成年後見関係 成年後見制度に関する概況(平成26年)
成年後見制度
成年後見制度とは、認知症などにより判断能力の不十分な方を保護・支援する制度です。
判断能力の不十分な方に代わり契約などの法律行為を行う人を成年後見人(本人の判断能力の程度によっては保佐人、補助人)といい、
この成年後見人が本人に代わり、本人のために契約をしたり、既にしてしまった不利益な契約を取り消したり(法定後見制度のみ)します。
成年後見関係事件の申立件数
成年後見関係事件(後見開始、保佐開始、補助開始、任意後見監督人選任事件)の申立件数は次のとおりです。
平成22年 30,079件
平成23年 31,402件
平成24年 34,689件
平成25年 34,548件
平成26年 34,373件
平成26年の成年後見関係事件のうち、認容による終局率は約94.9%です。
平成22年以降、安定して3万件を超えており、今後も高齢者(65歳以上の方をいいます)人口が増加していく可能性が高いこと、成年後見制度に関する認知度があがってきている現状を考えますと、今後もしばらくは成年後見関係事件の申立件数は減ることはないと思います。
審理期間
平成26年の成年後見関係事件の終局事件のうち、終局までに要した期間は次のとおりです。
2ヶ月以内 約76.9%
4ヶ月以内 約94.3%
申立てをすれば、4ヶ月以内にほとんどの事件は終局することになります。
なお、申立てにかかる書類の準備には1ヶ月程度かかることが多く、申し立てる際には家庭裁判所に行く必要があるところ、それが予約制となっているため、申し立てることを決めてから成年後見人が就任するまでには、ある程度の時間的な余裕は見ておく必要があります。
申立ての動機
平成26年の成年後見関係事件の申立てにかかる動機は以下のとおりです。
預貯金等の管理・解約 28,358件
介護保険契約(施設入所等のため) 12,237件
身上監護 7,499件
不動産の処分 6,387件
相続手続 5,940件
定期預金等の解約は本人しかできないところ、当該預貯金の名義人が認知症などになってしまった場合、金融機関はその口座の解約をしてくれません。
あるいは、親族が本人の資産を私的に使用してしまっているような場合、当該親族以外の親族から本人の資産を守るために成年後見人の選任を申し立てるケースもあります。
成年後見人等と本人との関係
平成26年の成年後見人等(成年後見人、保佐人及び補助人)と本人(被後見人)との関係は以下のとおりです。
配偶者、子その他親族 約35.0%
第三者 約65.0%
親族が成年後見人等になる場合で、最も多く成年後見人等に選任されているのは子です。
第三者後見人の内訳は、以下のとおりです。
司法書士 8,716件
弁護士 6,961件
社会福祉士 3,380件
上記のような士業の方がなる後見人を、専門職後見人と言ったりもしますが、
親族後見人による横領事件が多く発生していることから、専門職後見人の割合は今後も増えていくのはでないでしょうか。
ただし、専門職後見人による横領事件も少なくありません。
後見制度支援信託、後見監督人、家庭裁判所以外の第三者機関の定期的なチェックなど、横領事件が発生しないような制度作りが必要です。
公益社団法人 成年後見センター・リーガルサポート
司法書士が立ち上げた、公益社団法人 成年後見センター・リーガルサポート(以下、リーガルサポートといいます)という団体があります。
こちらに所属している司法書士には成年後見制度に関する研修が課され、また、実際に後見人になっている司法書士は、
被後見人の財産状況などについて、家庭裁判所の他にリーガルサポートにもスクリーニングを受けることになります。
私もリーガルサポートの会員であり、研修を受けています。
成年後見制度の利用者数
成年後見制度の利用者数の次のとおりです。
平成22年12月末時点 140,309人
平成23年12月末時点 153,314人
平成24年12月末時点 166,289人
平成25年12月末時点 176,564人
平成26年12月末時点 184,670人
成年後見制度の利用者数は毎年増加しており、成年後見制度の申立て件数から考えると、
一定程度まで今後も利用者数は増加していくものと思われます。
この記事に記載のあるデータは、最高裁判所事務総局家庭局の「成年後見関係事件の概況 平成26年1月~12月」を基にしております。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。