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RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2023年10月号

2023年10月2日

インボイス制度のポイント・2023年10月以降の最低賃金・株主総会決議の要件と定款の定め

日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。今月のニュースレターでは、税務より「インボイス制度のポイント」、労務より「2023年10月以降の最低賃金」、司法書士法人より「株主総会決議の要件と定款の定め」について取り上げます。

税務では、10月1日より開始されるインボイス制度についてまとめています。社内フローや請求書のフォーマット、経過措置適用時の影響など、検討すべき事項や取引先とコミュニケーションを取るべき事項が多く、各社、対応に苦慮しているかと思います。今回、改めて主要なポイントをまとめております。また、労務にて取り上げる2023年の最低賃金についても、政府の示した目標も含めてまとめております。多くの企業に関係するものですので、今回のニュースレターを是非お役立てください。

 

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はじめに

2023年10月1日より、インボイス制度が開始されました。今回はインボイス制度のポイントを改めて整理すると共に、令和5年度税制改正に伴う見直しや仕入税額控除の経過措置等、実務上影響が大きいと思われる点を再確認していきたいと思います。

インボイス制度のポイント

「インボイス(適格請求書)」とは、売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるための書類であり、従来の請求書である「区分記載請求書」に「登録番号」「適用税率」「消費税額等」の記載を追加したものをいいます。インボイス制度では、税務署長に申請して登録を受けた課税事業者である「適格請求書発行事業者」が交付するインボイス等の保存が仕入税額控除の要件となります。

令和5年度税制改正での見直し

①納税額を売上税額の2割に軽減
免税事業者がインボイス発行事業者になった場合の納税額を、売上に係る消費税額の2割に軽減する措置が、2023年10月1日から2026年9月30日の3年間講ぜられます。

②少額取引のインボイス保存不要
基準期間における課税売上高が1億円以下又は特定期間における課税売上高が5,000万円以下の事業者は、2023年10月1日から2029年9月30日までの課税仕入で税込価額が1万円未満の取引について、インボイスの保存を不要とし、一定の事項が記載された帳簿のみの保存による仕入税額控除が認められます。

③少額値引等の返還インボイスの交付免除
インボイス発行事業者が、返品や値引き、割戻しなどの売上対価の返還等を行った場合には返還インボイスの交付義務がありますが、金額が税込1万円未満の場合には、交付義務が免除されます。

④登録制度の見直しと手続の柔軟化
2023年10月2日以降に登録を受ける場合、申請書提出日から15日を経過する日以降の日を登録希望日として記載することで、登録通知が登録希望日までに届かなくとも、登録希望日から登録を受けたものとされます。

仕入税額控除の経過措置

免税事業者を含む適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入については、原則として仕入税額控除を受けることができませんが、区分記載請求書等と同様の事項が記載された請求書等及びこの経過措置の規定の適用を受ける旨を記載した帳簿を保存している場合には、一定の期間は仕入税額相当額の一定の割合を仕入税額として控除できる経過措置が設けられています(下表参照)。

期間仕入れ額相当額の内、
控除できる割合
2023/10/1~2026/9/3080%
2026/10/1~2029/9/3050%

おわりに

インボイス制度は全ての事業者に影響がある制度です。実際の業務が進む中で、気づきや疑問点が生じることもあるかもしれません。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。

 

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2023年10月以降の最低賃金について

2023年度の最低賃金が決定しました。全国加重平均額は1,004円、昨年度からの引上げ率は4.5%、引き上げ額は43円で、過去最大の引き上げ額となっています。

1.各都道府県の最低賃金について

各都道府県で適用される最低賃金額については、厚生労働省のWebサイトで確認することができます。

地域別最低賃金の全国一覧 |厚生労働省 (mhlw.go.jp)

2.最低賃金のチェック方法

(1)時給制の場合
時給制の場合は、時給額が最低賃金以上である必要があります。

(2)月給制の場合
月給制の場合は、「最低賃金の対象となる賃金月額」を「月平均の所定労働時間数」で割ったものが最低賃金以上である必要があります。月平均の所定労働時間数は、「1日の所定労働時間数×年間総労働日数÷12か月」で求めることができます。また、最低賃金の対象となる賃金とは、実際に支払われる賃金から次の賃金を除外したものをいいます。

  • 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
  • 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
  • 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
  • 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
  • 午後10時から午前5時までの労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
  • 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当

3.今後の動向

政府は、2030年代半ばまでに最低賃金を1,500円に引き上げることを目標とすることを表明しました。これが実現されるかは分かりませんが、現在も物価高騰が続いており、来年以降も最低賃金の大幅な引き上げが続いていく可能性があります。

4.助成金等

最低賃金引上げに向けた支援事業として、専門家による相談等支援事業や、業務改善助成金などの助成金事業が用意されています。詳細については厚生労働省のWebサイトをご覧ください。

最低賃金引上げに向けた中小企業・小規模事業者への支援事業 |厚生労働省 (mhlw.go.jp)

 

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はじめに

株式会社において、計算書類の承認、剰余金の配当、定款の変更、役員の選任・解任、募集株式・募集新株予約権の発行、組織再編行為、解散等、多くの重要な事項は株主総会の決議によって定めます。これらの決議の多くは普通決議または特別決議をもって承認されるところ、決議要件は定款に定めることにより一定数まで加重または軽減することができます。各社の状況に応じて当該定款の定めがされているか、されている場合はそれが適切かどうかこの機会にご確認いただけますと幸いです。

議決権を行使できない株主

株主総会の決議は議決権を行使できる株主及びその議決権数がポイントになるところ、特別利害関係人、無議決権株式、相互保有株式、単元未満株式、自己株式等は議決権を行使することができません。特別利害関係人が議決権を行使できないケースは、会社法第140条3項、同法第160条4項、同法第175条2項に該当する場合です。

普通決議

株主総会の普通決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行います。多くのケースでは、この定足数を定款で排除しているように見受けられます。定足数を排除しておけば一定の株主が欠席したとしても株主総会の開催ができるようになる一方で、議決権の過半数を有する株主が関与しなくても普通決議が通ってしまう仕組みがある状況とはなります。

一例として、株式会社Xの株主がA(65%)B(35%)で取締役がBのとき、Aが招集通知に気付かず株主総会が開催されてしまうとBの賛成のみで決議が通すことができてしまいます。このような持株比率でAの了承を得ずに決議を進めることは稀かと思いますが、仕組みとしてそれを回避するのであれば、定足数を排除しないでおくことが考えられます。

特別決議

株主総会の特別決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(下限は3分の1以上まで変更可)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2(これを上回る上限の設定可)以上に当たる多数をもって行います。特別決議においても、定足数を3分の1まで下げている定款をよく見かけるところ、定足数を3分の1まで下げると前述の株式会社Ⅹにおいて、普通決議と同様にBだけで特別決議を通せてしまう可能性が生じる仕組みとなっています。これを避けるためには定足数を下げずに過半数としておくことが考えられます。

また、特別決議では一定の数以上の株主の賛成を要する旨を定款で定めることができますので、株主が4名いるときに、特別決議の要件として議決権要件に加えて株主3名以上の賛成が必要等とすることもできます。ただし、機動性や柔軟性等の観点から、あまり複雑にしない方が運営はしやすいと思います。

特定の株主の承認を必須とする場合

特定の株主の承認がなければ株主総会の決議を通せないようにするためには、拒否権付株式(会社法第108条1項8号)や属人的株式で議決権比率を一定数まで高めておく、あるいは株主間契約で定めておく等の方法があります。前述の株式会社Ⅹにおいては定足数を過半数にしておけば(定款で軽減しなければ)株主Aの承認は必須となりますが、各社の状況に応じて適切な設計をされることをお勧めいたします。