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建設業における下請代金支払遅延等防止法の概要と留意点

建設業における下請代金支払遅延等防止法の概要と留意点

建設業
2025年7月1日

近年、原材料やエネルギーにかかるコストの高騰を背景に、親事業者が下請事業者への価格転嫁を十分に行わないケースが見受けられ、これを問題視する声が高まっています。このような状況を受け、下請法の見直しに向けた検討が進められています。こうした動きに呼応するかたちで、日本建設業連合会は2025年3月、「下請取引適正化と適正な受注活動の徹底に向けた 自主行動計画」の3回目となる改定を実施しました。

本稿では、下請企業の立場を守ることを目的に策定されたこの自主行動計画について、その背景や概要を詳しく解説します。

「下請取引適正化と適正な受注活動の徹底に向けた自主行動計画」とは、親事業者と下請事業者との間の公正な取引を促進し、下請事業者の権利を保護するために、各業界団体が自主的に策定・実行する計画のことです。

本計画は、下請代金支払遅延等防止法(いわゆる下請法)をはじめとする関連法令の確実な遵守を図ると同時に、以下に示す多岐にわたる取り組みを積極的に展開していくことを目的としています。

  • 下請取引における公正な関係の構築
  • 下請代金の公正な設定と円滑な支払いの実施
  • 不当な値引き要求や支払いの遅延を回避する取り組み
  • 適正な費用負担のルール確立
  • 契約内容を明確にするための書面化の徹底
  • 公平な受注活動の積極的な推進
  • 発注者側からの適切な契約条件による受注
  • 原価を下回るような不当な価格での受注を防止
  • 見積・契約における透明性の確保
  • 働き方改革への積極的な対応・協力
  • 労務費・原材料費・エネルギーコストなどの上昇分の適正な価格反映
  • 約束手形の2026年以降の利用廃止に向けた準備・対応
  • 電子化による受発注業務の効率化(電子受発注システムの導入)

本計画は、各業界が抱える固有の事情や課題を踏まえ、業界団体ごとに自主的に作成・実行される仕組みであり、その具体的な取り組み内容は業種によって異なります。

内閣府の景気ウォッチャー調査によれば、景気は緩やかな回復基調にあると見られていますが、経済の好循環を中小企業にも波及させていくためには、下請企業の取引条件の改善が必要とされています。このような状況を受けて、建設業界では中核的な団体である日本建設業連合会に対し、下請取引の是正を目的とした自主行動計画の策定が求められました。これを受け、同連合会は2025年3月に当該計画の内容を見直し、改定を実施しています。

具体例として、下請企業の公正な保護と受注プロセスの透明化を図るため、次に挙げる項目が重要な焦点となっています。

元請と下請の間では、公平な契約を締結し、一方的な条件変更や不当な取引条件を排除する必要があります。とりわけ、労務費や材料費など実際にかかるコストを適切に反映させることが重要です。通常発生する原価を下回る金額で請負代金を設定しないこと、また元請が一方的に決めた金額(いわゆる指値)で発注しないことを厳守するよう強調されています。

受注の過程においては、発注者からの指示内容や価格の決定理由について、十分な説明責任を果たし、プロセスの透明性を確保することが不可欠です。価格交渉についても、公平で客観的な基準に基づいて進める姿勢が求められています。加えて、施工責任範囲や条件などを正確に反映した合理的な請負金額や工期の設定のためには、見積依頼時に具体的な条件を明示し、書面で提示することが推奨されています。

過剰なコストカットを前提とした不適切な受注行為を排除することが重要とされています。具体的には、過大な値引き要請や現実的でない納期の設定を行わず、業務が支障なく遂行できる環境を整えることが求められています。

下請企業における職場環境の向上を図るためには、長時間労働の是正や適正な賃金の支払いを積極的に推進することが重要です。あわせて、働き方改革への対応を支援し、建設業界全体として労働環境の底上げを目指す動きが求められています。さらに、工期の設定にあたっては、十分な休日の確保も見積条件として配慮すべき要素とされています。

下請代金は、可能な限り手形ではなく現金で決済する比率を高めることが望ましいとされています。やむを得ず手形を使用する場合でも、回収期間は60日以内に収まるよう努める必要があります。さらに、正当な理由のないまま保留金として代金の一部を長期間支払わないことがないよう、十分に注意しなければなりません。

前述のような行動計画も、実際に効果を発揮しなければ現場の改善にはつながりません。こうした状況を踏まえ、中小企業庁では「下請Gメン」と呼ばれる取引調査員による実地調査を実施しています。この調査は守秘義務を前提とし、下請中小企業などを訪問して、現場の状況について直接ヒアリングを行うものです。

これまでの調査では、以下のような事例が報告されており、こうした課題を受けて改善に向けた基準の見直しが進められてきました。

  • 「発注予定額の○○%」といった根拠のない一律の値引きを求められたケース
  • 光熱費や原材料費の上昇分の価格転嫁を申し出たところ、「他の企業からは聞いていない」「御社だけだ」と否定的に対応された事例
  • 金型の返却や保管費用の負担について申し入れたが、発注者側が取り合わなかった例
  • 支払いが手形で行われ、資金の受け取りまでに数ヶ月を要し、資金繰りに悪影響を及ぼしたケース

こうした実態が明らかになったことにより、制度や運用の見直しが行われてきています。

近年、原材料費や人件費の上昇に伴い、最終消費者への価格転嫁が進んでいる一方で、転嫁しきれなかったコストの負担が下請企業に押しつけられるようなケースも依然として見受けられます。発注側・受注側の双方においては、業界ごとの行動計画の見直し内容などを把握したうえで、自社の取引実態や労務環境がその基準に沿っているか、あらためて点検・確認することが望まれます。

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