商業登記関係 株式会社の機関設計
株式会社と機関
会社法が平成18年5月に施行されてから、株式会社の機関設計が柔軟に設計できるようになりました。資本金の最低金額がなくなったことに加えて、一定の会社は取締役会(+監査役)の設置義務がなくなったことにより、資本金1円から一人でも株式会社が作れることになりましたので、株式会社を作るハードルは非常に下がったと思います。
しかし、どのような会社でも最低取締役1名いれば良いのではなく、会社の規模等によって最低限設置しなければならない機関が会社法によって定められています。
機関設計例の一覧
以下は、株式会社の機関設計の一例です。
公開会社 | 非公開会社 | |
---|---|---|
大 会 社 | ①取締役会+監査役+監査役会+会計監査人 ②取締役会+監査等委員会+会計監査人 ③取締役会+指名委員会等+会計監査人 | ①取締役+監査役+会計監査人 ②取締役会+監査役+会計監査人 ③取締役会+監査役+監査役会+会計監査人 ④取締役会+監査等委員会+会計監査人 ⑤取締役会+指名委員会等+会計監査人 |
大 会 社 以 外 | ①取締役会+監査役 ②取締役会+監査役+監査役会 ③取締役会+監査役+会計監査人 ④取締役会+監査役+監査役会+会計監査人 ⑤取締役会+監査等委員会+会計監査人 ⑥取締役会+指名委員会等+会計監査人 | ①取締役 ②取締役+監査役 ③取締役+監査役+会計監査人 ④取締役会+会計参与 ⑤取締役会+監査役 ⑥取締役会+監査役+監査役会 ⑦取締役会+監査役+会計監査人 ⑧取締役会+監査役+監査役会+会計監査人 ⑨取締役会+監査等委員会+会計監査人 ⑩取締役会+指名委員会等+会計監査人 |
全ての株式会社に必要な機関
株主総会及び取締役は全ての株式会社において置くことが必要とされています。
大会社
大会社とは、最終事業年度における貸借対照表上、資本金として計上した額が5億円以上または負債として計上した額の合計額が200億円以上の会社のことをいいます(会社法第2条6号)。
例えば資本金4億円、負債の額が5億円の会社が事業年度の途中で増資をして資本金が7億円になったとしても、同事業年度内に減資をして資本金が5億円未満となったのであれば、当該会社は大会社には該当しません。
公開会社でなく、大会社でもない会社
この条件を満たす会社は、会社法における機関設計上、取締役1名で問題ありません(会社法第326条1項)。
また、上記一覧のうち②④の監査役は、監査権限を会計に関するものに限定することが定款に定めることにより可能です。
取締役会を置いたときは、監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社を除き監査役を置かなければなりませんが、会計参与をこの監査役に代えることができます(上記④の例)。但し、監査役会や会計監査人を置いたときはこの限りではありません。
※会計参与を任意で置くことはできます。
公開会社では取締役会は必須
公開会社においては取締役会を必ず置かなければなりません(会社法第327条1項1号)。
取締役会を置いた会社は、監査役を置く必要があります。但し、監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社、公開会社ではなく大会社でもない会計参与設置会社を除きます(会社法第327条2項)。
会計監査人が必要な会社
次の会社は会計監査人を置かなければなりません。
会計監査人を置いたら監査役が必要
会計監査人を置いた会社は、監査役を置く必要があります。但し、監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社を除きます(会社法第327条3項)。
この監査役は、監査権限を会計に関するものに限定された監査役は不可で、会計参与によって代えることもできません。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。