商業登記関係 相談事例 【相談事例】吸収合併の手続き中、電子公告の調査依頼をし忘れていた
吸収合併と債権者保護手続き
吸収合併の手続きにおいては、債権者保護手続きというものが必須です(会社法第789条2項、第799条2項)。
債権者保護手続きは、官報の申込期間を含めると1ヶ月以上の期間を要する手続きであり、もし失敗してしまうとそのやり直しのために追加で1ヶ月以上かかる可能性があるため、特に慎重に行う必要がある手続きです。
さて、吸収合併の手続きは自社で進め、登記申請の段階になってから登記のご相談を当事務所にいただくことも稀にあります。
電子公告の調査会社への依頼をしていない
定款に公告をする方法を「電子公告」と定めている会社は、債権者保護手続きにおいて、官報公告に加えて電子公告をしたときは、知れたる債権者への個別催告を省略することができます(会社法第789条3項、第799条3項)。
債権者が多い会社においては、このダブル公告がよく利用されている印象です。
会社法には、電子公告(+官報公告)を行えば、知れたる債権者への個別催告は不要と記載されているだけですが、登記手続きにおいては、その電子公告がされていたことを証する書面が無ければ吸収合併の登記は通りません(商業登記法第80条3号及び8号)。
電子公告をしたことを証する書面とは、電子公告調査会社の調査結果が該当します。
もし電子公告調査会社に調査の依頼及び調査の実施をしていないのであれば、その依頼をして調査をしてもらわなければならず、調査の依頼から調査の完了まで最短でも1ヶ月+1週間くらいはかかってしまいます。
効力発生日の変更と公告
債権者保護手続きに不備があり、再度債権者保護手続きをするとしたら、当初予定していた吸収合併の効力発生日が後ろにずれることも十分あり得ます。
吸収合併の手続きにおいて、消滅会社は、存続会社との合意によって、その効力発生日を変更することができます(会社法第790条1項)。
そして、効力発生日を変更したときは、消滅は、変更前の効力発生日の前日までに、変更後の効力発生日を公告しなければなりません(会社法第790条2項)。
吸収合併の手続きは専門家へ
吸収合併を含む組織再編の手続きは、効力発生日を当初予定していたものから動かすと多方面に影響を及ぼすことが少なくありません。
組織再編には多くの関係者が関与するため、手続きに瑕疵が無いように進めた方が良いでしょう。
吸収合併を含む組織再編の手続きは、保険の意味も含め、司法書士に相談をしてみてはいかがでしょうか。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。