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代表司法書士 石川宗徳の 所長ブログ&コラム

合同会社の定款で別段の定めをすることができる事項

合同会社と定款の別段の定め

合同会社の定款には、商号や事業目的等の会社法第576条の定款記載事項のほか、会社法の規定により定款の定めがなければその効力を生じない事項及びその他の事項でこの法律の規定に違反しないものを記載し、又は記録することができます(会社法第577条)。

合同会社においては定款自治が広く認められており、会社法の原則とは異なる定めにつき多くの事項を定款で定めることができます。

例えば株式会社においては、定款を変更するときは株主総会の特別決議が必要となり、この特別決議の要件は定款に別段の定めをした場合でも、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1以上の割合をを有する株主の出席と、出席した当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行います(会社法第309条2項)。

一方で合同会社において定款を変更するときは、原則として総社員の同意が必要となりますが、この方法につき定款に別段の定めをすることができます(会社法第637条)。

つまり、代表社員の同意だけ、あるいは特定の社員の同意だけで定款を変更することができる旨を定款に定めることも可能です。

定款に別段の定めをすることができる事項

会社法上、定款に別段の定めをすることができる事項は次のとおりです。

持分の譲渡
会社法第585条 

1 社員は、他の社員の全員の承諾がなければ、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができない。
2 前項の規定にかかわらず、業務を執行しない有限責任社員は、業務を執行する社員の全員の承諾があるときは、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができる。
3 第637条の規定にかかわらず、業務を執行しない有限責任社員の持分の譲渡に伴い定款の変更を生ずるときは、その持分の譲渡による定款の変更は、業務を執行する社員の全員の同意によってすることができる。
4 前三項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。

合同会社の社員が持分の全部又は一部を他人に譲渡するときは、原則として他の社員全員の承諾が必要とであり、業務を執行しない社員がその持分の全部又は一部を譲渡するときは、業務を執行する社員の全員の承諾で足ります。

この持分の譲渡に関する承諾につき、定款で別段の定めをすることができます。

上記承諾につき必要に応じて、特定の社員のみの承諾で譲渡できるようにする、社員の出資数に応じて議決権を付与し議決権の過半数の承諾で譲渡できるようにする、業務を執行しない社員の持分譲渡についても他の社員の全員の承諾を必要とする等の定款の定めが考えられます。

業務の執行
会社法第590条

1 社員は、定款に別段の定めがある場合を除き、持分会社の業務を執行する。
2 社員が二人以上ある場合には、持分会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、社員の過半数をもって決定する。
3 前項の規定にかかわらず、持分会社の常務は、各社員が単独で行うことができる。ただし、その完了前に他の社員が異議を述べた場合は、この限りでない。

合同会社の業務の執行に関する規定です。

社員が1名の合同会社においては当該社員が業務を執行するので本条を気にする必要はなく、社員が複数名いる合同会社も多くは(社員全員が業務執行社員になる場合も含め)業務執行社員を定款で定めているかと思いますので、下記次条(会社法第591条)をご確認ください。

業務を執行する社員を定款で定めた場合
会社法第591条

1 業務を執行する社員を定款で定めた場合において、業務を執行する社員が二人以上あるときは、持分会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、業務を執行する社員の過半数をもって決定する。この場合における前条第三項の規定の適用については、同項中「社員」とあるのは、「業務を執行する社員」とする。
2 前項の規定にかかわらず、同項に規定する場合には、支配人の選任及び解任は、社員の過半数をもって決定する。ただし、定款で別段の定めをすることを妨げない。
3 業務を執行する社員を定款で定めた場合において、その業務を執行する社員の全員が退社したときは、当該定款の定めは、その効力を失う。
4 業務を執行する社員を定款で定めた場合には、その業務を執行する社員は、正当な事由がなければ、辞任することができない。
5 前項の業務を執行する社員は、正当な事由がある場合に限り、他の社員の一致によって解任することができる。
6 前二項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。

定款で2名以上の業務執行社員を定めたときは、業務を業務執行社員の過半数で決定するところ、これにつき定款に別段の定めをすることができます(会社法第591条1項)。
必要に応じて、特定の業務執行社員だけで業務の決定をできるよう定めること等が考えられます。

支配人の選任及び解任は、社員の過半数をもって決定するところ、これにつき定款に別段の定めをすることができます(会社法第591条2項)。
必要に応じて、この過半数という決定要件を重く・軽くしたり、特定の社員だけで決定できるよう定款に定めること等が考えられます。

業務執行社員は正当な事由がなければ辞任することができず、また、業務執行社員は正当な事由がある場合に限り他の社員の一致によって解任することができるところ、これにつき定款に別段の定めをすることができます(会社法第591条4項、5項)。
ニーズに応じて、業務執行社員を他の社員の過半数の決定によって解任することができるよう定款に定めること等が考えられます。

社員の持分会社の業務及び財産状況に関する調査
会社法第592条

1 業務を執行する社員を定款で定めた場合には、各社員は、持分会社の業務を執行する権利を有しないときであっても、その業務及び財産の状況を調査することができる。
2 前項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。ただし、定款によっても、社員が事業年度の終了時又は重要な事由があるときに同項の規定による調査をすることを制限する旨を定めることができない。

社員は業務執行社員の業務及び財産の状況を調査することができるところ、これにつき定款に別段の定めをすることができます。

必要に応じて、上記の調査をする権利を行使するときは社員の過半数の同意を必要とする、あるいは社員の上記調査を制限すること等が考えられます。ただし、定款で上記調査を制限したとしても、事業年度の終了時又は重要な事由があるときに上記調査をすることを制限する旨を定款に定めることができません。

業務を執行する社員と持分会社との関係
会社法第593条

1 業務を執行する社員は、善良な管理者の注意をもって、その職務を行う義務を負う。
2 業務を執行する社員は、法令及び定款を遵守し、持分会社のため忠実にその職務を行わなければならない。
3 業務を執行する社員は、持分会社又は他の社員の請求があるときは、いつでもその職務の執行の状況を報告し、その職務が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない。
4 民法第646条から第650条までの規定は、業務を執行する社員と持分会社との関係について準用する。この場合において、同法第646条第1項、第648条第2項、第648条の2、649条及び第650条中「委任事務」とあるのは「その職務」と、同法第648条第3項第1号中「委任事務」とあり、及び同項第2号中「委任」とあるのは「前項の職務」と読み替えるものとする。
5 前2項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。

業務執行社員は、他の社員の請求があるときはその職務の執行の状況を報告し、その職務が終了した後は遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならないところ、これにつき定款に別段の定めをすることができます。

必要に応じて、社員単独ではなく社員の過半数の請求があるときにその職務の執行の状況を報告する、年1回しか職務の執行の状況を報告しない、あるいは社員にそのような権利を持たせない等とすることが考えられます。

競業の禁止
会社法第594条

1 業務を執行する社員は、当該社員以外の社員の全員の承認を受けなければ、次に掲げる行為をしてはならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。
 一 自己又は第三者のために持分会社の事業の部類に属する取引をすること。
 二 持分会社の事業と同種の事業を目的とする会社の取締役、執行役又は業務を執行する社員となること。
2 業務を執行する社員が前項の規定に違反して同項第一号に掲げる行為をしたときは、当該行為によって当該業務を執行する社員又は第三者が得た利益の額は、持分会社に生じた損害の額と推定する。

業務執行社員が競業取引を行うときは、他の社員全員の承認を受けなればならないところ、これにつき定款に別段の定めをすることができます。

必要に応じて、他の(社員ではなく)業務執行社員全員の承認を受けなければならない、代表社員の承認を受けなければならない、特定の社員の承認を受けなければならない等とすることが考えらえます。

利益相反取引の制限
会社法第595条

1 業務を執行する社員は、次に掲げる場合には、当該取引について当該社員以外の社員の過半数の承認を受けなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。
 一 業務を執行する社員が自己又は第三者のために持分会社と取引をしようとするとき。
 二 持分会社が業務を執行する社員の債務を保証することその他社員でない者との間において持分会社と当該社員との利益が相反する取引をしようとするとき。
2 民法第108条の規定は、前項の承認を受けた同項各号の取引については、適用しない。

業務執行社員が利益相反取引を行うときは、他の社員全員の承認を受けなればならないところ、これにつき定款に別段の定めをすることができます。

必要に応じて、他の(社員ではなく)業務執行社員全員の承認を受けなければならない、代表社員の承認を受けなければならない、特定の社員の承認を受けなければならない等とすることが考えらえます。

任意退社
会社法第606条

1 持分会社の存続期間を定款で定めなかった場合又はある社員の終身の間持分会社が存続することを定款で定めた場合には、各社員は、事業年度の終了の時において退社をすることができる。この場合においては、各社員は、六箇月前までに持分会社に退社の予告をしなければならない。
2 前項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。
3 前二項の規定にかかわらず、各社員は、やむを得ない事由があるときは、いつでも退社することができる。

社員はやむを得ない事由があるときを除き、6ヶ月前に退職をした上で事業年度の終了の時に退社をすることができるところ、これにつき定款に別段の定めをすることができます。

必要に応じて、退社の予告をする期間を3ヶ月前にする、退社のタイミングを事業年度の終了の時に限らないようにする等とすることが考えられます。

計算書類の閲覧等
会社法第618条

1 持分会社の社員は、当該持分会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。
 一 計算書類が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求
 二 計算書類が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
2 前項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。ただし、定款によっても、社員が事業年度の終了時に同項各号に掲げる請求をすることを制限する旨を定めることができない。

社員は合同会社の営業時間内は、いつでも、計算書類の閲覧又は謄写の請求ができるところ、これにつき定款に別段の定めをすることができます。

必要に応じて、当該請求をするには社員の過半数の同意を必要とする、そもそも計算書類の閲覧権を認めない等とすることが考えられます。ただし、その場合も事業年度の終了時に当該請求をすることを制限する旨を定款に定めることはできません。

定款の変更
会社法第637条

持分会社は、定款に別段の定めがある場合を除き、総社員の同意によって、定款の変更をすることができる。

合同会社の定款は総社員の同意によって変更することができるところ、これにつき定款に別段の定めをすることができます。

必要に応じて、定款の変更要件を社員の過半数の同意、代表社員のみの同意とすることが考えられます。

清算人の解任
会社法第648条

1 清算人(前条第二項から第四項までの規定により裁判所が選任したものを除く。)は、いつでも、解任することができる。
2 前項の規定による解任は、定款に別段の定めがある場合を除き、社員の過半数をもって決定する。
3 重要な事由があるときは、裁判所は、社員その他利害関係人の申立てにより、清算人を解任することができる。

会社法第647条1項による清算人は、社員の過半数の決定をもって解任することができるところ、これにつき定款に別段の定めをすることができます。

必要に応じて、清算人の解任には社員全員の同意を必要とする、特定の社員の同意のみで行うことができるようにする等が考えられます。

業務の執行
会社法第650条

1 清算人は、清算持分会社の業務を執行する。
2 清算人が二人以上ある場合には、清算持分会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、清算人の過半数をもって決定する。
3 前項の規定にかかわらず、社員が二人以上ある場合には、清算持分会社の事業の全部又は一部の譲渡は、社員の過半数をもって決定する。

清算人が複数いるときは、その業務を清算人の過半数をもって決定をするところ、これにつき定款に別段の定めをすることができます。

必要に応じて、清算人の3分の2以上をもって決定する、各清算人が決定することができるようにする等が考えられます。

その他

上記は原則に対して定款で別段の定めをすることができるところ、会社法が他に合同会社の定款で定めを置くかもしれないことを想定している事項は次のとおりです。

条文をクリックしていただけると、対象条文が記載されたページに飛ぶことができます。

(持分会社の代表)会社法第599条3項
(法定退社)会社法第607条1項1号
(相続及び合併の場合の特則)会社法第608条1項
(利益の配当)会社法第621条2項
(社員の損益分配の割合)会社法第622条
(第六節 出資の払戻し)会社法第624条2項
(清算人の就任)会社法第647条1項2号
(清算持分会社の代表)会社法第655条3項
(残余財産の分配の割合)会社法第666条
(財産の処分の方法)会社法第668条1項
(第八節 帳簿資料の保存)会社法第672条2項
(会社の公告方法)会社法第939条1項


この記事の著者

司法書士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

RSM汐留パートナーズ司法書士法人では、
商業登記不動産登記相続手続き遺言成年後見など、
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