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ESGの「S(社会)」から始める:ミドルマーケットで起きやすい主要課題と、まず着手すべきポイント

ESGの「S(社会)」から始める:ミドルマーケットで起きやすい主要課題と、まず着手すべきポイント

ESG・サステナビリティ
2026年2月25日

ESGというと「E(環境)」が注目されがちですが、実は多くの企業にとって話題にしやすく、案件化のきっかけにもなりやすいのが「S(社会)」です。働き方、人材育成、人権、サプライチェーン、製品安全、地域貢献──Sのテーマは業種や規模にかかわらず“自社に関係する論点”が必ず存在します。

一方でミドルマーケット(中堅・中小企業)では、専任体制や情報整理の余力が限られ、対応が属人的になったり、取引先からの要請に後追いになったりしがちです。

そこで本コラムでは、S領域で頻出する主要課題を6つに整理し、ミドルマーケットで起きがちなつまずきと、最初に整えるべきポイントをまとめます。

Sは「良いことをしているか」という印象論ではなく、以下のような経営課題と結びつきます。

採用・定着:働き方、育成、ハラスメント対応、心理的安全性
取引継続:人権配慮、労働慣行、責任ある調達、適正表示
リスク低減:不祥事、品質事故、情報漏えい、コンプライアンス違反
信頼・ブランド:説明の一貫性、透明性、再発防止の実効性

特に近年は、サプライチェーン全体での人権配慮や労働慣行、情報管理、適正表示などについて、「説明できる状態(方針・運用・証跡)」が求められる場面が増えています。
そのためSは、後回しにしづらいテーマになりつつあります。

ここでは、Sの論点を6つに整理します。まずは「自社にとって影響が大きい領域はどこか」を見立てることが出発点になります。

  • 安全衛生、福利厚生、働き方など「安心して働ける環境」整備
  • DEI(多様性・公平性・包括性)、ジェンダー平等、育児・介護との両立支援
  • エンゲージメント向上、人材育成(スキル開発)、生産性向上

よくある論点
制度はあるが運用が浸透していない/評価・育成の仕組みが成長スピードに追いつかない

  • 強制労働・児童労働、差別、ハラスメント等の人権リスクの特定・管理(サプライチェーン含む)
  • 説明責任・透明性・倫理行動・人権尊重の実践

よくある論点
方針や窓口はあるが、社内外に説明できる“運用の型”がない

  • 調達先の人権侵害・労働問題への対応
  • 責任ある調達、デューデリジェンス(国際規制対応含む)
  • ESGリスクの可視化・モニタリング(地政学リスク・労働慣行含む)
  • Scope3を含むバリューチェーン管理(気候×社会リスクの統合)

よくある論点
調達アンケート対応が場当たり的/サプライヤー管理が担当者依存

  • 品質管理・製品安全、事故防止、適正表示、広告倫理
  • 顧客データ・プライバシー保護(情報セキュリティ含む)
  • 顧客満足度向上、苦情処理対応

よくある論点
トラブル時の初動フローが曖昧/データ管理ルールが現場で統一されていない

  • 地域社会との連携・共創(教育・文化・地域産業振興など)
  • 災害復興・地域活性化への取り組み、社会インフラへの貢献
  • 社会課題解決への投資(SDGsとの連動)

よくある論点
活動はあるが「目的・成果・事業とのつながり」を言語化できていない

  • 腐敗・贈収賄防止、公正な競争、コンプライアンス
  • ステークホルダーの利害尊重、透明性確保
  • 社会的影響を踏まえた責任ある経営判断

よくある論点
規程はあるが教育・証跡が弱い/現場判断のブレが大きい

Sはテーマが広い分、典型的に次の状態に陥りやすい傾向があります。

  • 兼務で回しており、優先順位が決まらない(結果、後追い対応になる)
  • 制度や方針はあるが、運用が属人的(担当者が変わると止まる)
  • 証跡が残らず、取引先要請に回答しにくい(「言っている」だけになりがち)
  • 社内外への説明が整理されていない(活動の意義が伝わらない)

この状態を抜ける近道は、「全部やる」ではなく、重要論点を絞って運用の型を作ることです。

ステップ1:論点を絞る(全部を同時に追わない)

6テーマのうち、まずは以下の観点で優先順位をつけます。

  • 事故・不祥事が起きた場合の影響が大きい領域(品質・情報管理・ハラスメント等)
  • 取引先要請が増えている領域(調達・人権・情報管理等)
  • 採用・定着に直結する領域(働き方・育成・職場環境等)

ステップ2:「方針」より先に「運用」を確認する

方針があっても、運用が回っていないと実効性が弱く見えます。
最低限、次の3点を押さえます。

  • 誰が責任者か(役割分担)
  • どう判断するか(基準・フロー)
  • 何を残すか(記録・証跡)

ステップ3:証跡が残る仕組みにする

取引先要請や監査対応で困るのは「説明の材料が散らばっている」状態です。
会議体、教育記録、事故対応ログ、相談窓口の対応記録など、残すべき情報の型を決めておくと、対応が安定します。

  1. 何を重要課題(マテリアリティ)としているか
  2. S領域で強調している取り組みは何か(人的資本、人権、調達、品質、地域など)
  3. 逆に整理できていない論点は何か(=会話の入口になりやすい)
  • 人的資本:評価・育成・働き方のルールは、現場で同じ運用になっているか
  • 人権:相談窓口の受付〜調査〜是正〜再発防止まで、手順と記録はあるか
  • 調達:サプライヤー情報(リスク・契約・確認事項)を継続管理できているか
  • 品質/情報:事故・苦情・漏えい時の初動フローと判断基準が明確か
  • 地域:活動の目的・成果・事業とのつながりを社内で説明できるか
  • コンプライアンス:教育の実施記録、判断の根拠、例外対応のルールが整っているか

ESGのS(社会)は、採用・定着、取引継続、品質・情報管理、コンプライアンスなど、企業の実務と強く結びつく領域です。ミドルマーケットでは、専任不在や属人化により「後追い対応」「証跡不足」に陥りやすい一方、論点を絞って運用の型を整えるだけでも、対応の安定度は大きく高まります。

「自社のS領域をどこから整理すべきか分からない」「優先順位をつけたい」という場合は、現状に合わせて

  • 確認すべき論点の整理
  • 想定リスクと優先順位
  • まず整えるべき運用(手順・記録)のたたき台

を短くまとめたサマリーレポートとして作成することも可能です。ぜひお気軽にご相談ください。

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