商業登記関係 代表取締役を1名追加して、追加された代表取締役が印鑑を届け出る
代表取締役を選定して、印鑑届もする
取締役ABC、代表取締役Aという構成の株式会社XYZが、代表取締役にBを追加して取締役ABC、代表取締役ABという構成にしたいと考えた場合の手続きはどのようになるでしょうか。
加えて、現在はAが会社印鑑を届け出ていますが、これをBのみが会社印鑑を届け出ている状態にしたいと考えています。
つまり、
- 取締役ABC
- 代表取締役A(会社印)
の状態を、次のように変更します。
- 取締役ABC
- 代表取締役A
- 代表取締役B(会社印)
代表取締役を選定する手続き
代表取締役の選定をする方法は大きく分けて、取締役会の有無によって異なります。
- 取締役会設置会社 ▶ 取締役会の決議
- 取締役会非設置会社 ▶ 原則として取締役全員が代表取締役
取締役会非設置会社において、特定の取締役を代表取締役にするのであれば、代表取締役の選定方法を定款に定めることができます。
定款に定められる代表取締役の選定方法は次のとおりです。
- 株主総会の決議
- 取締役の互選
- (直接代表取締役を定款で定める)
取締役Bを代表取締役へ
株式会社XYZは、現状代表取締役Aのみとなっているので定款によって特定の取締役を代表取締役に定める方法を採用しています。
定款の定めに従い、株主総会を開催してその決議により代表取締役Bを選定する、または定款に代表取締役としてBの氏名を(住所)氏名を記載するか、取締役の互選によって代表取締役としてBを選定します。
これで株式会社XYZの代表取締役はABの2名となりました。
Bが印鑑の提出をする
代表取締役がABの2名となっても、会社の印鑑を届け出ているのはAのみのままです。
Bも印鑑を届け出るのであれば、別途Bも印鑑届書(+Bの印鑑証明書)を管轄法務局へ提出しなくてはなりません。
会社の印鑑は1名しか届け出てはならないという決まりはありませんので、ABが両方とも会社の印鑑を届け出ることも可能です。
ただし、全く同じ印鑑をABが共に届け出ることはできません。
Aの印鑑の廃止をする
Aが法務局へ届け出ていた印鑑を、Bが届け出るようにしたいのであれば、Aが印鑑の廃止届を提出することによって解決できます。
このときにAの印鑑カードをBが引き継ぐことも可能です。引き継ぐのであれば、Bの印鑑届書に
- 印鑑カードを引き継ぐ旨
- 印鑑カード番号
- 前任者であるAの氏名
を記載します。
印鑑カードを引き継がないのであれば、印鑑カード交付申請書を提出して新しく印鑑カードを発行してもらいましょう。
さて、上記のようにAの印鑑をBが引き継いで届け出るときは、Bを代表取締役とする変更登記の申請と同時に、Aの印鑑廃止届とBの印鑑届書(+印鑑証明書)も併せて法務局へ提出することが一般的です。
この場合、登記申請書(委任するときは委任状)や株主リストへの押印者はBとなります。
代表取締役の選定を証する書面と印鑑証明書
株主総会あるいは取締役の互選によって代表取締役Bを選定したときは、当該書面に押印した取締役全員の印鑑証明書を添付しなければなりません(商業登記規則第61条4項)。
当該書面に、Aが法務局へ届け出ている印鑑(いわゆる会社実印)を押印することにより、各取締役の印鑑証明書の添付を不要とすることができます(商業登記規則第61条4項但書)。
この場合(商業登記規則第61条4項但書に該当するケース)は、A以外の各取締役は個人実印ではなく認印による押印でも問題ありません。
これは、Bの代表取締役就任に関する登記申請と同時にAが印鑑の廃止をして、新たにBが印鑑を届け出る場合でも同様です。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。