海外にある本社や支店から、日本の拠点へ外国人社員を呼び寄せる際、主に検討される在留資格(ビザ)として「企業内転勤」と「高度専門職」が挙げられます。実務上、「どちらの在留資格を申請すべきか」というご相談は多く見受けられます。手続きの要件こそ異なりますが、両者の最大の違いは、許可された後の「優遇措置」の有無にあると言っても過言ではありません。本記事では、在留資格「高度専門職」に付与される優遇措置に焦点を当て、「企業内転勤」との決定的な違いについて解説します。
1. 2つの在留資格の基本的な位置づけ
比較に入る前に、それぞれの在留資格の基本的な性質について確認します。
在留資格「企業内転勤」とは
「企業内転勤」は、海外の本店・支店等から、日本にある事業所へ期間を定めて転勤する外国人を対象とした在留資格です。学歴要件が比較的柔軟である一方、活動内容は「技術・人文知識・国際業務」に相当するものに限られます。
在留資格「高度専門職」とは
「高度専門職」は、高度な専門能力を持つ人材の受入れ促進を目的とした在留資格です。「高度人材ポイント制」により、学歴・職歴・年収などをポイント換算し、合計が70点以上の場合に認定されます。この資格の最大の特徴は、出入国管理上の様々な優遇措置が受けられる点にあります。
*高度専門職は、1号と2号に大別され、それぞれ(イ)(ロ)(ハ)に細分化されます。(ロ)は従業員の方向けの区分であって、「技術・人文知識・国際業務」と「企業内転勤」の上位の在留資格に該当します。本記事における「高度専門職(1号)」とは、「企業内転勤」との比較上、「高度専門職1号(ロ)」を指します
2. 優遇措置における主な相違点
「企業内転勤」と比較した場合、「高度専門職(1号)」には主に以下のようなメリットが存在します。
① 永住許可要件の緩和
最も大きな違いの一つが、永住権取得までの期間です。
- 企業内転勤の場合
原則として、引き続き10年以上日本に在留することが求められます。 - 高度専門職の場合
ポイントが70点以上の場合は3年、80点以上の場合はわずか1年の在留で永住許可申請の対象となる特例があります。将来的に日本への永住を視野に入れている駐在員の方にとっては、非常に大きなメリットとなるでしょう。
② 在留期間の付与
一度の許可で与えられる在留期間の長さも異なります。
- 企業内転勤の場合
「5年、3年、1年、3月」のいずれかが決定されます。初回申請時などは1年や3年となるケースも少なくありません。 - 高度専門職の場合
法律上、一律で「5年」の在留期間が付与されます。在留期間が長ければ、更新手続きの頻度が減り、企業・本人双方の事務負担が軽減されることが期待できます。
③ 配偶者の就労活動
帯同する配偶者の活動範囲についても、大きな違いが見られます。
- 企業内転勤の配偶者
通常、「家族滞在」の在留資格となります。就労するためには「資格外活動許可」が必要であり、原則として週28時間以内のパートタイム労働に限られます。フルタイムで働くには、配偶者自身が学歴等の要件を満たし、就労ビザを取得する必要があります。 - 高度専門職の配偶者
一定の要件(世帯年収等)を満たす場合、学歴や職歴などの要件を満たさなくても、「研究」「教育」「技術・人文知識・国際業務」などに該当する就労活動(フルタイム勤務等)を行うことが認められます。
④ 親の帯同および家事使用人の帯同
「企業内転勤」を含む一般の就労ビザでは、原則として親や家事使用人の帯同は認められていません。しかし、「高度専門職」では一定の条件下(世帯年収や子の年齢等)において、これらが許可される場合があります。特に、小さなお子様がいらっしゃる家庭においては、親の帯同が可能かどうかが日本赴任の大きな判断材料となることがあります。
3. 比較まとめ:どちらを選択すべきか
これまでの相違点を整理すると、以下のようになります。
| 項目 | 在留資格「企業内転勤」 | 在留資格「高度専門職(1号)」 |
| ポイント要件 | 不要 | 70点以上が必要 |
| 在留期間 | 5年、3年、1年など | 一律5年 |
| 永住申請要件 | 原則10年 | 最短1年または3年 |
| 配偶者の就労 | 原則「家族滞在」(制限あり) | 特定活動でフルタイム可(要件あり) |
| 親・家事使用人 | 原則不可 | 一定条件下で可 |
「高度専門職」を選択する視点
ポイント計算で70点以上が見込まれ、かつ中長期的な日本滞在や家族の就労、あるいは早期の永住権取得を希望される場合は、「高度専門職」への変更や認定申請を検討する価値が高いと言えます。
「企業内転勤」を選択する視点
一方で、高度専門職は審査において年収証明などの立証資料が多岐にわたる傾向があります。短期のプロジェクトでの来日である場合や、ポイントが要件に満たない場合は、従来の「企業内転勤」の方が手続きが円滑に進む可能性も考えられます。また、「企業内転勤」においては、申請人の学歴が不問です。高等教育機関を未修の場合であっても他の要件を満たせば申請できる余地があることも特筆すべき点です。
4. まとめ
在留資格「高度専門職」と「企業内転勤」は、実務上の活動内容は類似していても、付与される権利や将来の展望には大きな「相違」があります。特に「高度専門職」の優遇措置は、外国人材の日本への定着を後押しする強力な制度です。しかし、申請にあたってはポイントの疎明資料など、入念な準備が必要となることにも留意が必要です。企業の戦略やご本人のキャリアプランに合わせて、最適な在留資格を選択することが重要となります。
