商業登記関係 匿名組合
匿名組合とは
匿名組合とは、匿名組合員(出資者)が営業者の営業のために出資をし、その営業より生じる利益の分配を匿名組合員が受けとることを約束する契約形態をいいます。
実際に事業を行う人(営業者)とお金を出す人(匿名組合員)の2名のみが契約の当事者となり、2名を超える当事者間で匿名組合契約を締結することはできません。
Aという営業者がいた場合、A(営業者)とB(匿名組合員)が匿名組合契約を締結し、それとは別にA(営業者)とC(匿名組合員)が匿名契約を締結することはできます。1つの匿名組合契約には2名(営業者1名と匿名組合員1名)しか登場することが許されていないだけ、ということになります。
匿名組合の大きな特徴は、その名のとおり匿名性にあるといえます。例えば民法上の任意組合においては、組合員全員が組合契約を締結するため、上記の例でいえばAとBとCが3者で契約をすることになりますので、BとCはお互いがA(あるいはXという事業)に対して出資をしていることを分かってしまいますが、匿名組合ではそのようなことがありません(BがAに出資していることを、Cは知りませんし、その逆も然りです)。
匿名組合の一般的な特徴
その他の匿名組合の特徴は、次のとおりです。
契約当事者は個人でも法人でもOK
営業者、匿名組合員ともに個人でも法人でも問題はありません。
パススルー課税
匿名組合に対する課税は、匿名組合にではなく、直接営業者及び匿名組合員に課税される、いわゆるパス・スルー課税とされています(匿名組合員の方はペイスルー課税)。詳しくは汐留パートナーズ税理士法人にお問い合わせください。
出資された財産は営業者のもの
匿名組合員が営業者に出資をした財産は、営業者の所有となります。匿名組合員には所有権がありません。
事業における第三者への責任
営業者が行った事業につき、第三者に対してその責任が生じた場合は全て営業者が負います。つまり、匿名組合員は営業者が行った事業に責任を負いません。ただし、自分の氏名等の使用を許諾した匿名組合員は除きます。
匿名組合員は有限責任
上記のとおり、営業者が行った事業につき責任は負いませんが、出資をした額を限度として、損失の分配はします。特約があったときは、この限りではありません。
地位の譲渡
匿名組合では、営業者・匿名組合員がその地位を譲渡するときは、相手方の同意が必要とされています。
納税
組合自体は納税はしません。営業者と匿名組合員がそれぞれ納税を行います。
匿名組合の終了
匿名組合は、当事者どちらかの破産、契約で定められた解散事由の発生、存続期間の満了、営業者の死亡、事業の成功・失敗などによって終了します。
残余財産の分配
匿名組合が終了したときは、営業者は匿名組合員に出資の払戻しをする必要があります。なお、匿名組合員が目的事業による損失を負担する必要があるときはその差額は考慮します。
組合終了後の営業
匿名組合が終了した後も、営業者はそのまま営業を継続して行っていくことができます。
匿名組合と税務
匿名組合が終了した後も、営業者はそのまま営業を継続して行っていくことができます。
登記は不要
有限責任事業組合(LLP)や投資事業有限責任組合(LPS)と異なり、匿名組合においては法務局への登記申請は不要です。
税制面の検討
匿名組合を選択されるのであれば税制面での検討・シミュレーションは必須といえます。汐留パートナーズグループでは、法務面・税務面ともにワンストップで対応可能ですので、お気軽にお問い合わせください。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。