商業登記関係 株式会社の監査役と、特例有限会社の監査役の違いを確認する
株式会社と特例有限会社の監査役
株式会社は、定款の定めによって、監査役を置くことができます(会社法第326条2項)。
また、公開会社や監査役会設置会社、会計監査人設置会社等は、監査役を置かなければなりません。
株式会社は監査役を置くことができますが、株式会社だけではなく特例有限会社も監査役を置くことができます。
株式会社の監査役と特例有限会社の監査役も、同じ監査役という文字が使用されていますが、次のような点で異なります。
監査役の監査の範囲
株式会社の監査役は原則として業務監査権限を有しますが、公開会社でない株式会社(監査役会設置会社及び会計監査人設置会社を除く。)は、その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めることができます(会社法第389条1項)。
なお、会社法施行時(平成18年5月1日)において資本の額が1億円以下で、かつ最終の貸借対照表の負債の合計額が200億円未満の株式会社は、会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(以下「整備法」といいます。)第53条により、監査の範囲が会計に関するものに限定する旨の定款の定めがあるとみなされています。
一方で、有限会社の監査役は、整備法第24条により監査の範囲が会計に関するものに限定する旨の定款の定めがあるとみなされています。
(この「みなし規定」を株主総会の決議によって外す、つまり特例有限会社の監査役に業務監査権限を付与することができるという書籍もあります。)
(監査役の監査範囲に関する特則)
整備法第24条
監査役を置く旨の定款の定めのある特例有限会社の定款には、会社法第389条第1項の規定による定めがあるものとみなす。
監査役の任期
株式会社の監査役の任期は、選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までであり(会社法第336条1項)、非公開会社は定款に定めることにより選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することができます。
一方で、特例有限会社の監査役には任期がありません。
特例有限会社の監査役は、特例有限会が解散・清算する、辞任する、解任される、死亡する等の事由が発生するまで監査役で居続けることになります。
監査役の氏名等に関する登記事項
株式会社と特例有限会社の監査役では登記事項に違いがあります。
株式会社では監査役の氏名が登記事項とされており、特例有限会社では監査役の住所・氏名が登記事項とされています。
特例有限会社においては、監査役の住所に変更が生じたときは、住所を移転した日から2週間以内にその旨の登記申請をしなくてはなりません。
監査役の監査の範囲に関する登記
また、「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある」旨の登記は、株式会社では登記事項とされていますが特例有限会社では登記事項とされていません。
整備法第24条により、監査役の監査の範囲が会計に関するものに限定されているとみなされているため、登記簿でわざわざ公示をする必要がないためです。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。