステナビリティを「実務として回る形」に落とし込むためのポイントを整理します。
1. 環境(E)は「見える化」から始めやすい
製造業、物流業、卸小売業などでは特に、環境(E)の論点が事業活動と直結しやすく、最初の一歩を踏み出しやすい傾向があります。たとえば、次のような管理項目は多くの企業で共通して登場します。
- 電気・燃料などエネルギー使用量の管理
- 廃棄物量の管理
- 省エネや紙使用量の削減
- CO2排出量の把握・管理
ここで重要なのは、「何かやっている」こと自体よりも、経営として管理できる状態になっているかです。よくある“つまずき”は次の3つです。
- データ・実績は取れているが、目標達成に届かない/改善が進まない
- 施策はあるが、効果が見えにくい(どれが効いたか分からない)
- 取り組みが特定の担当者に依存していて、継続性が弱い
たとえば拠点や部門ごとに集計方法が異なる、年度で算定ルールが変わる、証跡(根拠資料)が散在している――この状態だと、継続的な改善(PDCA)が回りにくくなります。まずは「数字の取り方」を揃え、同じ物差しで追える状態をつくることが、現実的な近道になります。
2. 会計税務業務とつながる「環境(E)」の実務
サステナビリティは環境活動そのものだけでなく、今後ますます会計税務業務とも結びついていきます。ポイントは、環境の取り組みが次の流れで“経営に組み込まれていく”ことです。
- 測る(計測・算定)
- 管理する(統制・モニタリング)
- 開示する(報告・説明責任)
- 経営に反映する(投資判断・戦略)
具体的には、次のような論点が実務テーマになり得ます。
- 気候変動・生物多様性などに関するリスク/機会の財務影響をどう見積もるか
- グリーン関連の優遇制度の活用可能性(投資・税務の観点)
- サステナビリティ投資の予算管理・投資評価(費用対効果、回収見込み)
- 環境データの内部統制・内部監査(データの正確性、再現性、証跡)
環境(E)は「現場の努力」で終わらせず、数字とルールで運用できる形に整えるほど、社内外への説明がしやすくなり、意思決定にもつながります。
3. まずは公開情報の整理で、自社の現在地をつかむ
「何から始めればよいか分からない」ときは、いきなり難しい枠組みに入るより、自社の現状を整理するのが先です。社内資料が揃っていなくても、以下を確認するだけで方向性が見えやすくなります。
- 自社Webサイト(環境方針、取り組み、ニュース)
- 有価証券報告書/統合報告書(発行している場合)
- サステナビリティレポート(発行している場合)
チェックしやすい観点は次のとおりです。
- 重点テーマ(マテリアリティ)、KPI、目標年次
- 再エネ・省エネ・資源循環・廃棄物削減・物流効率化などの重点領域
- サプライチェーンや調達方針、取引先への要請への対応状況
- 推進体制(責任者、部門、社内ルール、教育など)
「書けていること」は強みの整理になりますし、「書けていないこと」は、社内でのデータ不足や体制不足が表面化しているサインでもあります。
4. “取り組み”を「続く仕組み」にするための着手ポイント
環境(E)の取り組みを継続的に回すには、次の3点を最小単位で整えると効果が出やすくなります。
- 対象範囲を決める
まずは全社一斉ではなく、主要拠点・主要工程・主要商材など、影響が大きい領域から始める。 - 数字の取り方を揃える
集計方法・算定ルール・証跡の置き場を統一し、「毎年同じやり方で追える」状態にする。 - 意思決定につなげる
単なる実績集計にせず、目標・投資判断・施策評価(どれが効いたか)までつなげる。
この3点が揃うと、環境(E)が“現場の努力目標”ではなく、経営管理の一部として機能し始めます。
5. まとめ
ESG・サステナビリティは抽象的に見えますが、環境(E)から入ると、エネルギー・廃棄物・CO2など具体的な管理項目に落ちやすく、実務として前に進めやすくなります。大切なのは「やっているか」ではなく、データを揃え、継続的に管理し、経営判断に反映できる状態にすることです。
「社内に点在するデータをどうまとめればいいか」「どこまでを対象にするべきか」「開示や取引先要請に耐える形にしたい」など、論点整理が必要な場合は、外部の専門家を活用して効率的に“型”を作るのも有効です。
