商業登記関係 司法書士が株式会社の定款の条文を解説します(招集通知編)
定款の条文の内容を解説します。
会社法が施行されてから株式会社の設立も容易になり、また現在は色々なサイトで株式会社の設立に関する情報が溢れているため、起業される方自身で株式会社設立の手続きをされるケースも少なくありません。
しかし、インターネット上にある定款の内容の一部、あるいは全部をよく理解せずにそのまま利用している方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、会社設立後にこんなはずではなかった、、、という方が一人でも少なくなるように、日本公証人連合会のホームページに掲載されている
1 小規模な会社(Small-Sized Company)
株式が非公開で、取締役が1名のみの小規模な株式会社の定款記載例であり、定款の内容も簡潔なものを紹介しています。
起業者の方が小規模な会社からスタートしたいと考える場合に、定款ドラフトの作成に当たって、参考にされる一つの定款記載例です。≫定款等記載例(Examples of Articles of Incorporation etc)【日本公証人連合会】
を基に、定款の各条文の内容について解説をしていきたいと思います。
ビジネスに専念したい方
一方で、会社設立の手続きは初めて行う方には時間がかかる上に、一生のうちにその知識を何度も使うわけではありません。
会社設立の手続きは専門家に任せて自分のビジネスに集中したい方は、こちらのページをご参照ください。
≫株式会社設立サービス
≫合同会社設立サービス
株主総会の招集時期に関する条文
第12条 株主総会の招集通知は、当該株主総会で議決権を行使することができる株主に対し、会日の5日前までに発する。
株主総会の収集通知を発する期間に関する規定であり、必ずしも定款に定めなければならない事項ではありませんが、ほとんどの株式会社の定款で定められています。
この「5日前まで」という期間は自由に定めることができるのでしょうか。
株主総会を開催するには招集通知を発する
株主総会を開催するには、原則としてその招集通知を発します。
招集通知を発する期間は、会社法で定められていて、その期間は次のとおりです(会社法第299条1項)。
招集通知の発送期間の考え方
招集通知は株主総会の5日前までに発するとは、発する日を除いて5日間あることを指します。
上記の定款の定めのある非公開会社が、平成30年4月18日に株式会社を開催するときは、平成30年4月12日まで招集通知を発する必要があります。
公開会社
株主総会の日の2週間前までに、株主に対してその通知を発しなければなりません。
非公開会社で取締役会設置会社
株主総会の日の1週間前までに、株主に対してその通知を発しなければなりません。
なお、株主総会に出席しない株主が書面または電磁的記録によって議決権を行使することができることとするときは2週間前までに、株主に対してその通知を発します。
取締役会非設置会社
株主総会に出席しない株主が書面または電磁的記録によって議決権を行使することができることとする場合を除き、株主総会の日の1週間前までに、株主に対してその通知を発しなければなりません。
なお、取締役会非設定会社においては定款でこの期間を短縮することができます。
上記定款第12条では、定款で招集通知を発する期間につき1週間より短縮する旨の定めをしています。
取締役 = 株主である1人会社の場合はこの期間は何日でも問題はありませんが、最初から株主が複数いる場合や今後株主が増えることを考えると、「1週間前まで」「5日前まで」あるいは「3日前まで」としておくケースが多いのではないでしょうか。
招集通知の発送が不要なケース
上記定款第12条とは直接の関係はありませんが、招集通知を送らなくても株主総会を開催できる場合があります。
株主が少数であるときは、これらの方法を利用することが少なくありません。
招集手続きをしないことの株主全員の同意
株主の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく株主総会を開催することができます(会社法第300条)。
ただし、株主総会に出席しない株主が書面または電磁的記録によって議決権を行使することができることとする場合は、招集手続きを省略できません。
みなし株主総会
株主総会の決議事項について、議決権を行使することができる株主全員が書面または電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、株主総会の開催があったものとみなすことができます(会社法第319条1項)。
このみなし決議に関する株主への提案は株主総会の招集通知とは異なりますので、「●日前までに発する」といった期間の制限はありません。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。