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代表司法書士 石川宗徳の 所長ブログ&コラム

(新株予約権の発行)取締役会への募集事項の決定の委任とその有効期限

募集新株予約権の発行と募集事項

新株予約権を発行するときは、次の事項(以下「募集事項」といいます)を、株主総会の特別決議によって決定します(会社法第238条1項、2項)。

  1. 募集新株予約権の内容及び数
  2. 募集新株予約権と引換えに金銭の払込みを不要とする場合には、その旨
  3. 上記2.以外の場合、募集新株予約権の払込金額又はその算定方法
  4. 募集新株予約権を割り当てる日
  5. 募集新株予約権と引換えにする金銭の払込みの期日を定めるときは、その期日
  6. 募集新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合には、会社法第676条に掲げる事項

※なお、このページでは非公開会社を対象としています。

募集事項の委任

募集事項の決定は、株主総会の特別決議によって取締役会(取締役会非設置会社の場合は、取締役)に委任することができます(会社法第239条1項)。

取締役会の決議で勝手に、新株予約権を何個でも自由に発行されてしまうと株主は困ってしまいます。

そのため、募集事項の決定を取締役会へ委任するときは、次の事項を株主総会で決議します。

  1. 募集新株予約権の内容及び数の上限
  2. 募集新株予約権につき金銭の払込みを要しないこととする場合には、その旨
  3. 上記2.以外の場合には、募集新株予約権の払込金額の下限
上限と下限

例えば、発行済株式総数が100株(株主はAのみ)、1株の価額が1万円である株式会社があったとします。

特別決議をAのみでできるように新株予約権は40個(1個の目的となる株式は1株)までは新株予約権の発行OKとAは考えました。

また、新株予約権1個につき1万円以下で発行をされると自分が所有する株の価値が下がるため、1個につき1万円以上の価額であれば新株予約権の発行OKとします。

このときにAは、次の事項を定めて取締役会へ募集事項の決定を委任することになります。

  1. 募集新株予約権の数の上限 ▶ 40個
  2. この払込金額の下限    ▶ 1万円

もちろん、取締役会へ委任せずに株主総会の決議で募集事項の決定をすることも可能です。

委任の範囲内であれば複数回決議してもよいか

上記の例で、募集新株予約権の数の上限に達するまでは、取締役会において何回でも募集新株予約権の発行に係る決議をすることができるとされています。

  • 2018年1月 株主総会の決議で募集事項の委任(上限40個)
  • 2018年3月 取締役会の決議で20個発行
  • 2018年6月 取締役会の決議で10個発行
  • 2018年9月 取締役会の決議で10個発行

委任の内容を超える多くの新株予約権を発行するのであれば、改めて株主総会の決議によって募集事項を委任してもらう必要があります。

募集新株予約権の内容

取締役会へ募集事項の決定を委任する場合でも、株主総会において当該募集新株予約権の内容は決定しなければならないとされています(会社法第239条1項1号)。

そのため取締役会へ委任できる募集事項は、実質的には次の2点となります。

  1. 募集新株予約権の数の上限
  2. 金銭の払込みを要するとした場合、払込金額の下限
募集事項決定の委任の有効期限

募集事項の決定の委任には有効期限があります。

新株予約権1個(目的となる株式:普通株式1株)につき1万円で募集事項の委任はしたけれども、5年後は普通株式1株につき5万円になっているかもしれません。

もし、5年後(仮に1株5万円になっていたとします)に新株予約権1個につき1万円で新株予約権を発行されてしまうと、現在の株主が困ってしまいます。

そこで会社法では、募集事項の委任に基づき取締役会で募集事項を決議するときは、株主総会で募集事項の委任を決議した日から「1年以内」にその割当日が到来する募集新株予約権の発行のみ、その効力を有するとされています(会社法第239条3項)。


この記事の著者

司法書士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

RSM汐留パートナーズ司法書士法人では、
商業登記不動産登記相続手続き遺言成年後見など、
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