商業登記関係 司法書士が株式会社の定款の条文を解説します(招集権者編)
定款の条文の内容を解説します。
会社法が施行されてから株式会社の設立も容易になり、また現在は色々なサイトで株式会社の設立に関する情報が溢れているため、起業される方自身で株式会社設立の手続きをされるケースも少なくありません。
しかし、インターネット上にある定款の内容の一部、あるいは全部をよく理解せずにそのまま利用している方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、会社設立後にこんなはずではなかった、、、という方が一人でも少なくなるように、日本公証人連合会のホームページに掲載されている
1 小規模な会社(Small-Sized Company)
株式が非公開で、取締役が1名のみの小規模な株式会社の定款記載例であり、定款の内容も簡潔なものを紹介しています。
起業者の方が小規模な会社からスタートしたいと考える場合に、定款ドラフトの作成に当たって、参考にされる一つの定款記載例です。≫定款等記載例(Examples of Articles of Incorporation etc)【日本公証人連合会】
を基に、定款の各条文の内容について解説をしていきたいと思います。
ビジネスに専念したい方
一方で、会社設立の手続きは初めて行う方には時間がかかる上に、一生のうちにその知識を何度も使うわけではありません。
会社設立の手続きは専門家に任せて自分のビジネスに集中したい方は、こちらのページをご参照ください。
≫株式会社設立サービス
≫合同会社設立サービス
株主総会の招集時期に関する条文
第11条 株主総会は、法令に別段の定めがある場合を除き、取締役が招集する。
株主総会の招集は取締役が行う旨の規定であり、必ずしも定款に記載をしなくても問題はありませんが、任意的に定款へ記載している会社は多いのではないでしょうか。
この規定は、会社法第296条3項の規定を、そのまま定款に記載しています。
(株主総会の招集)
会社法第296条3項株主総会は、次条第4項の規定により招集する場合を除き、取締役が招集する。
株主総会の招集
株式会社は少なくとも毎年1回は株主総会を開催しなければならず、株主総会を招集するときは株主に対して招集通知を発します(会社法第299条1項)。
この招集通知を発する役割を、誰が行うのかを定款で定めていることになります。
なお、取締役が複数いるときはその内1名が勝手に株主総会を招集することができず、招集に当たっては取締役の決定(取締役会の決議)によって株主総会の日時・場所・決議内容を定める必要があります(会社法第298条)。
代表取締役が招集する
今回の定款記載例は取締役が1名であることを想定しているものですので、取締役=代表取締役であり、当該(代表)取締役が株主総会を招集する点では「取締役が招集する。」で良いと思います。
しかし、今後取締役が増える可能性がある、あるいは当初から取締役が2名以上いる場合は、株主総会の招集権者を明確にするため、取締役社長や代表取締役が招集する等と定めておいた方がいいでしょう。
第11条 株主総会は、法令に別段の定めがある場合を除き、取締役社長がこれを招集する。取締役社長に事故、もしくは支障があるときは、あらかじめ定めた順序により他の取締役がこれを招集する。
取締役以外が株主総会を招集することができる場合
「法令に別段の定めがある場合を除き」「次条第4項の規定により招集する場合を除き」取締役が株主総会を招集しますので、一定のケースでは取締役以外が株主総会を招集することが可能です。
会社法には、取締役以外の人が株主総会を招集することができるケースが定められています(会社法第297条)。
定款に別段の定めがない限り、総株主の議決権の100分の3以上の議決権を6ヶ月前から引き続き有する株主(≫少数株主権)は、取締役に対して株主総会の議案及び招集の理由を示して株主総会の招集を請求することができ、
- 当該請求後遅滞なく招集の手続が行われない場合
- 当該請求があった日から8週間(定款で短縮可能)以内の日を株主総会の日とする株主総会の招集の通知が発せられない場合
には、裁判所の許可を得て、株主総会を招集することができます。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。