商業登記関係 資本金の額、資本準備金、利益準備金の額の減少手続きに関するよくあるご質問
資本金、資本準備金、利益準備金の減少手続き
次のようなニーズから、株式会社は資本金、資本準備金、利益準備金を減少させることがあります。
- 繰越欠損金の解消
- 配当金の原資の確保
- 資本金を1億円以下とすることによる税務的メリット
- 大会社(最終貸借対照表の資本金が5億円以上又は負債総額が200億円以上)となることの回避
資本金、資本準備金、利益準備金を減少させる具体的な手続きにつきましては、次の記事をご確認ください。
≫株式会社の資本金の額の減少(減資)手続きと登記
≫株式会社の資本準備金、利益準備金の額を減少する手続き
よくいただくご質問
株式会社の資本金、資本準備金、利益準備金の減少に係る会社法上の手続きにおいて、よくいただくご質問は次のとおりです。
以下、本記事では資本金の額の減少を「減資」といい、資本準備金と利益準備金を合わせて単に「準備金」といいます。
Q. 減資できる資本金の額はいくらまでですか?
A. 減資の効力発生時点における資本金のまで減資することができます(会社法第447条2項)。
つまり、減資後の資本金の額の最小値は0円です。なお、後述のとおり減資の効力発生の直前に増資をする場合、増資により増加した額を含めて減資することも可能です。
Q. 増資と減資を同時に行うことはできますか?
A. 可能です。
事業年度末に増資を控えている株式会社が、事業末年度末時点における資本金の額を一定の額以下にしたい場合に、増資と減資を同時あるいは増資の数日後に減資をしたいというニーズは少なくありません。
Q. 事業年度末の1週間前に増資をするのですが、増資をしてから減資手続きを始めると事業年度末までに減資が間に合わない気がするのですが…。
A. そのような場合、増資の効力が生じる前に減資の手続きをスタートすることになります。
債権者保護手続きの一環として減資の効力発生日の1ヶ月以上前に官報等に公告を掲載する必要がありますが、そこに記載する資本金の額の減少の内容(会社法第449条2項2号)は増資により増加する資本金の額を考慮した額を記載します。
現在の資本金の額が2億円で事業年度末時点の資本金の額を1億円としたい場合において、事業年度末の1週間前に資本金が1億円増加するときは、減少する資本金の額を2億円として官報等に公告を掲載することになります。
Q. 当社の現在の資本金の額が1億5000万円であり、事業年度末の1週間前に増資により資本金の額が5000万円増加する予定であるため減少する資本金の額を1億円として官報公告及び株主総会の決議をしました。しかし、当該増資の払込期日が直前になって翌月となってしまいました。当社の資本金の額はいくらになるでしょうか。
A. 5000万円です。
当該増資の効力発生を条件に減資をする等の条件付き決議をしている場合は、減資の効力が生じない可能性があります。
Q. 当社の現在の資本金の額が1億5000万円であり、事業年度末の1週間前に増資により資本金の額が1億2000万円増加する予定であるため減少する資本金の額を1億7000万円として官報公告及び株主総会の決議をしました。しかし、当該増資の払込期日が直前になって翌月となってしまいました。当社の資本金の額はいくらになるでしょうか。
A. 1億5000万円です。
減少することができる資本金の額は、減資の効力発生時点における資本金の額までですので(会社法第447条2項)、減資の効力を生じさせることができません。
なお、準備金やその他資本剰余金/その他利益剰余金を資本金に組み入れることで、減資の効力を生じさせることはできるかと思います(5000万円を資本金に組み入れると減資後の資本金の額は3000万円となります)。
Q. 事業年度末までに増資をする予定であるが、増加する資本金の額が現状未確定なのですが…。
A. 事業年度末から1ヶ月以上前に減資の手続きをスタートする必要があることに変わりはありません。なお、次のような方法がありますのでご確認ください。
Q. 事業年度の途中に増資をしますが、事業年度末にも再度増資をする予定です。増資の都度、減資をした方がいいですか?
A. 減資をする目的にもよりますが、年度末時点の資本金の額を1億円以下、5億円以下にすることが目的であれば、増資の都度でなはなく、年度末までに1回減資をすることでも問題ないかと考えます。
Q. 減少させる資本金の額につき、一部を資本準備金へ、一部をその他資本剰余金へ振り替えることはできますか?
A. 可能です(会社法第447条1項2号)。
Q. 減少させる資本金の額を、利益準備金やその他利益剰余金に振り替えることはできますか?
A. 直接振り替えることはできません。
減少させる資本金の額は、資本準備金及び/又はその他資本剰余金に振り替えることになります。
Q. 資本金の額を減少させてその他利益剰余金のマイナスを消すことはできますか?
A. 資本金をその他資本剰余金に振り替えた後、その他資本剰余金をその他利益剰余金に振り替えることで可能となります(会社法第452条)。
ただし、その他資本剰余金からその他利益剰余金に振り替えることができる額には限度があります(原則として確定した貸借対照表の利益剰余金のマイナス分まで)。
この場合、利益準備金も考慮されるため、最終の貸借対照表に計上された利益準備金が100万円、その他利益剰余金がマイナス800万円であれば、その他資本剰余金からその他利益剰余金に振り替えられる額は700万円までとなる点に注意が必要です。
Q. 減少させる資本金の額を、資本準備金に振り替える場合とその他資本剰余金に振り替える場合で手続きに違いは生じますか?
A. 資本準備金に振り替える場合は、株主総会でその旨を決議内容に追加します(会社法第447条1項2号)。
また、減少する資本金の額の全部又は一部を資本準備金とするときは、その旨及び準備金とする額も公告内容及び各債権者への催告内容となります。
Q. 減資を行うときは必ず株主総会の特別決議が必要ですか?
A. 次に当てはまる場合は株主総会の普通決議で減資をすることができます(会社法第309条2項9号)。
- 定時株主総会において減資の決議すること
- 減少する資本金の額が欠損の額を超えないこと
なお、次のQもご確認ください。
Q. 取締役会の決議で減資をすることはできますか?
A. 株式会社が株式の発行と同時に資本金の額を減少する場合において、当該資本金の額の減少の効力が生ずる日後の資本金の額が当該日前の資本金の額を下回らないときは、取締役の決定(取締役会設置会社は、取締役会の決議)で減資の決議をすることができます(会社法第447条3項)。
Q.種類株式発行会社が減資する際に注意すべき事項はありますか?
A. 種類株式につき、減資に関して拒否権条項が付いている場合は、原則として当該種類株式に係る株主総会の決議も必要となります。また、会社法の手続きではありませんが、資本金の額を減少することが株主の事前通知事項/事前承諾事項となっている場合は当該通知をする/承諾を得ることになります。
Q. 減資をするときは、発行済株式数も減少させる必要がありますか?
A. 必要はありません。
減資をして分配可能額を作り、その範囲内で株主から発行会社が株式を取得し、発行会社が自己株式を消却したときは発行済株式数は減少しますが、これは減資の手続きとは別の話です。
債権者保護手続きに関する事項
Q. 当社には知れたる債権者がいません。官報公告は必要ですか?
A. 必要です。
会社法第449条2項は、官報公告をすることにつき債権者の有無を条件としていません。なお、知れたる債権者はいない場合は、債権者への個別催告は当然ながら不要です。
Q. 増資と同時に当該増資により増加した額を減資します。資本金の額は結果として変わりませんが官報公告は必要ですか?
A. 必要です。
増資と減資は別の手続きであるため、減資については債権者保護手続きが求められます。なお、増資と減資を同時に行い、資本金の額が当該変更前と変わらない場合であってもその登記手続きは必要です。
Q. 債権者への個別催告をする場合、その催告の手段に指定はありますか?
A. 会社法上、特段の指定はありません。ただし、催告(書)が相手に届いたことが分かる方法が望ましいと考えますので、追跡できる郵便又はメールとすることが一般的でしょうか。
Q. 当社の公告方法は日刊工業新聞です。官報公告は必要ですか?
A. 必要です。
減資手続きにおいては、債権者の有無や定款の公告方法の定めの内容に関わらず、官報公告は必要です。なお、準備金の額を減少させる場合も、原則として債権者保護手続きが必要となりますが、一定の場合は債権者保護手続きを省略することが可能です(以降のQをご確認ください)。
Q. 当社の公告方法は電子公告です。官報公告は必要ですか?
A. 前項同様に必要です。
Q. 当社の公告方法は電子公告です。官報公告+電子公告をすれば債権者保護手続きは問題ないでしょうか。
A. 電子公告調査機関に電子公告の調査を依頼する必要があります。調査機関による調査報告書は減資登記の添付書類となります。
Q. 当社の公告方法は電子公告です。知れたる債権者が1名なので官報公告+個別催告でも問題ないでしょうか。
A. 問題ありません。債権者保護手続きにつき、官報公告+電子公告(ダブル公告) or 官報公告+個別催告を選択することが可能です。
個別催告で済ますことができるのであれば、そちらの方が電子公告調査機関の費用が生じない分安く済みます。
Q. 当社の公告方法は官報です。決算公告と官報公告の同時公告を行う場合、期限までに掲載が間に合わないと言われてしまいました。何か方法はありますか?
A. 官報の場合、決算公告が本紙掲載のため申込みから掲載まで10営業日程度を要してしまいます。
公告方法を電子公告にする定款変更をし、官報公告を減資公告のみとし官報の号外(申込みから掲載まで5営業日程度)に掲載するか、決算公告のみ電磁的方法とし同様の方法を採ることが考えられます。
官報に掲載したい日から5営業日も無いのであれば、その日に債権者保護手続きを採ることは難しいといえます。
Q. 当社の公告方法は官報です。ダブル公告をする場合、公告方法の変更登記はいつまでに申請すればいいですか?
A. 変更後の公告方法による公告掲載日の前日までに変更登記が完了していることが望ましいと思います。なお、遅くとも変更後の公告方法による公告掲載日の前日までを受付日として公告方法の変更登記の申請がされていることが登記手続き上求められます。
公告方法の変更登記の申請日(受付日)は登記簿に記録されるため、スケジュールを検討する際はお気を付けください。
Q. 当社の事業年度末は12月末であり、公告方法は官報です。20xx年の7月に官報にて決算公告をしています。20xx年10月に公告方法を日刊工業新聞に変更し、20xx年11月に官報及び日刊工業新聞にて減資公告をする予定ですが、この日刊工業新聞において決算公告を改めて行う必要がありますか?
A. 不要です。決算公告をした時における公告方法(官報)によって決算公告が済んでいるためです。官報及び日刊工業新聞にはそれぞれ、当該決算公告を掲載した官報のページを記載します。
Q. 債権者保護手続きをせずに資本金の額を減少することはできますか?
A. 資本金の額を減少する場合、債権者保護手続きは必須です。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。





