商業登記関係 合同会社が本店を移転するときの手続きと登記
本店移転の手続き
合同会社の本店所在場所は登記事項とされていますので(会社法第914条)、合同会社がその本店を変更したときは、その変更登記を申請をします。
この変更登記の申請は、本店移転の効力発生日(本店移転日)から2週間以内にすることが求められています(会社法第915条1項)。
本店の移転先の目星が付き、合同会社内の社内の意思決定として、総社員の同意や業務執行社員の過半数の決定によって、本店とその移転日を具体的に決定していきます。
※定款に別段の定めがある場合はそれに従います。
本店移転の決定方法
- 本店に関する定款の記載:当会社は、本店を東京都中央区に置く。
- 本店の所在場所:東京都中央区銀座一丁目1番1号
上記の合同会社Xが、東京都港区新橋一丁目1番1号に本店を移転するときは、
- 総社員の同意によって定款を変更し(「本店を東京都中央区に置く」から「東京都港区に置く」へ変更)
- 具体的な本店の場所と移転日を業務執行社員の過半数の決定する
方法によって行います。
具体的な本店の場所が定款にある
定款に具体的な本店の所在場所が記載されている合同会社の場合はどうでしょうか。
- 本店に関する定款の記載:当会社は、本店を東京都中央区銀座一丁目1番1号に置く。
このような合同会社においては、次のどちらかの方法によって本店を決定します。
- 総社員の同意によって定款を「当会社は、本店を東京都港区新橋一丁目1番1号に置く。」と変更する。
- 総社員の同意によって定款を「当会社は、本店を東京都港区に置く。」と変更し、業務執行社員が具体的な本店の所在場所と移転日を決定する。
管轄内本店移転と管轄外本店移転
管轄内に本店を移転するときと、管轄外へ本店を移転するときでは手続きや登録免許税が変わります。
管轄内本店移転とは、移転する前の本店を管轄する法務局と、移転した後の本店を管轄する法務局が同一である本店移転のことをいいます。
例えば、東京都中央区内で本店を移転する(東京法務局本局)、埼玉県内で本店を移転する(さいたま地方法務局)、神奈川県川崎市から横浜市へ本店を移転する(横浜地方法務局)ようなケースです。
管轄外本店移転とは、移転する前の本店を管轄する法務局と、移転した後の本店を管轄する法務局が異なる本店移転のことをいいます。
例えば、東京都中央区から東京都港区へ本店を移転する(東京法務局本局から東京法務局港出張所へ)、埼玉県から千葉県へ本店を移転する(さいたま地方法務局から千葉地方法務局)、神奈川県鎌倉市から横浜市へ本店を移転する(横浜地方法務局湘南支局から横浜地方法務局)ようなケースです。
本店のビル名が変わったとき
ビルのオーナーが変わったことにより、ビル名が変わることがあります。
このようなケースでは、ビル名まで登記をしている会社は、実質的には本店を移転していないのにもかかわらず本店変更(移転)の登記をすることになります。
法務局によって、本店の変更を決定した業務執行社員の決定に関する書類を要求されることがあります。
登記申請と添付書類
本店移転の登記申請は、管轄法務局へ登記申請書(収入印紙貼付)とその添付書類を提出する方法によって行います。
管轄内本店移転であれば、登記申請書とその添付書類を当該法務局へ提出すれば問題ありません。
管轄外本店移転の場合は、移転前の管轄法務局と、移転後の管轄法務局のどちらにも申請書を提出する必要があるため、申請書は2通用意します。
この場合、この申請書は2通とも「連件で」、移転前の管轄法務局へ提出します。
管轄内本店移転に係る登記申請の添付書類
管轄内本店移転の登記申請書に添付する書類の一例は次のとおりです。
- 業務執行社員の決定書
※総社員の同意によって定款を変更したときは、総社員の同意書も添付します。
※定款に別段の定めがある場合は、定款も添付します。
管轄外本店移転に係る登記申請の添付書類
管轄内本店移転の登記申請書に添付する書類の一例は次のとおりです。
- 総社員の同意書
- 業務執行社員の決定書
- 印鑑届書
- 印鑑カード交付申請書
※定款に別段の定めがある場合や、総社員の同意書で定款の変更内容が分からない場合は、定款も添付します。
※印鑑届書、印鑑カード交付申請書は登記申請書の添付書類ではありませんが、登記申請と同時に提出します。
本店移転の登記に関する登録免許税
管轄内本店移転の登記の登録免許税は3万円で、管轄外本店移転の登記の登録免許税は6万円(旧管轄法務局分が3万円、新管轄法務局分が3万円)です。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。