商業登記関係 管轄外への本店移転登記の申請と登記すべき事項
会社の本店を移転したらその旨の登記申請が必要
会社の本店所在場所は、登記簿の記載事項です。会社の登記は、その内容の変更が生じてから2週間以内に管轄法務局へその旨の申請しなければなりません。
会社の本店が、
東京都港区新橋1丁目1番1-101号 から
東京都港区新橋1丁目1番1-102号 へ
移転した場合も、本店の変更登記申請をする必要があります。
また、ビルのオーナーが変わったことにより、
東京都港区新橋1丁目1番1号 ABCビルヂング101 が
東京都港区新橋1丁目1番1号 XYZビルヂング101 と
実質的には本店を動かしていない場合でも、その旨の登記申請が必要となります。
管轄外の法務局への本店移転登記
各法務局はそれぞれ登記の管轄を持っています。
本店が東京都渋谷区にある会社の登記は、管轄が東京法務局渋谷出張所であり、
本店が東京都新宿区にある会社の登記は、管轄は東京法務局新宿出張所です。
法務局の統廃合も進んだ結果、
埼玉県内に本店のある会社は全て、さいたま地方法務局が管轄法務局であり、
千葉県内に本店のある会社は全て、千葉地方法務局が管轄法務局となっています。
神奈川県は横浜市・川崎市に本店のある会社登記を管轄する横浜地方法務局と、
その他の神奈川県内の市区町村に本店のある会社登記を管轄する横浜地方法務局湘南支局に分かれています。
管轄外への本店移転とは
今の会社登記を管轄している法務局(出張所・支局)とは異なる法務局(出張所・支局)の管轄する本店所在場所へ、本店を移転する登記のことを管轄外への本店移転登記といったりします。
東京都港区から東京都中央区へ
東京都江戸川区から東京都立川市へ
埼玉県草加市から千葉県茂原市へ
上記は全て管轄外への本店移転ですが、
埼玉県草加市から埼玉県所沢市へ
神奈川県横浜市から神奈川県川崎市へ
これらは管轄外への本店移転ではありません。
管轄外への本店移転登記申請における登記すべき事項
新しい本店所在地を管轄する法務局への登記申請書の登記すべき事項には、原則として移転前の本店所在地の登記事項を全てを記載しなければなりません。
つまり、商号・目的・会社成立年月日・公告方法・役員・役員選任日など全てです。
登記事項を全て記載すると言っても、シンプルな1人取締役会社で、目的もスッキリしていればそれほど大変な作業ではありません。
しかし、目的が20や30もある、種類株式発行会社、新株予約権を発行している会社など、登記事項が複雑で多い会社の場合、これは大変な作業となってしまいます。
登記すべき事項の記載を省略できるケース
移転前の本店所在地において、本店移転の登記以外の他の変更登記申請をしない場合は、登記事項証明書等のPDFに申請人が電子署名をしたものをオンライン申請書に添付すれば、登記すべき事項は「別添登記事項証明書記載のとおり」と記載すれば済むことになります。
管轄外への本店移転登記申請は、移転前の法務局・移転後の法務局両方の分の登記申請書(2通)が必要となり、移転前の法務局に2通まとめて提出をしますが、移転前の法務局に提出する申請書に役員変更や目的変更の登記が含まれている場合は、登記すべき事項の省略をすることができません。
あくまで移転前の登記簿に変更がないまま、移転後の登記簿にそれを反映させる場合にのみ上記方法を用いることが可能です。
登記すべき事項の記載を省略できるときでも、記載しなければならない事項
しかし、登記すべき事項を省略できるケースにおいても、移転後の登記簿には移転前の登記簿に記載されていない事項が記載されます。
それは、いつ移転前の本店所在地から移ってきたかの記載です。
具体的には次のような記載です。
「登記記録に関する事項」
平成28年8月20日東京都港区新橋1丁目1番1号から本店移転
登記すべき事項を省略できるケースの登記すべき事項例
「別添登記事項証明書記載のとおり」
「登記記録に関する事項」
平成28年8月20日東京都港区新橋1丁目1番1号から本店移転
(2017年7月16日追記)
平成29年7月6日付で通達が出ており、管轄外本店移転登記における登記すべき事項につき、「年月日 本店移転」だけで良くなりました(平成29年7月6日付法務省民商第111号法務省民事局商事課長通知)。
こちらの記事をご参照ください。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。