スポーツチームで外国籍の選手・監督・コーチと契約する際、「この方は日本の所得税法上、非居住者として扱えるのか?」は実務上とても重要な論点です。非居住者か居住者かで、課税関係や源泉徴収の設計、社内オペレーションの難易度が大きく変わるためです。
ここでは、法令上の定義に加え、国税庁の考え方(タックスアンサー)を踏まえた“実務で非居住者と認められやすい要件”と、税務調査で確認されやすいポイントを整理します。
Q. チーム契約している外国籍選手・監督・コーチ等を非居住者として取り扱うための条件を教えてください。
A.法令上、次の 2つの要件を充足している者は、所得税法上の非居住者として取り扱われます。(所得税法第2条第1項第3号)
- 国内に住所を有しないこと
- 現在まで引き続いて1年以上居所を有しないこと
なお、次の3つの条件を充足している場合には、外国籍選手・監督・コーチ等は非居住者として認められます。
【非居住者とされる実務要件】
①シーズンオフに日本の居住場所を引き払う形態であること
②契約期間が1年以下であること
③家族の帯同がないこと
※国税庁タックスアンサーNo.2012
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2012_qa.htm
【解説】
1.非居住者とは「居住者以外の個人」をいい、居住者とは「国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人」をいいます。(所得税法第2条第1項第3号/第5号)
したがって、国内に住所を有する者は「居住者」になりますが、国内に居所を有する者については、次のようになります。(所得税基本通達2-3)
【入国後の居住区分】
| 状況 | 区分 |
| 入国後1年を経過する日まで、国内に住所がない | 非居住者 |
| 入国後1年を経過する日の翌日以後 | 居住者 |
| 入国直後には国内に住所がなく、入国後1年を経過するまでの間に住所を有することとなった場合 | 住所を有することとなった日の前日まで:非居住者 住所を有することとなった日以後:居住者 |
2.なお、国内に居住することとなった個人が、国内において、継続して1 年以上居住することを通常必要とする職業を有する場合は、その者は、国内に住所を有する者(居住者)と推定されます。(所得税法施行令第14 条第1項第1号)
また、国内において職業に従事するため国内に居住することとなった者は、その地における在留期間が契約等によりあらかじめ1 年未満であることが明らかであると認められる場合を除き、これに該当するものとされます。(所得税基本通達3-3)
したがって、外国籍選手・監督・コーチ等との契約が1 年以上となっている場合は、これらの者は国内に住所を有する者(居住者)と推定されます。
3.また、シーズンオフに帰国せず、現在まで引き続いて1年以上居所を有する者は居住者に該当することとなります。
【実例】
上記で記載した「国税庁タックスアンサー」で示されている3要件につきましては、実際の税務調査時には以下のような確認や判断が入る可能性があります。
1.シーズンオフに居住場所を引き払う形態となっていること
⇒所属チームで外国籍選手の住居を借り上げている場合には、毎年の帰国時に住居においてある荷物はどうしているか、鍵の引渡方法、退去後に部屋にクリーニングを入れているかなど実質面の確認がされました。
また、選手個人で車を有している場合やペットを飼っている事実がある場合には、シーズンオフになった場合にどう処理しているかを細かく確認されたケースもあります。
2.外国籍選手・監督・コーチ等との契約が1年以下となっていること
⇒1年契約となっていても、自動更新等の条項が入っている場合やプレスリリースにより前年から来年の契約が決まっていることが公表されている場合には、実質的には1年超の契約であると判断される可能性があります。
3.家族の帯同がないこと
⇒住居の賃貸借契約書等で居住者の中に家族がいないか確認されます。
たとえば子供が日本の学校に通っている場合には、バカンス時の一時滞在ではなく、一緒に住んでいるものとして家族の帯同ありと認定されてしまう可能性が高いようです。
ポイントは、「形式(契約書の文言)」だけでなく「実態(生活の本拠がどこにあるか)」が必ず見られることです。特に、住居の扱い・荷物の残し方・車やペットの保有・契約更新条項の有無・家族の同居状況(子の就学を含む)などは、税務調査で“生活の継続性”を判断する材料になりやすく、非居住者判定を左右します。
実務対応としては、非居住者として取り扱う前提であれば、①シーズンオフの退去実態が説明できる運用、②実質的に1年超と見られない契約設計(自動更新・既公表情報に注意)、③家族帯同の有無を裏づけられる資料整理までをセットで整備しておくことが、リスク低減につながります。
