商業登記関係 会社の登記をしないと、会社が行った行為の効果は発生しないのでしょうか
会社登記と効力の発生
役員を追加したので、その効力を生じさせるために早くその会社登記をしたいという趣旨のご相談をいただくことがあります。
会社設立の登記と異なり、役員変更や本店移転、商号変更や増資等の多くの登記事項については、株主総会の決議その他会社法で定められている条件を満たすことによりその効力が生じます。
代表取締役が交代した場合、その登記申請をしていない状況であったとしても新しく就任した代表取締役が、当該株式会社の代表取締役と名乗り、活動をしても問題はありません。
公示力
会社登記の登記事項については、その登記の後でなければ、これをもって善意の第三者に対抗することができないとされています(会社法第908条1項)。
これを会社登記の公示力といいます。
代表取締役がAからBに代わっていたのにその登記をしていない株式会社Xがあったときに、登記簿謄本を見て代表取締役がAだと信じて「株式会社X 代表取締役A」と取引をした人を保護する規定です。
公信力
故意又は過失によって不実の事項を登記した者は、その事項が不実であることをもって善意の第三者に対抗することができません(会社法第908条2項)。
代表取締役がCであるのに偽って代表取締役がDに代わった旨の登記をしている株式会社Yがあったときに、登記簿謄本を見て代表取締役がDだと信じて「株式会社Y 代表取締役D」と取引をした人を保護する規定です。
これを会社登記の公信力といいます。
会社登記の申請義務
会社の登記事項に変更が生じたときは、その変更が生じたときから2週間以内に変更の登記を申請しなければなりません(会社法第915条1項)。
この規定を守らなかったときは、100万円以下の過料が課されることがあります(会社法第976条)。
この過料は、当該株式会社ではなく、当該株式会社の代表取締役個人に課されることになっています。
会社登記が効力発生要件となっているもの
一部の行為は、会社登記を申請することがその効力発生の要件となっています。
会社登記の申請が効力発生要件となっている行為は次のとおりです。
- 会社の設立
- 新設合併
- 新設分割
- 株式移転
1月1日に会社設立はしていたけれども、その登記を4月1日に申請することが認められるとすると、1月1日から4月1日の登記申請までの間この会社と取引をする相手の、取引上の安全性が担保できないことになります。
新設合併、新設分割、株式移転を含め、新しく会社を作る行為については登記が効力の発生要件となっています。
(株式会社の成立)
会社法第49条株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する。
会社設立の登記申請と取引の開始
株式会社は、設立登記が完了することによって成立するのではなく、設立の登記をすることによって成立します(会社法第49条)。
そのため、会社設立の登記申請をした日から会社として取引をすることができることになります。
しかし、会社設立の登記申請日と登記簿謄本が取得できるようになる日は異なることがほとんどです。
登記申請をしても、例えば登記申請をする法務局を間違っていて却下になれば会社は成立していなかったことになってしまいますので、登記簿謄本や印鑑証明書が取得できるようになってから取引に応じるという人(法人)が多いでしょう。
金融機関の法人口座の開設等は、登記簿謄本の提出が必須とされています。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。