次世代KSKが税務調査に与える影響、2026年度の主な法改正、法務局の休日と会社設立日の新ルール
今月のニュースレターでは、税理士法人より「次世代KSKが税務調査に与える影響」、社会保険労務士法人より「2026年度の主な法改正」、司法書士法人より「法務局の休日と会社設立日の新ルール」についてお届けいたします。
税理士法人では、国税庁のシステム刷新やAI活用が税務調査に与える影響について、現状と今後の方向性を整理し、実務上の留意点を解説します。社会保険労務士法人では、2026年度施行の人事労務・社会保険関連の主な法改正を取り上げ、実務への影響と対応時の留意事項を解説します。司法書士法人では、法務局の休日を会社・法人の設立日として指定できる新ルールについて、対象範囲や手続き、事前準備の要件など実務上のポイントを整理します。
今月のニュースレターも、日々の実務にぜひお役立てください。

はじめに
最近SNSや動画サイトで「国税庁のAIが個人のSNSや銀行口座を常時監視し、自動で税務調査が来る!」といったセンセーショナルな噂を目にしたことはありませんか?結論から言えば、現段階ではこうした噂は過剰に脚色されたものであり、過度に恐れる必要はありません。
今回は、国税庁のシステム刷新(次世代KSKシステム等)とAI活用が、実際の税務調査にどう影響するのか、税務の現場の視点から実態を整理します。
現状の国税庁のAI利用状況
国税庁では現在、次世代システム(いわゆるKSKシステムの高度化)を進めており、各種データを活用した分析体制の整備が進められています。具体的には、外部データやインターネット情報、過去の調査事績などをデータベース化し、統計分析や機械学習を活用して「申告漏れの可能性が高い納税者」を抽出する仕組みの構築が検討されています。
ただし、このAIの役割はあくまで「調査対象の絞り込み」です。AIが自動的に税務調査を実施するわけではなく、最終的な判断や調査は従来どおり税務職員が行います。
また、銀行口座についても、金融機関に対する預貯金等の「オンライン照会」が拡大しているに過ぎず、国税当局が銀行システムに直接接続して常時監視しているわけではありません。SNS情報についても、AIが自動的に証拠を確定するのではなく、最終的なデータの突合やSNSの裏取りなどは、引き続き調査官が「人的」に行います。
今後想定されるAI活用の方向性
今後導入が噂される生成AI(令和10年予定)についても、「AIが自律的に納税者の非を暴き出す」ものではありません。現在想定されているのは、調査官向けの「業務効率化アシスタント(内部ツール)」です。例えば、若手調査官が「〇〇業の調査ではどの項目を重点的に見るべきか」「調査報告書はどうまとめるか」とAIに質問し、過去の判例や通達、内部マニュアルから要約を得るといったメンター的な活用が想定されています。
ただし、AI技術は日進月歩であり、将来的にはデータ突合など自動化できる範囲が拡大する可能性もあります。制度やシステムのアップデートについては、今後も注視が必要です。
おわりに
SF映画のような「AIによる全自動税務調査」が今すぐ実現するわけではありませんが、油断は禁物です。調査官がデジタルツールを活用することで、情報収集は迅速化し、調査ターゲットの選定はより精密になっています。つまり、「この程度なら見つからないだろう」というどんぶり勘定は通用しにくくなっているということです。
過度に怯える必要はありませんが、AI技術がさらに進化する将来を見据え、「適正な記帳」と「証拠書類の保存」がこれまで以上に重要になるのは間違いありません。
弊社では、こうした税務行政のデジタル化の動向も踏まえ、税務調査リスクを最小限に抑えるための適正な会計処理をしっかりとサポートしてまいります。ご不明点等ございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。

2026年度の主な法改正について
2026年4月以降、労働関係・社会保険分野において企業実務に影響の大きい制度改正が順次施行されます。本号では、特に人事労務担当者が特に押さえておくべき改正点を整理し、対応時の留意事項をご紹介します。
法改正内容
・女性活躍推進法(4月1日施行)
改正により、常用労働者101人以上の企業における情報公表義務が拡大されます。これまで301人以上の企業に義務付けられていた「男女間の賃金差異」に加え、新たに「女性管理職比率」が必須の公表項目となります。さらに、「職業生活に関する機会の提供」または「仕事と家庭の両立に資する雇用環境の整備」に関する事項から1項目以上を選択して公表する必要があり、合計3項目以上の情 公表が求められます。また、女性の健康上の特性に配慮した取組の重要性が明確化され、法律の有効期限も10年間延長され、2036年3月31日まで継続されました。
・雇用保険料率の改定(4月1日施行)
雇用保険料率については、労使負担分がそれぞれ0.05%引き下げられ、合計1.35%となります。
・障害者雇用促進法(7月1日施行)
法定雇用率が現行2.5%から2.7%へ引き上げられます。これにより、従業員38名以上の企業では障害者1人以上雇用する義務が生じます。また、従業員101名以上で法定雇用率を満たさない場合、不足人数1人につき月額5万円の障害者雇用納付金が課されます。6月1日時点の雇用状況は「障害者雇用状況報告書」として7月15日までに提出する必要があるため、障害者手帳の有効期限や勤務実態の確認を行っておくことが重要です。
・労働施策総合推進法(10月1日施行)
カスタマーハラスメントへの対応として、企業に防止措置を講じることが義務化されます。顧客や取引先等からの迷惑行為により従業員の就業環境が害される事例が増えており、社外関係者による行為への対応体制の整備が求められます。方針の明確化、相談窓口の設置、対応手順の整備、従業員への周知・教育などを進めておく必要があります。
・国民年金法(10月1日施行)
国民年金の第1号被保険者(自営業者・フリーランス等)が、子どもが1歳に到達するまでの間、国民年金保険料を免除する制度が創設されます。育児期の所得減少への支援を目的としており、所得要件は設けられていません。母が出産した場合には、従来の産前産後期間の免除に加え、出産後の一定期間も対象となります。
おわりに
春は入退社や異動に伴う手続きに加え、社会保険料率の改定対応、雇用状況報告書の作成、年度更新や算定基礎届の準備など、人事労務業務が集中する時期です。制度改正への対応を後回しにすると負担が大きくなるため、早めの確認と準備をお勧めします。本ニュースレターが、実務対応の一助となれば幸いです。人事労務に関する不明点がございましたら、お気軽にご相談ください。

はじめに
株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立します(会社法第49条)。登記は法務局の開庁日の業務取扱時間にしか受付をしていないため、令和8年4月1日(水曜日)を株式会社の設立日としたい場合は、令和8年4月1日の午前8時30分から午後5時15分までに管轄法務局へ登記申請をすることが求められます。そのため、1月1日や5月5日のような祝日を株式会社の設立日とすることができない仕組みとなっていました。
土日祝日を設立日に指定する
土日祝日を設立日にしたいというニーズもあったことから、商業登記規則が改正され、令和8年2月2日以降は土日祝日(法務局の休日)を会社・法人の設立登記の日とすることができるようになりました。
対象となる会社・法人
株式会社以外にも、合同会社、一般社団法人又は一般財団法人も法務局の休日を設立登記の日とすることができます。
法務局の休日を設立日とする手続き
法務局の休日を設立登記の日とするためにはいくつかの条件があります。
一つ目は、設立日としたい日が法務局の休日である場合、その前平日の業務取扱時間に登記申請をすることです。令和8年4月25日(土曜日)を設立日としたい場合は、4月24日(金曜日)の午前8時30分から午後5時15分までに管轄法務局へ登記申請をします。法務局の休日が連続する場合、例えば5月5日(火)を設立日としたい場合は5月1日(金曜日)午前8時30分から午後5時15分までに管轄法務局へ登記申請をすることになります。
二つ目は、登記申請書の登記すべき事項に「会社(又は法人)成立の年月日」として設立日としたい日を記載し、加えて、その他の事項に登記の年月日(設立日)は登記すべき事項の「会社(又は法人)成立の年月日」に記載した日付のとおりとすることを求める旨を記載します。
登記申請日までに準備の完了
登記申請をする日までに、申請に必要な手続きが全て終わっていることが求められます。株式会社の設立登記においては、公証人による定款の認証、出資の履行、設立時役員の就任等が登記申請をする日までに済んでいなければなりません。
新設合併、新設分割、株式移転
株式会社の設立登記だけではなく、新設合併、新設分割又は株式移転といった新設型の組織再編行為において、法務局の休日を設立登記の日とすることも可能です。なお、合同会社から株式会社への組織変更のような組織変更による設立の登記、持分会社の種類の変更による設立の登記、有限会社から株式会社への組織変更による設立の登記には適用がありません。
バックデートは不可
設立登記の日の指定は申請日の翌日が法務局の休日である場合においてのみ行うことができます。そのため、過去の日を設立日として指定することはできません。平日を設立日とする場合も同様ですが、設立日をこの日としたいというニーズがある場合は、必ず特定の日の法務局の業務取扱時間に登記申請を行い、その申請が受け付けられる必要がありますので設立日に拘りがある場合はご注意ください。
