商業登記関係 株式会社の監査役の設置、廃止の登記
監査役の設置
監査役を設置していなかった株式会社が、監査役設置会社となり監査役を選任したときは、その効力発生日から2週間以内に「監査役就任の登記」と「監査役設置会社の設定の登記」、必要に応じて「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある旨の登記」の申請を法務局にしなければならないとされています。
監査役とは
監査役とは、株主総会で選任される会社の役員の1つで、取締役(会計参与設置会社にあっては、取締役及び会計参与)の職務の執行を監査する役割を担っています。
また、監査役はいつでも取締役(及び会計参与)並びに支配人その他の使用人(加えて必要があるときはその子会社)に対して事業の報告を求めることができ、会社の業務及び財産の状況の調査をすることができる権限を持っています。
会社の業務監査権限+会計監査権限を持っている監査役ですが、大会社ではない非公開会社で、かつ監査役会または会計監査人を置いていない株式会社であれば、監査役の権限を会計監査に限定する旨を定款に定めることができます(会社法第389条1項)。
監査役の権限を会計監査に限定する手続きをご希望の方は、こちらの記事もご参照ください。
≫会計限定監査役設置会社と監査役設置会社
≫監査役の監査の範囲に関する登記
監査役を置くには定款にその旨の規定が必要
監査役を置く場合は、定款に監査役設置会社である旨の定めを設けなければなりません(会社法第326条)。
そのため監査役を今まで置いていなかった会社が新しく監査役を置くときは、監査役を選任するだけではなく、株主総会の特別決議により定款を変更する必要があります。
監査役の選任方法
上記のとおり、監査役を新しく設置するときは株主総会の特別決議によって定款変更をし、同じ株主総会の普通決議によって監査役を選任します。
なお、監査役の選任について累積投票をすることは認められていません。
株主総会は、実際に開催をすることなく書面による決議のみで済ます方法もあります。
≫みなし株主総会決議
監査役を必ず置かなければならない会社
次の会社は、必ず監査役を置かなければならないとされています。
- 取締役会設置会社※
- 監査役会設置会社
- 会計監査人設置会社
※大会社でない非公開会社であって、会計参与を置いている会社は監査役が必須ではありません。
監査役の兼任禁止規定
監査役は、次の地位を兼ねることができません(会社法第335条)。
- その会社の取締役、会計参与、支配人その他使用人
- その子会社の取締役、会計参与、執行役、その他使用人
監査役の会計限定に関する登記
監査役の権限を会計監査に限定する旨を定款に定めたときは、その旨の登記申請をしなければなりません。
監査役の会計限定に関する登記はこちらの記事をご参照ください。
監査役の廃止
監査役を置くことを止めることもできます。
ただし、取締役会設置会社においては取締役会設置会社を併せて廃止したり、会計監査人設置会社においては会計監査人設置会社を併せて廃止するなど、会社法上監査役を置かなければならない会社に該当しない状態になっていなくてはなりません。
監査役を廃止するには定款変更
監査役を置くことをやめるときは、株主総会の特別決議によって監査役を置く旨の定めを定款から外さなくてはなりません。
監査役を廃止する旨(の定款変更)が株主総会で決議されると、監査役は退任することになります。
監査役が退任するとき
監査役は次の事由により退任します。下記⑦は会計限定監査役にのみ当てはまる退任事由です。
辞任したとき | |
株主総会の決議により解任したとき | |
任期が満了したとき | |
非公開会社から公開会社への移行したとき | |
監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社への移行したとき | |
監査役非設置会社への移行したとき | |
監査範囲を会計監査に限定する旨の定款の定め廃止したとき |
監査役を廃止するときは、ここもチェック
監査役を廃止するときは、次の事項も併せて確認をします。
役員の責任免除規定
役員の責任免除規定は、監査役設置会社のみ定款にその旨を記載することができます。
この役員の責任免除規定は登記事項ですので、その登記がある会社は監査役の廃止の登記と併せて、責任免除規定に関する定款の変更・登記申請をします。
役員の責任限定契約
定款にその旨を定めることにより、会社は非業務執行取締役や監査役等と賠償の限度額に関する契約を締結することができます。
この責任限定契約を締結することができる旨は登記事項ですので、監査役と責任限定契約を締結することができる旨の登記がある会社は、それを監査役の廃止の登記と併せて定款の変更・登記申請をします。
種類株主総会による承認
種類株式の内容の一部は登記事項ですので、監査役の選任に関する種類株式を発行している会社は、その内容の監査役の部分につき定款を変更・登記申請をします。
監査役の廃止について、種類株式にかかる株主総会の承認が必要なときは、その株主総会も忘れずに行わなければなりません。
取締役会も廃止する場合
監査役の廃止と併せて取締役会も廃止するときは、その株主総会決議等が必要となります。
取締役会廃止の手続きについては、次の記事をご参照ください。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。