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松橋 亮太 Ryota Matsuhashi

この記事の著者

松橋 亮太 Ryota Matsuhashi

パートナー  / 税理士

【国際課税Q&A】外国法人から受けるコンサルティングサービスに係る課税の取扱い

2023年8月14日

質問

日本に恒久的施設(PE)を有していない外国法人が、日本法人に対して経営に関するコンサルティングサービスの提供を行った場合の、日本における法人税(源泉所得税含む)及び消費税上の取扱いについて教えて下さい。

回答

法人税・源泉所得税

外国法人が日本国内にPEを有していなければ、コンサルティングサービスの提供に対する日本での課税はなされないものと判断できます。

消費税

コンサルタントが日本に来日せず、国外にて役務提供がなされる場合は、消費税の課税対象外と判断できます。

根拠

法人税・源泉所得税

1.国内法による判定
外国法人に対しては非居住者と同様に、日本での課税は法人税法138条に規定される「国内源泉所得」のみに限定されます。よって、今回の外国法人の日本法人に対するコンサルティングサービスの提供による収入が、国内源泉所得に該当するか否かが第一の論点となります。

通常、経営コンサルティングサービスの提供は、人的役務の提供事業に該当すると判断されることから、国内において行われるもののみが国内源泉所得として扱われます(法人税法138条1項4号)。それゆえ、日本国内にPEを有さない外国法人が、本社など、国外で当該サービス提供を行う場合には、その収入は国内源泉所得には該当せず、日本における法人税の対象外となります。

一方、コンサルタントが来日し、サービス提供が日本国内で行われる場合には、当該役務提供に係る収入は国内源泉所得に該当します(法人税法138条1項4号)。この場合は、PEを有していなくても外国法人は日本での法人税の申告が必要となります(法人税法141条、144条の6第2項)。

源泉所得税の取扱いも法人税と同様に、この場合は、対価を支払う日本法人は支払いの際に20.42%の源泉徴収を行う必要があります(所得税法161条1項6号、212条1項、213条1項)。

2.租税条約による判定
外国法人の居住国と日本の間で租税条約が締結されている場合には、国内法による判定後、租税条約による判定が必要となります。

多くの国の租税条約においては、OECDが作成した「モデル租税条約」の構成が踏襲されています。OECDモデル租税条約では、人的役務の提供事業から生じる所得については「事業利得」に含まれ、7条にて記載がなされています。7条(事業利得)では、「一方の締約国の企業の利得に対しては、その企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内において事業を行わない限り、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。」という記載がなされています。本件に置き換えてわかりやすく転換すると「非居住者や外国法人の事業所得に対しては、非居住者等が日本にPEを有し、これを通じて日本において事業を行わない限り日本では課税されない(PEなければ課税 なし)」という内容です。

よって、当該外国法人が日本においてPEを有し、コンサルティングサービスの提供がPEを通じた取引である場合を除いて、租税条約上は、日本での課税はなされないものとされます。租税条約は国内法の規定に優先して適用されるため、国内法上、課税対象と判断された場合においても、租税条約が締結されている場合には、当該租税条約7条を持って、法人税及び源泉所得税のいずれについても、日本での課税が免除されることになります。

また、租税条約による判断において重要な要素であるPEについては、日本に一定の活動拠点がある場合には、慎重な検討が必要です(国内法上のPEの種類、定義については【国際税務Q&A】非居住者に対する報酬の源泉徴収の 要否」| RSM汐留パートナーズの重要用語を参照)。

今回のケースでは、外国法人が日本においてPEを有さず、提供されるコンサルティングサービスが、①国外にて提供される場合には、国内源泉所得に該当せず、日本での課税対象外となり、②コンサルタントが来日し、国内にて提供される場合においては、国内源泉所得に該当し、日本での課税が必要となりますが、租税条約が締結されている場合、最終的には租税条約7条を持って日本での課税は免除されることになります。なお、コンサルティング業務に付随して著作権の使用料等を受け取る場合には、別途検討が必要となる場合があります。

消費税

消費税においては租税条約はなく、国内法のみで判定がなされます。消費税は、原則として、①国内において、②事業者が事業として、③対価を得て行う、④資産の譲渡、資産の 貸付け及びサービスの提供に対して課税されます(消費税法4条1項)。よって、当該コンサルティングサービスの提供が上記4つの要件に該当するか否かという視点で判断することになります。

この点、②~④については②外国法人が事業として、③対価を得て、④サービスの提供を行うという点で容易に該当するものと判断することができます。それゆえ、外国法人から受けるコンサルティングサービスにおいて論点になるのは、「①国内において」という役務提供の場所に関わる条件の部分になります。

役務提供地が「国内」「国外」のいずれか明確な場合、もしくは契約書等で明記され、それが実態に即している場合は簡単です。役務提供地が「国内」の場合は、上記の①の条件に合致し、消費税課税取引となります。逆に「国外」の場合は条件に合致せず、消費税の対象外となります。

一方、国内及び国外にわたって行われるサービスの提供や、契約書等でサービス提供地が特定できない場合など、役務提供地を1ヶ所に特定できない場合は、「役務提供を行うものに係る事務所等の所在地」で判定することとなります(消費税法施行令6条2項六)。

よって、国内に事業所等を有さない外国法人が日本法人に対してサービス提供を行った場合は、電気通信利用役務の提供と呼ばれる取引に該当しない限り、一般的に国外取引として、消費税の課税対象外となります。

まとめ

以上より、外国法人から受けるコンサルティングサービスに係る課税関係については、コンサルタントが来日するか否か(役務提供地)が重要な判断基準になるということがわかります。

即ち、法人税(源泉所得税を含む)でも、消費税でも、国内で役務提供がなされたものについては課税対象となり、国外で役務提供がなされたものについては課税対象外となります。課税対象とされる法人税及び源泉所得税については、そのうえで租税条約による免税の余地を検討することとなります。

国際税務Q&A_外国法人から受けるコンサルティングサービスに係る課税の取扱い(PDF)

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