商業登記関係 「監査役を置く」と「監査役を置くことができる」という定款の定め方
特定の機関を置くことができる旨の定款の規定
株式会社が監査役、会計参与、会計監査人あるいは取締役会を置くときは、定款にその旨を記載します。
監査役を置くことが決定している株式会社であれば、定款に「監査役を置く」「監査役を設置する」等と記載しますが、監査役を置く可能性はあるが現在はそれが未定の株式会社についてはどうでしょうか。
監査役や会計監査人の設置義務
一定の条件を満たした株式会社は、監査役や会計監査人を設置しなければなりません。
取締役会設置会社は監査役を置かなければならず(非公開会社の会計参与設置会社を除く)、会計監査人設置会社は監査役を置かなければなりません。
大会社の要件を満たしている株式会社は、会計監査人の設置が義務付けられています。
監査役や会計監査人の設置義務がない株式会社においても、任意的にそれらを置くことが可能です。
「置くことができる」旨の記載はできない
任意的に監査役を置ける株式会社では、もしかしたら将来的に監査役を置くかもしれないということで、「当会社は監査役を置くことができる。」という定款の規定を設けたいというニーズがあるかもしれません。
しかし、このような選択的な定款の定めは否定されています。
監査役を選任する段になって初めて、「当会社は監査役を置く。」等と定款に記載することになります。
一般社団法人や一般財団法人でも同じ
機関の設置について選択的な定款の定めをすることは、株式会社だけでなく一般社団法人や一般財団法人についても同じく否定されています。
例えば一般社団法人を設立するときに、将来的に監事を置くかもしれないということで、「当法人は監事を置くことができる。」という定款の定めをすることは、株式会社同様することができません。
監査役を置くときに定款を変更する
監査役を置くことが決定し、実務的には監査役に就任する人が確定してから、株主総会を開催します。
定款に別段の定めがない限り、監査役の選任は株主総会の普通決議、定款の変更は株主総会の特別決議によって行います。
第1号議案を「定款の一部変更の件」、第2号議案を「監査役選任の件」等として、同じ株主総会において定款変更と監査役選任を行うことが一般的です。
なお、監査役を選任したときは、定款変更日と監査役の就任日からそれぞれ2週間以内にその旨の登記申請をすることが必要です。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。