「内部監査部門を立ち上げたが、専任の人員も監査の専門知識も足りない」「監査計画は作ったものの、現場で実査を回せる人材がいない」「IPO準備のなかで監査体制の構築を求められているが、社内だけでは間に合わない」——内部監査の責任者や管理部門の方から、こうしたお悩みをよく伺います。
内部監査は、リスクの洗い出しから監査計画の策定、往査・実査、評価、報告、フォローアップまで、一連の専門性と工数を要する業務です。すべてを社内人材だけで完結させようとすると、人員の確保・育成に時間がかかり、属人化や品質のばらつきも生じやすくなります。そこで選択肢となるのが、外部の専門家を活用する「アウトソース」と「コソース」です。
この記事では、内部監査のアウトソースとコソースの違い、外部活用が向いているケース・向かないケース、得られるメリットと留意点、依頼できる業務範囲と役割分担の設計、そして依頼先の選び方までを、実務の視点から整理して解説します。リソース不足を外部で補いたいと検討されている方が、自社にとって最適な外部活用の形を判断できるようになることを目的としています。
内部監査のアウトソース・コソースとは(定義と違い)
まず、用語の整理から始めます。内部監査の外部活用には、大きく分けて「アウトソース(フルアウトソーシング)」と「コソース(コソーシング)」の二つの形態があります。どちらも外部の専門家を使う点は共通していますが、社内が担う役割と外部が担う役割の配分が異なります。
アウトソース(フルアウトソーシング)とは
アウトソースとは、内部監査の実務の大部分を外部の専門家に委託する形態です。監査計画の策定支援から、往査・実査、調書の作成、評価、監査報告書のドラフトまでを外部が中心となって実行します。社内には監査の専任人材がほとんどいない、あるいは部門を新設したばかりで実務を回せる体制がない、といった場合に選択されることが多い形態です。
ただし、アウトソースであっても、内部監査が「経営者・取締役会の指揮のもとで実施される会社自身の活動」であるという本質は変わりません。監査の方針決定、結果の評価、是正の指示といった最終的な意思決定・責任は会社側に残ります。外部に委ねられるのはあくまで実務の遂行であり、内部監査責任者(チーフ・オーディット・エグゼクティブに相当する役割)の機能まで丸ごと外部化できるわけではない点に注意が必要です。
コソース(コソーシング)とは
コソースとは、社内の内部監査担当者と外部の専門家が協働して監査を実施する形態です。社内に一定の人員や知見はあるものの、特定の専門領域(たとえばITシステム、海外拠点、特定の業法対応など)や繁忙期の工数が不足している場合に、その部分を外部が補完します。
コソースの典型的なイメージは「社内担当者が監査の主体となりつつ、外部の専門家が知見・手法・マンパワーを提供してチームを組む」ものです。社内に監査ノウハウを残しながら外部の力を借りられるため、内製化を見据えた段階的な体制づくりとも相性がよい形態といえます。
内製・コソース・アウトソースの位置づけ
整理すると、外部活用の度合いは「内製→コソース→アウトソース」の順に大きくなります。
| 形態 | 監査実務の主体 | 社内に残るノウハウ | 向いている状況 |
|---|---|---|---|
内製 | 社内 | 蓄積されやすい | 十分な人員・専門性が社内にある |
コソース | 社内+外部の協働 | 残しやすい | 一部の専門領域・工数が不足 |
アウトソース | 外部中心 | 残りにくい | 専任人材・実務体制が乏しい |
どの形態が最適かは、社内のリソース・専門性の充足度、内製化を目指すかどうか、対象とするリスクの専門性などによって変わります。内製・コソース・アウトソースの選び方そのものについては「内部監査の体制構築|内製・コソース・アウトソースの違いと選び方」でより詳しく整理しています。
外部活用が向いているケース・向かないケース
外部活用は万能ではありません。自社の状況に合っているかどうかを見極めることが、費用対効果と監査品質の両面で重要です。
外部活用が向いているケース
1. 内部監査部門を新設したばかり、または専任人材がいない
部門を立ち上げたものの、監査の経験者がいない、あるいは兼任の担当者が片手間で対応している、というケースです。監査の進め方そのものを外部から学びながら回せるコソース、あるいは実務全体を委ねるアウトソースが有効です。内部監査の年間の進め方に不安がある場合は、計画から報告までの一連の手順を整理した記事も参考になります(「内部監査の進め方|年間計画から報告・フォローアップまでの手順を解説」)。
2. IPO準備で短期間に体制を整える必要がある
上場審査では、内部監査が独立した立場で機能していること、計画的・継続的に実施されていることが問われます。準備期間は限られているため、社内人材の育成だけでは間に合わないことが多く、外部の知見を活用して審査水準の体制を早期に立ち上げる選択が現実的です。
3. 特定の専門領域に対応できる人材が社内にいない
ITシステムの統制、データ分析を用いた監査、海外子会社のガバナンス、特定業種に固有のリスクなど、専門性の高い領域は社内人材だけでカバーしきれないことがあります。こうした領域だけをコソースで補完するのは、効率的かつ品質を確保しやすい方法です。
4. 客観性・独立性をより確保したい
社内人材だけで監査を行うと、被監査部門との関係や社内のしがらみから、指摘がしにくい場面が生じることがあります。外部の専門家が関与することで、客観的な視点と「言いにくいことを言える」立場を補強できます。
外部活用が向かない・慎重な検討が必要なケース
1. 自社固有の業務知識が監査の中心を占める
外部の専門家は監査の手法やリスク評価には精通していますが、自社特有の業務フローや商慣行、社内事情を一から理解するには時間がかかります。社内の業務知識が監査の本質を占める領域は、社内人材の関与が欠かせません。
2. ノウハウを社内に蓄積したい意向が強い
将来的に内製化を目指す場合、フルアウトソースだと社内にノウハウが残りにくくなります。この場合は、協働しながら学べるコソースを選び、段階的に社内へ移管していく設計が適しています。
3. 機密情報の取り扱いに特別な制約がある
外部に情報を共有すること自体に高いハードルがある場合は、委託範囲や情報管理の枠組みを慎重に設計する必要があります。外部活用を諦める必要はありませんが、秘密保持や情報アクセスの取り決めを丁寧に詰めることが前提となります。
外部活用は「向いているか否か」の二者択一ではなく、「どの業務を、どの程度、どの形態で委ねるか」を設計する問題だと捉えると、判断がしやすくなります。
アウトソース/コソースで得られるメリットと留意点
外部活用には明確なメリットがある一方、押さえておくべき留意点もあります。両面を理解したうえで導入を検討することが大切です。
得られるメリット
1. 専門知識・監査手法の即時活用
外部の専門家は、さまざまな業種・規模の監査を経験しています。リスク評価の枠組み、監査手続、調書の作成方法といった実務ノウハウをすぐに活用でき、社内でゼロから蓄積する時間を短縮できます。
2. リソースの柔軟な調整
内部監査の業務量は、年間を通じて一定ではありません。計画策定期や繁忙期に工数が集中することもあります。外部活用なら、必要なときに必要な分だけリソースを確保でき、社内の固定的な人員増を抑えながら監査を回せます。
3. 客観性・独立性の補強
前述のとおり、外部の関与は監査の客観性を高めます。被監査部門に対して中立的な立場から指摘でき、経営者・監査役等への報告の説得力も増します。
4. 人材育成・内製化の支援(特にコソース)
コソースでは、外部専門家と協働するなかで社内担当者が監査スキルを習得できます。「外部に依存し続ける」のではなく「外部の力を借りて内製力を育てる」アプローチが取れます。
5. データ活用・DXによる効率化の取り込み
近年は、データ分析ツールを活用したデータドリブンな監査が広がっています。たとえばPower BIなどのBIツールと監査の知見を組み合わせ、母集団全体を対象としたモニタリングや異常値の検知を行うことで、サンプリング中心の従来手法より深く・効率的にリスクを捉える取り組みです。こうした手法を社内で一から構築するのは負担が大きいため、外部の知見を活用して導入する意義は大きいといえます(「内部監査DXとは|Power BIを活用したデータドリブン監査の始め方」)。
留意点
1. 監査責任は会社に残る
外部に実務を委ねても、内部監査の最終的な責任は会社(経営者・取締役会)にあります。「外部に任せたから安心」ではなく、結果を評価し、是正につなげる主体は自社であるという認識が欠かせません。
2. 社内へのノウハウ蓄積が進みにくい場合がある
フルアウトソースに偏ると、監査の知見が社内に残りにくくなります。長期的に内製化を視野に入れるなら、コソースを基本としつつ、移管計画を設計しておくとよいでしょう。
3. 情報共有・連携のコスト
外部が自社の業務を理解するには、資料の提供や説明の時間が必要です。委託初期はとくに連携のコストがかかるため、窓口担当者の設定や情報共有の仕組みを整えることが円滑な進行につながります。
4. 費用の考え方
外部活用には当然コストが発生します。費用は依頼する業務範囲、対象拠点や業務の数、求める専門性の水準、関与の頻度・期間などによって変動します。具体的な金額は案件ごとに大きく異なるため、まずは「何を・どこまで委ねるか」を明確にしたうえで見積もりを取ることをおすすめします。費用を構成する項目や変動要因の考え方については「内部監査の費用の考え方|料金を構成する項目と変動要因を解説」で整理しています。
依頼できる業務範囲と役割分担の設計
外部活用を成功させる鍵は、「どの業務を、誰が担うか」を明確に設計することです。ここでは、内部監査の一連のプロセスごとに、外部に依頼しやすい範囲と社内が担うべき役割を整理します。
内部監査プロセスと依頼範囲の目安
| プロセス | 主な内容 | 外部への依頼しやすさ | 社内が担う役割の例 |
|---|---|---|---|
リスク評価・監査計画 | リスクの洗い出し、年間計画の策定 | 支援・助言として依頼可 | 経営方針との整合、最終承認 |
監査手続の設計 | チェックリスト・手続書の作成 | 依頼しやすい | 自社業務の前提共有 |
往査・実査 | 現場でのヒアリング、証憑確認 | 依頼しやすい(コソースで協働も) | 社内調整、現場との橋渡し |
調書作成・評価 | 監査調書の作成、評価のとりまとめ | 依頼しやすい | 評価の妥当性確認 |
監査報告 | 報告書のドラフト作成 | ドラフトまで依頼可 | 経営者・監査役等への報告 |
フォローアップ | 是正状況の確認 | 支援として依頼可 | 是正の指示・実行管理 |
この表はあくまで目安です。実際には、各プロセスのなかでも「設計は外部、判断は社内」「実査は協働」のように、より細かく役割を分けることになります。
役割分担を設計するときのポイント
1. 「判断・責任」は社内に置く
監査の方針、評価結果の最終的な妥当性判断、是正の指示といった意思決定は、会社の責任として社内に残すのが原則です。外部はその判断を支える情報・分析・専門知識を提供する役割と整理します。
2. 委託範囲を文書で明確にする
「どこまでが外部の役割か」が曖昧だと、抜け漏れや認識のズレが生じます。業務範囲、成果物、報告のタイミング、情報の取り扱いなどを取り決めとして明文化しておくことが、円滑な協働の前提になります。
3. 内製化を見据える場合は移管計画を組み込む
将来的に社内で監査を回したいなら、初年度はコソースで協働しつつ、年度を追うごとに社内の関与比率を高める、といった移管の道筋を最初から設計しておくと効果的です。
4. J-SOX対応との役割分担にも注意
上場企業や上場準備企業では、内部監査とJ-SOX(金融商品取引法に基づく内部統制報告制度)対応が並行して動きます。両者は目的も担い手も異なりますが、現場では重複や連携の論点が生じます。外部活用にあたっては、内部監査の範囲とJ-SOX評価の範囲をどう切り分け・連携させるかも併せて設計するとよいでしょう(「内部監査とJ-SOX(内部統制報告制度)の関係|役割分担と連携のポイント」)。なお、J-SOXの最新の要件・運用は制度改正等で変わり得るため、具体的な対応は公式情報や監査法人にご確認ください。
依頼先の選び方(監査知見・業種理解・IPO実績)
外部活用の効果は、依頼先の力量と自社との相性に大きく左右されます。以下の観点で見極めることをおすすめします。
1. 監査の専門知見が確かであるか
内部監査は、リスクベースの考え方、監査手続の設計、調書作成、報告といった専門性を要します。会計・監査・内部統制に精通した専門家が関与するかどうかは、品質を左右する最も基本的な要素です。公認会計士をはじめとする専門人材の関与状況や、内部統制・監査の実務経験を確認しましょう。
2. 自社の業種・業態への理解があるか
業種によって主要なリスクは大きく異なります。自社の業種・業態に対する理解があるか、類似の規模・事業特性の支援経験があるかは、監査の的確さに直結します。汎用的な監査手法だけでなく、業種固有のリスクを踏まえた助言ができる依頼先が望ましいといえます。
3. IPO審査水準の体制構築に対応できるか
上場準備中、あるいは将来の上場を見据えるなら、上場審査で問われる水準を理解している依頼先かどうかが重要です。審査では、内部監査の独立性・計画性・継続性、報告ラインの適切さなどが確認されます。IPO審査の実務に通じた依頼先であれば、審査を見据えた体制づくりまで一貫して相談できます。
4. データ活用・DXの知見があるか
監査の効率化と高度化を目指すなら、データ分析やBIツールを活用したデータドリブンな監査に対応できるかも確認ポイントです。Power BIなどを用いた監査は、工数の削減と継続的なモニタリングの両立に役立ちます。監査の知見とデータ活用の両方を備えた依頼先であれば、単なる人手の補完にとどまらない価値が期待できます(内部監査DX支援サービス)。
5. 内製化・移管まで伴走できるか
「ずっと依頼し続ける」のか「いずれ社内に移管する」のかで、求める依頼先像は変わります。内製化を目指すなら、ノウハウの移転や社内人材の育成まで支援してくれる依頼先を選ぶとよいでしょう。
6. 独立性・客観性が確保できるか
外部活用の目的の一つは客観性の補強です。たとえば会計監査を担う立場と内部監査支援の立場が混在すると独立性に懸念が生じる場合があるため、関与の枠組みが適切かどうかも確認しておくと安心です。
これらの観点を、見積もり段階のヒアリングや提案内容から見極めることで、自社に合った依頼先を選びやすくなります。
RSM汐留パートナーズのコソース/アウトソース支援
RSM汐留パートナーズでは、内部監査のコソース・アウトソース・体制構築支援を、企業の状況に合わせてご提供しています。公認会計士をはじめとする専門家が、IPO審査水準の体制構築まで見据えて伴走する点が特徴です。
- コソース/アウトソース/構築支援を状況に応じて選択:専任人材がいない段階のアウトソースから、社内と協働しながら内製化を目指すコソース、体制そのものの構築支援まで、自社のフェーズに合わせた形態をご提案します。
- IPO審査水準を見据えた体制構築:上場準備のなかで求められる独立性・計画性・継続性を踏まえ、審査に耐える内部監査体制づくりを支援します。
- Power BI × 監査知見によるデータドリブン監査:データ分析と監査の専門知識を組み合わせ、工数削減とモニタリングの高度化を両立する内部監査DXにも対応します。
- J-SOX・内部統制との連携:内部統制の整備・評価・改善の知見を活かし、内部監査とJ-SOX対応の役割分担・連携まで含めて整理します。
RSM Internationalのネットワークに属するグローバルな知見と、国内実務に根ざした支援を組み合わせ、企業のガバナンス強化を後押しします。
まとめ
内部監査のアウトソース・コソースは、「リソースや専門性が足りない」という課題を外部の力で補い、監査の品質と効率を両立させるための有効な選択肢です。要点を整理します。
- アウトソースは実務の大部分を外部に委ね、コソースは社内と外部が協働する形態。最終的な監査責任はいずれも会社に残る。
- 外部活用が向くのは、部門新設直後・専任人材不足・IPO準備・専門領域の補完・客観性強化などのケース。自社固有の業務知識が中心の領域や、強く内製化を志向する場合は設計に工夫が要る。
- メリットは専門知識の即時活用・リソースの柔軟化・客観性の補強・人材育成・DXの取り込み。留意点は責任の所在・ノウハウ蓄積・連携コスト・費用の考え方。
- 成功の鍵は「判断・責任は社内、実務支援は外部」という役割分担の明確な設計。
- 依頼先は、監査知見・業種理解・IPO実績・DX対応・内製化支援・独立性の観点で見極める。
自社にとって最適な外部活用の形は、現状のリソース・専門性・将来の方向性によって変わります。「どの業務を、どの程度、どの形態で委ねるか」を整理することから始めてみてください。
内部監査のコソース・アウトソース・体制構築について、自社に合った形をご検討中の方は、ぜひRSM汐留パートナーズにご相談ください。現状のリソースや課題を伺ったうえで、最適な外部活用の設計をご提案します(内部監査コンサルティング)。データ活用による監査の効率化・高度化にご関心がある場合は、内部監査DXのご案内もあわせてご覧ください(内部監査DX支援サービス)。
