商業登記関係 株式の譲渡制限を廃止して公開会社になる手続きと登記
非公開会社の株式譲渡制限を廃止する
株式会社のうち、非公開会社とは公開会社以外の株式会社のことをいい、公開会社の定義は、会社法第2条5号に定められています。
会社法第2条5号
公開会社 その発行する全部又は一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社をいう。
譲渡制限の付いていない株式を1株でも発行できるように定款で定められている会社は、当該株式を実際に発行しているかどうかに関わらず公開会社に該当します。
非公開会社が公開会社になるには、株式の譲渡制限の規定を廃止する方法によって行います。
IPOのタイミングを除き、非公開会社から公開会社へ移行する会社は少ないかもしれません。
※本記事は株式公開や株式上場の手続きについて記載はしていません。
公開会社から非公開会社へ
上記とは逆に、公開会社から非公開会社へ移行する会社は一定数あります。
特に、昭和41年以前に設立された会社は現在も公開会社であることが少なくなく、公開会社で居続けるメリットがあまりないことから非公開会社へ移行することがあります。
公開会社から非公開会社へ移行する場合の手続きはこちらをご参照ください。
≫公開会社が株式の全部に譲渡制限を設けて非公開会社になる手続きと登記
株式の譲渡制限の廃止手続き
非公開会社が公開会社になるには、株式の譲渡制限の規定を廃止することになりますが、具体的には株主総会の特別決議で定款変更をする方法によって行います。
それだけであれば話は単純ですが、その他にも公開会社には取締役会設置を置かなければならない等の義務がありますので、その要件を満たすための定款の変更等も同時に行います。
加えて、取締役や監査役がいるときは、公開会社へ移行するタイミングで全員の任期が満了するため選任手続きも必要です。
株主総会の決議(特別決議)
株主総会の特別決議によって、定款の譲渡制限に関する定めを廃止する定款の変更を決議します。
その他に、定款によって次の事項についても必要に応じて変更します。
定款の内容 | 公開会社の必須事項 |
---|---|
株式の譲渡制限規定 | 廃止 |
発行可能株式総数 | 発行済株式数の4倍まで |
株主総会の招集通知期間 | 開催日の2週間以上前 |
属人的株式 | 廃止 |
役員選任権付種類株式 | 廃止 |
取締役の任期 | 選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結まで |
取締役会 | 必須(取締役3名以上) |
監査役の任期 | 選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結まで |
監査役 | 必須、監査役の権限を会計に関するものに限定不可 |
これらは一例であり、公開会社に移行する会社の事情によってそれぞれ定款の内容を検討する必要があります。
取締役、監査役の選任
株式の譲渡制限規定を廃止したときは、取締役の任期が満了し、退任することになります(会社法第332条7項)。
また、株式の譲渡制限規定を廃止したときは、取締役の任期が満了し、退任することになります(会社法第336条4項)。
そのため、取締役3名以上+監査役1名以上を改めて株主総会の決議によって選任をします。
登記申請
定款の変更や取締役・監査役の就任の効力が発生してから2週間以内に、それらの登記を申請します。
この登記の添付書類の一例は次のとおりです。株主総会の内容や就任する役員によって添付書類も変わる可能性があります。
- 株主総会議事録
- 株主リスト
- 定款
- 就任承諾書
- 本人確認証明書
- 印鑑証明書
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。