不動産登記関係 有限責任事業組合(LLP)の不動産所有と不動産登記
有限責任事業組合と不動産登記
有限責任事業組合(以下、「LLPといいます)は、その名のとおり組合ですので法人格はありません。
株式会社や合同会社、一般社団法人等の法人には法人格がありますので、法人が契約の当事者となることや法人が不動産を取得したりすることができます。
LLPは不動産を所有できるか
LLPも不動産を所有することができます。
LLPには法人格がありませんので、組合員全員で所有する、合有という方法によることになります。
LLPが不動産を所有したときの不動産登記
LLPも組合員の合有という形で不動産を所有することができます。
不動産を取得したときは、その登記簿の名義人を変更します。
しかし、LLPには法人格がありませんので、LLPが名義人となって不動産の登記をすることはできません。
売買等で不動産を取得したとき
LLPが不動産を取得したときは、所有者としてLLPを登記することができませんので、その不動産の登記はLLPの組合員が共有名義ですることになります。
このときに、LLPの肩書を登記簿に登記することはできないとされていますので、登記簿の見た目上は組合員全員が単に共有しているだけのように見えてしまいます。
共有物分割の登記
LLPが不動産を所有しているときは、組合員の共有名義として登記されますので、組合員が勝手に処分をしてしまったり、組合員に対する債権者が債務者たる組合員の持分を差し押さえるリスクがあります。
そのため、「特約 有限責任事業組合契約に基づく共有物不分割」のように共有物分割禁止の定めの登記をすることが一般的です(なお、有限責任事業組合契約に関する法律第74条参照)。
不動産を現物出資したとき
LLPの組合員となるには、組合に対して出資をすることが必要とされ、また組合員になった後も追加で組合に対して出資をすることができます。
不動産の登記の原因は「年月日有限責任事業組合契約に関する法律第3条第1項の出資」です。
この登記原因は、組合員が有限責任事業組合に対して出資したとき特有のものですので、LLPの財産であることが当該不動産の登記簿から分かることになります。
登記名義人が株式会社の場合
株式会社が不動産を取得したときは、株式会社が所有者として不動産の登記を申請することができます。
株式会社が所有者として名義人となるときは、甲区の欄に本店と商号が不動産の登記簿に記録されます。
(よく質問をいただくのですが、会社の代表者は不動産の登記簿には記載されません。)
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。