商業登記関係 株式会社、合同会社、一般社団法人の商号(名称)の法的なルール
会社の商号
株式会社や合同会社は、その名称を商号とすると定められています(会社法第6条1項)。
つまり、会社の名前のことを会社法上は「商号」といいます。
一般社団法人においては、法人の名前は「名称」と表現します。
以下、ここでは株式会社、合同会社及び一般社団法人を合わせて「会社等」といい、商号及び名称を合わせて「商号等」といいます。
原則として、商号等は自由に決めることができますが、いくつか守らなければならないルールがあります。
主に、会社等を設立する場面において、商号等を決める際のご参考になりましたら幸いです。
1.使用可能な文字
商号等に使用可能な文字は決まっており、次のとおりです。
- ひらがな
- カタカナ
- 漢字
- ローマ字(大文字、小文字)
- アラビヤ数字(1 2 3 4 5など)
- 符号(&(アンパサンド)・(中点)‐(ハイフン),(カンマ)など)
※上記のうち「5.符号」は文字を区切る場合にのみ使用することができます。また、ピリオドについてはローマ字の後ろに、その省略を表すものとして使用することができます。
株式会社&アニマル
合同会社プラス.マイナス
株式会社・(カブシキカイシャナカグロ)
※「スペース」はローマ字で複数の単語を用いるときに、その単語の間においてのみ使用することができます。
株式会社汐留 パートナーズ
合同会社 汐留パートナーズ
株式会社汐留 アンド パートナーズ
2.使用不可能な文字、単語
一定の単語は、その商号に使用することができません。
- ローマ数字(ⅰ、Ⅱ、ⅲなど)
- カッコ(「 」( )【 】など)
- 銀行、生命保険、信託などの文字は、基本的には使用できません。
- 公序良俗に反する文字は使用できません。
- ○○営業所、○○支店などの文字は使用できません。
- 有名企業と全く同じ商号は誤認される恐れがあるので使用しないほうがいいでしょう。
株式会社汐留パートナーズⅡ
合同会社汐留パートナーズ(2号)
株式会社汐留パートナーズ銀座営業所
3.商号に株式会社、合同会社という文字が必要
会社・法人はその商号に、会社・法人の種類を表す単語を使用しなければなりません。
つまり、
- 株式会社を設立する場合は「株式会社」という文字を、
- 合同会社を設立する場合は「合同会社」という文字を、
- 一般社団法人を設立する場合は「一般社団法人」という文字を、
必ず使用する必要があります。
4.同一商号、同一本店の禁止
会社の設立登記をするときに、他の会社が既に登記した商号と同一の商号、かつ同一の本店所在場所であるときは、その登記をすることができません(商業登記法第27条)。
司法書士に会社設立手続きの依頼をしたときは、設立する会社が既にある会社と同一商号・同一本店ではないか、司法書士が事前に調べます。
同一商号の判断基準
商号が同一であるかどうかは、形式的に全体の表記が同一であるかどうかを判断することになります。全体の表記には、「株式会社」「合同会社」などの会社の種類を表す部分も含まれます。
次の会社はそれぞれ、全て別会社と判断されることになります。
- 「株式会社X」と「X株式会社」
- 「株式会社X」と「合同会社XY」
- 「株式会社X」と「合同会社X」
- 「株式会社X」と「株式会社エックス」
- 「株式会社日本」と「株式会社JAPAN」と「株式会社NIPPON」
なお、表記が同じであれば読み方が異なっていても同一商号と判断されます。例えば、次の会社は同一商号となります。
- 「株式会社清水」(しみず、と読む)と「株式会社清水」(きよみず、と読む)
- 「株式会社行方」(ゆくえ、と読む)と「株式会社行方」(なめがた、と読む)
同一本店の判断基準
同一の本店であるかどうかは、同一の場所ではないことが明らかかどうかを判断することになります。
次の本店はそれぞれ、同一本店と判断されることになります。
- 「東京都港区新橋一丁目7番10号」と「東京都港区新橋1-7-10」
- 「東京都港区新橋一丁目7番10号」と「東京都港区新橋一丁目7番10号汐留ビル」
- 「東京都港区新橋一丁目7番10号」と「東京都港区新橋一丁目7番10-101号」
なお、次の本店は同一本店と判断されません。
- 「東京都港区新橋一丁目7番10-101号」と「東京都港区新橋一丁目7番10-102号」
- 「東京都港区新橋一丁目7番10号1階」と「東京都港区新橋一丁目7番10号2階」
同一商号とは判断されなくても、、、
会社設立手続きにおいては、既に登記されている会社と同一商号・同一本店と判断をされなければ会社設立はできます。
しかし、既に登記されている会社から、不正の目的のために当該会社と誤認されるおそれのある商号を使用しているして使用の差し止めや損害賠償請求をされるリスクがあります。
少なくとも、有名企業と同様の商号は使用しない方が無難といえます。
解散、清算した会社と同一の商号
(2017年7月11日追記)
解散した清算中の会社、清算手続とその登記が済んでいる会社と同一の商号、本店を使用するときについては、こちらの記事をご参照ください。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。