商業登記関係 新株予約権の行使不能と登記手続き
新株予約権の消滅
新株予約権の行使条件は登記事項とされていて、新株予約権の内容として定めることができます。
行使条件は、株主総会等で承認された新株予約権の発行要項だけではなく、債権的に投資契約書等で定めることもあります。
ストックオプションとして新株予約権を発行するときは、行使をすることができるのは行使時において発行会社の取締役、監査役あるいは従業員であることを条件とするケースが少なくないのではないでしょうか。
それでは、その行使条件により新株予約権を行使することができなくなった新株予約権はどうなるのでしょうか。
行使できなくなった新株予約権は消滅する
新株予約権者が保有する新株予約権につき、行使することができなくなった当該新株予約権は消滅するとされています(会社法第287条)。
これは誰の意思や決定によるものではありませんので、行使することができなくなった事実をもって、取締役の決定等を要せずに当該新株予約権は消滅することになります。
新株予約権が消滅をすると、新株予約権の個数に変更が生じる、あるいは新株予約権の全部が無くなりますので、その変更登記を効力発生日から2週間以内にしなければなりません(会社法第911条1項)。
行使ができなくなった状態とは
行使をすることができなくなった新株予約権は消滅します。
ここでいう「行使をすることができなくなった」とは、誰が新株予約権を保有しても行使することができなくなったことを指すとされていますので、例えばストックオプションを付与した役員が一度でも退任したときは行使できないと定められていれば、その役員の退職をもって新株予約権は消滅することになります(再度就任しても行使できない)。
会社が取得しても自動的には消滅しない
新株予約権の取得条項として、新株予約権の行使の条件に該当することにより新株予約権の行使をすることができなくなったときは、発行会社が無償で取得することができる旨の定めがされることがあります。
このような場合は、行使することができなくなった新株予約権を発行会社が無償で取得することができますが、会社が取得した自己新株予約権は自動的には消えず、取締役会決議等で消却の手続きが必要です。
なお、会社が取得した新株予約権は必ず消却しなければならないわけではなく、再度交付することもできます。
添付書類
新株予約権消滅による変更登記の添付書類は次のとおりです。
- 委任状 ※代理人による場合
自己新株予約権を消却した場合は、その決定を証する書面(取締役会議事録等)が必要です。
登録免許税
新株予約権消滅に係る登録免許税は3万円です。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。