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代表司法書士 石川宗徳の 所長ブログ&コラム

監査役の監査の範囲に関する登記

監査役の監査の範囲

監査役は株主総会において選任され、取締役の職務執行を監査することがその役割とされています(会社法第381条1項)。

監査役の監査権限として、次の2パターンがあります。

  1. 業務監査権限+会計監査権限
  2. 会計監査権限のみ

原則として、監査役が有する権限は「1.業務監査権限+会計監査権限」ですが、定款で定めることにより「2.会計監査権限のみ」に監査役の権限を限定することが可能です。

ただし、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定することができる会社は、公開会社でない株式会社(監査役会設置会社及び会計監査人設置会社を除く。)に限られています(会社法第389条1項)。

会計監査権限に限定する場合の定款記載例

監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定するときの定款記載例は次のとおりです。

第○条 監査役は会計に関する事項のみについて監査する権限を有する。
第○条 当会社の監査役の監査の範囲は、会計に関するものに限定する。

なお、業務監査権限を有する監査役がいる株式会社において、上記定款の定めを新たに設けるときは、株主総会の特別決議によって定款変更の手続きを経る必要があります。

今までは登記簿から監査役の権限の範囲が分からなかった

監査役のいる株式会社においては、その監査権限の範囲に関わらず登記簿には監査役がいる旨と監査役の氏名しか記載されていませんでした。

そのため、登記簿からは当該株式会社の監査役の権限がどこまであるのかは、その会社の定款を見る以外に知る方法はありませんでした。

監査役の監査の範囲が会計に限定されている場合、その旨が登記事項となりました。

平成27年5月1日に施行された改正会社法により、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社は、その旨を登記(以下、ここでは「会計監査限定登記」といいます)しなければならなくなりました。

つまり、平成27年5月1日以降は会社の登記簿を確認すれば、その会社の監査役の監査権限の範囲が分かることになります(しかし、次項注意)。

登記申請の時期について経過措置があります

平成27年5月1日以前に監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがあった株式会社については、平成27年5月1日以降に初めて就任または退任する監査役の登記と併せて会計監査限定登記を行えば良いことになっています。

平成27年5月1日以降に設立された会社や、既に会計監査限定登記がされている会社、そして平成27年5月1日以降に監査役が就任あるいは重任している会社を除き、監査役の監査の範囲が登記簿からは判明しない状況が続くことになります。

全ての株式会社が法に則って役員の改選、登記申請等を行っているという前提に立てば、監査役の最長任期である約10年の経過後、平成38年(2025年)以降は、登記簿を確認することにより全ての株式会社の監査役の監査の範囲が分かることになります。

すぐに登記をすることも可能

あくまで平成27年5月1日以降に初めて就任または退任する監査役の登記と併せて行ってもよいという経過措置があるだけですので、会社の状況をきっちり登記簿に反映させておきたいという会社は、平成27年5月1日以降、すぐに会計監査限定登記をすることができます。

なお、「監査役の変更登記」と同一の申請で「会計監査限定登記」を申請するのであれば、その登録免許税は1万円※です。

「会計監査限定登記」を単独で申請して、後日別途「監査役の変更登記」した場合はそれぞれ登録免許税が1万円※かかることになります。

※資本金の額が1億円を超える会社は3万円となります。

会社法整備法によるみなし規定

会社法整備法とは、会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律のことをいいます。

会社法整備法によると、平成18年5月1日の会社法施行時に、資本金の額が1億円以下であり、かつ負債が200億円未満の会社は、監査役の権限を会計監査に限定した旨の定款の定めがあると”みなす”とされています。

従って、上記条件を満たしている株式会社は、定款に直接その旨の規定が無くても、監査役の監査権限は会計監査に限定されていることになります。

なお、会社法施行日以後、株主総会の決議によって定款変更を行い、監査役の監査権限の範囲を変更している会社の監査役は、当然ながら当該変更後の監査権限を有しています。

≫監査役の監査権限の変更

会計監査限定登記と責任免除規定

取締役が2名以上いる監査役設置会社において、取締役等の会社に対する責任につき、一定の条件を満たしているときは、その責任の一部を取締役の過半数の同意(取締役会設置会社においては取締役会の決議)によって免除することができる旨(以下、「責任免除規定」といいます)を定款に定めることができます(会社法第426条1項)。

上記の「監査役設置会社」とは単に監査役のいる会社ではなく、業務監査権限のある監査役のいる会社のことをいいます。つまり、定款に監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定めがある会社は、責任免除規定を定めることはできません。

しかし、平成27年5月1日以前は会計監査限定登記がなかったため、責任免除規定に関する登記を申請するときに監査役の監査の範囲を示すことなく登記ができていました。

司法書士が関与する責任免除規定に関する登記ではそのようなことはないと思いますが、本人申請をしたケースでは、監査役の監査の範囲が会計監査に限定されているのにも関わらず責任免除規定の登記がされていることがあります。

このような会社が会計監査限定登記を申請するときは、責任免除規定を廃止して、その登記を抹消する必要があります。

≫会計限定監査役設置会社と監査役設置会社
≫取締役等の会社に対する責任の免除に関する規定の登記

会計限定の旨の登記記載例

定款に監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定めがある会社は、その旨の登記をしなければなりません(上記のとおり経過措置あり)。

平成27年5月1日以降に新しく監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定めを定款に設定し、同時に監査役を選任した場合の登記簿の記載例は次のとおりです。

役員に関する事項監査役 汐留太郎平成28年10月10日就任
平成28年10月11日登記
監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある平成28年10月10日設定
平成28年10月11日登記

なお、平成27年5月1日以前より定款に監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定めがある会社は、上記のうち会計監査限定登記につき原因年月日は登記されません。

有限会社は監査役の監査の範囲に関する登記は必要か

有限会社においては会計監査限定登記をする必要がありません。

監査役を置く有限会社の定款には、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定めがあるとみなされているため(会社法整備法第24条)、監査役の監査の範囲は会計監査に限定されていますが、会計監査限定登記の規定は有限会社は適用されないとされているからです(会社法整備法第43条1項)。


この記事の著者

司法書士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

RSM汐留パートナーズ司法書士法人では、
商業登記不動産登記相続手続き遺言成年後見など、
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