ファミリービジネスコンサルタントとは
2024年5月16日
はじめに
ファミリービジネスコンサルタントとは、ファミリービジネスに関連した課題解決に特化した専門的なコンサルタントのことを指します。これらのコンサルタントは、ファミリービジネスの独特な課題や機会に対処するための専門知識と経験を有しています。
1つの方法として、ファミリービジネスの特徴を表しているスリーサークルモデル(ビジネス・オーナーシップ・ファミリー)から総合的に課題解決に向けてアプローチを行います。今回はファミリービジネスコンサルタントの役割や、依頼するメリットについてご紹介します。
ファミリービジネスコンサルタントの役割や活動内容
ファミリービジネスコンサルタントは、ファミリービジネス特有の課題を解決するために、経営の様々な側面で支援を提供しています。以下は、その主な支援内容です。
(1)ビジネスに関するサポート
① 経営助言
ファミリービジネスコンサルタントは、一族から詳細なヒアリングを行い、外部の専門家としての視点から具体的な経営アドバイスを提供します。このプロセスを通じて、経営陣の意思決定をサポートし、企業の目標達成を助けます。
② 中期的な経営計画の策定支援
ファミリービジネスの持続可能な成長には、長期的な計画が不可欠です。コンサルタントは、その専門知識を活かして中長期的な経営戦略の立案に協力し、企業の将来ビジョンと目標設定を明確にします。
③ 業績管理制度の構築と実行支援
多くの企業では経験に基づく業績管理が行われがちですが、それにより問題点が見過ごされることがあります。ファミリービジネスコンサルタントは、管理会計の原則に基づいて、効果的な業績管理制度の構築を支援し、その実行を通じて業績改善を図ります。
④ 新規事業開発のサポート
時代の変化に対応し持続可能な経営を実現するためには、適切な事業多角化が有効です。コンサルタントは、新規事業のリスク評価や管理の複雑化を避けるための戦略立案を支援し、事業の方針から実行まで支援します。
⑤ 後継者および経営幹部の育成支援
ファミリービジネスでは、後継者の早期育成が重要です。コンサルタントは、実践的なスキルトレーニングやリーダーシップ教育を提供し、後継者が効果的にビジネスを引き継げるよう支援します。
⑥ コーポレートガバナンスの構築と実行支援
適切なガバナンス構造は、不正行為の防止と組織の透明性向上に寄与します。コンサルタントはファミリービジネスに合ったガバナンスフレームワークの開発と実装を支援し、健全な企業運営を促進します。
(2)オーナーシップに関するサポート
① 企業体制についての支援
次世代への株式譲渡をスムーズに行うため、ファミリービジネスの特性に深い理解を持つコンサルタントが企業体制の見直しをサポートします。このプロセスには、継承計画の策定、リスク管理、および継承後の経営安定化のための戦略が含まれます。ファミリービジネスコンサルタントは、ヒアリングから詳細な検討、具体的な実行計画の策定まで、一族の意向を尊重しつつ密接に協力して取り組みます。
② 資産の承継支援
株式や不動産などの資産が次の世代に円滑に引き継がれるよう、適切な承継戦略の立案と実行のサポートを行います。このプロセスは、法的要件の確認、税務効果の最適化、さらには資産管理のための体系的なアプローチを包含します。承継プロセスの透明性を保ちながら、全体の家族の利益と企業の持続可能性を確保するための支援を提供します。
③ 企業ガバナンスの支援
効果的なガバナンス構造の構築を通じて、企業の長期的な成功を支えます。株主構成の最適化、取締役会の機能強化、監査体制の整備など、ファミリー企業に特有のニーズに応じた組織作りを支援します。ファミリービジネスコンサルタントが、一族のビジョンと企業文化に根ざしたカスタマイズされたアプローチで、ガバナンスの確立を促進します。
(3)ファミリーに関するサポート
① 家族に対する取り決めの設定
ファミリービジネスでは、永続的な企業経営を実現するために、家訓や家族間の倫理規定を明確に設定することが重要です。これらの規定は、事業の基本的な価値観や運営方針を形成し、次世代のリーダーへ教育と伝承に不可欠です。ファミリービジネスコンサルタントは、企業独自の文化と価値を踏まえた家訓の策定を支援し、これを具体的な行動指針として機能させる方法を提案します。結果として、後継者たちは企業の理念を深く理解し、運営に活かすことが可能になります。
② 家族間のコミュニケーションの支援
ファミリービジネスにおける透明性の高いコミュニケーションは、事業の成功に直接影響を及ぼします。定期的な家族会議や親族会議を設けることで、家族間のコミュニケーションを促進し、重要情報の共有と理解を深めます。会議では、事業の現状報告、将来戦略の設定、後継者問題の討議などが行われ、家族が共通のビジョンと目標に基づいて協力する基盤が構築されます。これにより、ファミリーガバナンスが強化され、経営の効率と効果が向上します。
③ 家族問題についての相談
ファミリービジネスでは、家族構成員の期待やビジネス上の役割が複雑に絡み合うことで、特有の問題が生じることがあります。これらの問題は、未解決のままでは企業の成長や健全な運営を妨げる可能性があります。専門的なカウンセリングや中立的な立場からのアドバイスを通じて、家族内の対立や緊張を解消するための具体的な解決策が提供されます。このようなサポートにより、家族間の調和が促進され、ビジネスの持続可能性が向上します。
ファミリービジネスコンサルタントを活用するメリット
上述の通り、ファミリービジネスコンサルタントは広範なサポートを通じて、企業が直面する多様な課題に対応し、持続的な成長と成功を目指すファミリービジネスを効果的に支援しています。ここでは、ファミリービジネスコンサルタントを活用するメリットについて3つご紹介いたします。
(1)専門的かつ客観的なアドバイス
ファミリービジネスを運営する家族は、後継者選びや内部の問題解決など、特有の課題にしばしば直面します。これらの問題は、家族だけの力で解決することが難しい場合があります。ファミリービジネスコンサルタントは、専門的な知識と客観的な視点を提供することで、感情に左右されがちな家族内の問題を効果的に解決へと導きます。外部の専門家に相談することで、プライバシーを守りつつ、適切な解決策を見つけることが可能です。
(2)事業承継のコスト削減
事業承継の過程で発生する相続税や贈与税などの税負担は、計画なしに進めると企業財政に重大な影響を及ぼすことがあります。ファミリービジネスコンサルタントは、これらの税金の最適化を図るために税理士と連携し、節税が可能な戦略を提案します。専門家のアドバイスにより、法的な規定を最大限に活用しながら、承継にかかるコストを効果的に削減することができます。
(3)後継者のサポート
事業承継を成功させるためには、現経営者と後継者間の思想の隔たりを埋め、円滑なバトンタッチを行うことが重要です。ファミリービジネスコンサルタントは、中立的な立場から両者の意見を調整し、後継者がリーダーシップを発揮できるようサポートします。コンサルタントの介入により、経営の連続性を保ちつつ、新しい視点を事業に取り入れることが可能となります。
コンサルタントの選定にあたって
ファミリービジネスコンサルタントを選ぶ際は、適切な候補者を選ぶことが業務の成功に直結します。以下のポイントを考慮することがパートナーの選定には欠かせないと言えます。
(1)専門知識と経験の有無
コンサルタントがファミリービジネス業界にどれだけ精通しているか、そして過去にどのような成功事例を持っているかを確認することは非常に重要です。特に、貴社と類似した業界や問題を扱った経験があるかどうかが、そのコンサルタントが貴社の特定のニーズにどれだけ効果的に応えられるかを示す指標となります。
(2)コミュニケーション能力の有無
ファミリービジネスコンサルタントは、家族構成員各々との円滑なコミュニケーションを保つ能力が必須です。敏感な話題や対立する意見を巧みに扱うスキルも求められます。これにより、全ての関係者が同じ目標に向かって一致団結できるように導くことが可能です。
(3)倫理観と信頼性の有無
ファミリービジネスでは、コンサルタントが家族のプライベートな情報に触れることが多く、そのため高い倫理観と秘密保持の誓約が必要です。信頼できるコンサルタントの選定は、情報の安全性と家族の安心感を確保する上で不可欠です。長期にわたる関係構築が見込まれるため、信頼性の高いコンサルタントを選ぶことが望ましいです。
(4)対応の柔軟性の有無
ファミリービジネスはその性質上、企業ごとに独自の課題やニーズを持っています。コンサルタントはこれらの個別の要件に柔軟に対応し、カスタマイズされた解決策を提案する能力が求められます。
これらの基準に基づきコンサルタントを選定することで、ファミリービジネスはコンサルタントの提供するサービスから最大限の価値を引き出すことができます。初期の面談や相談を通じて、両者の期待を明確に合わせることも、成功への重要なステップです。
おわりに
今回はファミリービジネスコンサルタントの役割や、依頼するメリットについてご説明しました。ファミリービジネスコンサルタントには様々な者がおり、得意分野は各々異なっていることに留意が必要です。