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建設業界の中小企業と脱炭素:基礎から戦略・資金調達までの全体像

建設業界の中小企業と脱炭素:基礎から戦略・資金調達までの全体像

建設業
2024年6月1日

現在、温室効果ガスの削減に向けた取り組みは国際的な規模で進展しています。しかし、「大企業が主導して進めている取り組み」という印象が強く、中小企業にとっては実践が難しいのではないかと考える声も少なくありません。特に建設業界では、作業現場が多岐にわたることから、効果的な対策の実施は容易ではないと感じる人もいます。

中小企業にとって、温室効果ガス削減への対応はコストの観点から負担が大きいと感じられる場合もあります。しかし、その一方で、こうした取り組みには多くのメリットも存在します。本コラムでは、中小企業が進める脱炭素化への具体的な取り組みと、その効果について解説します。

まずは、「脱炭素」と「カーボンニュートラル」という2つの用語について整理しておきましょう。

「脱炭素」あるいは「脱炭素社会」とは、温室効果ガスの排出を実質的にゼロにした社会を指します。一方、カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量そのものを削減するとともに、排出された分については吸収・除去などの手段を用いて相殺し、排出量を実質的にプラスマイナスゼロにする取り組みを意味します。

 なお、環境省もこの2つの用語を明確に区別して定義しているわけではなく、一般的には「脱炭素社会を実現するための具体的な手段として、カーボンニュートラルが推進されている」と理解されています。

次に、脱炭素社会を考えるうえで重要なキーワードである「温室効果ガス」について、基本的な仕組みを確認しておきましょう。

太陽の光によって地表は温められ、その熱は徐々に宇宙空間へ放出されます。しかし、大気中に存在する温室効果ガスはこの熱を一部吸収し、再び地表に放射する性質を持っています。

温室効果ガスが存在しなければ、地球の平均気温は約−19℃になるとも言われており、生物の生存にとって不可欠な要素です。しかし一方で、その濃度が増加することで地球温暖化などの深刻な環境問題を引き起こしているのも現実です。

温室効果ガスには、メタンやフロンガスなど複数の種類がありますが、その中でも最もよく知られているのが二酸化炭素(CO₂)です。実務や報道などの場面では、「温室効果ガス排出量」と「CO₂排出量」という表現が同じ意味合いで使われることも少なくありません。

なお、同様の文脈で「GHG排出量」という表現が使われることもあります。GHGとは “Greenhouse Gas” の略で、温室効果ガス全般を指す言葉です。GHG排出量とCO₂排出量は同義的に扱われるケースも多いものの、正確にはGHG排出量の方が対象とする範囲が広いという違いがあります。

中小企業における脱炭素の取り組みは、大企業と比べるとまだ十分に進展していないのが現状です。しかしながら、中小企業においても脱炭素に取り組むべき理由や動機は複数存在します。

大企業では脱炭素化の取り組みが着実に進展しており、今後は自社グループ内にとどまらず、サプライチェーン全体に対して温室効果ガス排出量の開示や削減を求める動きが一層広がると考えられます。代表的な事例として、Appleは2030年までにサプライチェーン全体でカーボンニュートラルを実現することを目標に掲げ、取引先企業に対して省エネルギー施策の推進や再生可能エネルギーの導入を強く促しています。

建設業界でも、スーパーゼネコンをはじめとする大企業が脱炭素化を進める動きを見せており、今後は下請け企業に対しても同様の取り組みを求める可能性が高いと考えられます。

企業への融資において、地球温暖化対策への取り組み状況を評価対象とする金融機関が増えつつあります。積極的に脱炭素化を進める企業には、融資条件を優遇するケースも見られ、今後は対策を講じない企業が不利な立場に置かれる可能性もあります。また、時期によっては国の補助制度を活用し、利子の一部が補填されるといった支援を受けられる場合もあります。そのため、温暖化対策への取り組みは、資金調達の面でも企業にとって有利に働く可能性があります。

これまでに述べたとおり、中小企業における環境投資は依然として十分に進展していないのが現状です。したがって、現時点から積極的に取り組むことで、他社との差別化や社会的な注目を集めやすい状況にあります。特に建設業界においては、中小企業による先進的な取り組み事例がまだ多くないため、早期に着手することで得られるメリットは大きいと考えられます。

さらに、こうした取り組みを通じて企業の知名度や認知度が向上すれば、優秀な人材の採用につながるほか、既存社員の定着(リテンション)といった人事面での効果も期待できます。

脱炭素化に向けた取り組みを進めるうえで、企業が最も課題として挙げるのは資金面の確保ではないでしょうか。脱炭素化への対応にあたって、企業にとって最も大きな懸念事項の一つが資金調達です。内閣府が過去に行ったアンケート調査では、地球温暖化対策などのグリーン投資により設備投資額が増加すると回答した企業は47.0%、研究開発費が増加すると回答した企業は52.4%に達しており、多くの企業が投資負担の増大を見込んでいることが明らかになっています。特に建設業では、研究開発費の増加を見込む企業の割合が他業種よりも高いという特徴が見られます。

(出典:「我が国企業の脱炭素化に向けた取組状況 ―アンケート調査の分析結果の概要―」)

増加する投資負担を自社の内部資金だけでまかなうことは容易ではなく、多くの企業では新たな資金調達手段の確保が必要になると考えられます。一般社団法人全国銀行協会が提供する 「﷟HYPERLINK “https://www.zenginkyo.or.jp/abstract/eco/ecomap/”全国銀行 eco マップ」では、金融機関から受けられる環境問題対策支援を検索できます。また、国からの補助金を利用できる可能性もあります。を活用すれば、各金融機関が実施している環境対策に関連した融資・支援制度を検索することが可能です。さらに、国の補助金制度を利用できる場合もあり、こうした外部支援を組み合わせることで、資金面の課題を緩和できる可能性があります。

脱炭素化への対応は、社会全体で連携して進めるべき重要な課題です。個人、中小企業、大企業といった主体ごとに取り組める内容は異なるものの、資金調達の仕組みを上手く活用しながら、積極的に行動していく姿勢が求められます。

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