商業登記関係 令和3年(2021年)12月31日までに資本金の額を減少するスケジュール例
事業年度末までに減資する
今期中に増資をして資本金の額が1億円を超えた、あるいは5億円を超えた株式会社が、その年度末までに資本金の額を1億円以下にしたいというニーズがあります。
主に税務面でのメリットを享受することがメインかと思いますが、資本金の額が5億円を超えたまま事業年度を跨ぐと会計監査人の設置義務が生じますので、これを避けたいという会社もあります。
翌期の定時株主総会で配当を出すための原資を捻出するために減資するという会社もあるでしょう。
資本金の額の減少(以下、「減資」といいます)は、12月末決算、3月末決算の会社が多いためか、11月、2月から手続きをスタートさせる会社が少なくありません。
減資をするには日数を要する
減資をするには債権者保護手続き(会社法第449条)を行う必要があるため、必ず1ヶ月以上の日数を要します。
特定の条件が全て整っている場合でも、最短で1ヶ月と1週間はかかってしまいます。なお、多くの会社においては、およそ2ヶ月程度の期間がかかります。
つまり、12月末までに減資の効力を発生させるためには、10月後半から11月頭には減資手続きの準備をスタートさせるのが望ましいことになります。
2021年12月31日までに減資する
2021年12月31日までに減資をするスケジュール例は次のとおりです。
定款で定めている公告方法は何か、≫ダブル公告を採用するかどうか、今期に前期の決算公告をしているか、拒否権条項付の種類株式を発行しているか等によってスケジュールや手続きは異なってきます。
また、以下のスケジュール例はあくまで一例であり、ご自身(自社)で手続きをされる場合につき当社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。
公告方法が官報の会社(決算公告をしていない場合)
11月5日(金曜日) | 取締役会の決議(減資の内容決定、株主総会の招集決定) 官報へ公告の申込み |
11月24日(水曜日) | 決算公告・減資公告が掲載(官報) 知れたる債権者へ催告書発送 |
12月13日(月曜日) | 株主総会の招集通知の発送 |
12月22日(水曜日) | 株主総会の決議 |
12月27日(月曜日) | 債権者保護手続きの期間満了 |
12月28日(火曜日) | 資本金の額の減少の効力発生 |
12月28日以降 | 登記申請(減資)※効力発生日から2週間以内 |
※官報公告は、株主総会で承認されない可能性がある場合、あるいは株主間契約等で株主総会の承認を先行した方が良い場合は、株主総会後に官報公告を申し込んだ方が良いでしょう。
公告方法が官報の会社(ギリギリ間に合わせるパターン)
11月18日(木曜日) | 取締役会の決議(定款変更の意思決定、減資の内容決定、株主総会の招集決定) 株主へ提案書兼同意書の発送 |
11月18日(木曜日) | 株主総会のみなし決議(公告方法変更、減資) 登記申請(公告方法変更) 公告URLに決算公告掲載 官報へ公告の申込み、電子公告調査会社に調査の依頼 |
11月26日(金曜日) | 公告URLに減資公告を掲載(電子公告調査会社の事前調査) |
11月29日(月曜日) | 減資公告が掲載(官報) |
12月29日(水曜日) | 債権者保護手続きの期間満了 |
12月30日(木曜日) | 資本金の額の減少の効力発生 |
1月4日以降 | 登記申請(減資)※効力発生日から2週間以内 |
公告方法が電子公告でダブル公告
11月4日(木曜日) | 取締役会の決議(減資の内容決定、株主総会の招集決定) |
11月5日(金曜日) | 株主総会の招集通知の発送 |
11月15日(月曜日) | 株主総会の決議 官報へ公告の申込み、電子公告調査会社に調査の依頼 |
11月24日(水曜日) | 公告URLに減資公告を掲載(電子公告調査会社の事前調査) |
11月25日(木曜日) | 減資公告が掲載(官報) |
12月27日(月曜日) | 債権者保護手続きの期間満了 |
12月28日(火曜日) | 資本金の額の減少の効力発生 |
12月28日以降 | 登記申請(減資)※効力発生日から2週間以内 |
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。