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四半期開示の「一本化」と制度変更の実務的留意点

四半期開示の「一本化」と制度変更の実務的留意点

会計・税務
2024年8月1日

2024年4月以降に始まる事業年度から、金融商品取引法(以下、金商法)に基づく四半期報告制度が廃止されました。上場企業などでは、監査法人による四半期レビューを経て四半期報告書を公表する従来の対応から、新制度への移行が進み、多くの企業で初年度の実務対応を終えています。本コラムでは、開示制度の定着を踏まえた情報発信の在り方を再確認していきましょう。

企業による情報開示は多岐にわたりますが、基本的には以下の4つの類型に分けることができます。

この区分は、会社債権者や株主といった利害関係者の保護を目的とするものです。すべての会社が対象となり、計算書類などが典型的な開示資料にあたります。本来、会社債権者と株主の間には相反する利害が存在しますが、こうした計算書類等の情報開示を通じて、その調整が図られます。

この制度は、有価証券の流通を適正かつ円滑に進め、健全で活発な資本市場を維持・発展させることを目的としています。有価証券報告書や四半期報告書が代表的な開示書類です。

金商法による開示では、正確性と網羅性が特に重視されており、他の制度に基づく開示と比べて情報量が多く、内容も詳細です。その分、企業側の開示作業は大きな負担となる傾向があります。

上場企業が所属する証券取引所の規則に基づく開示は、投資者を保護することを目的としています。決算短信や業績予想の修正など、投資判断に影響を及ぼす重要な情報を投資家へ迅速かつ適切に伝えることが求められます。適時開示は、「決定事実(例:新株発行)」「発生事実(例:訴訟提起)」「決算情報」の3区分に整理されています 。

任意開示は、特定の法律や規制に基づかず、企業が自主的に行う情報開示を指します。代表的な例としては、アニュアルレポートなどが挙げられます。企業によっては、PRの一環として、財務データなどの定量的な情報に加え、経営方針や戦略といった定性的な情報も積極的に発信するケースが増えています。これまでは、有価証券報告書が企業情報を把握するための主要な情報源とされてきましたが、近年では任意開示の重要性が高まり、企業・投資家双方の注目が集まっています。

今回の改正の対象となるのは、(2)の金融商品取引法に基づく開示です。第1・第3四半期については、原則として金商法による開示が廃止され、(3)の取引所規則に基づく四半期決算短信に一本化されることになりました。次の項目で、この変更点について詳しく見ていきます。

金融商品取引法に基づく開示のうち、四半期報告書は情報の迅速な提供を重視しており、決算日から45日以内に提出することが義務付けられていました。これに対し、取引所規則に基づく四半期決算短信も同様に45日以内の開示が求められていますが、可能であれば30日以内の公表が望ましいとされています。そのため、企業は短い期間の中で二重の開示対応を行う必要がありました。

四半期決算短信は注記の量こそ少ないものの、開示内容に類似している情報も多いとの指摘が以前よりありました。こうした状況を踏まえ、両者の開示を統合する方針が打ち出されています。ただし、この「一本化」の対象となるのは第1四半期および第3四半期に限られるため、この点には注意が必要です。

制度改正によって四半期報告書の提出義務が廃止され、記載すべき注記項目は削減されました。その代わりに、四半期決算短信において一部開示項目が拡大されるなど、情報提供の内容が補強されています。

改正前改正後
  • 継続企業の前提に関する注記
  • 株主資本の金額に著しい変動があった場合の注記
  • 会計方針の変更、会計上の見積りの変更、修正再表示に関する注記
  • 四半期特有の会計処理に関する注記
  • 継続企業の前提に関する注記
  • 株主資本の金額に著しい変動があった場合の注記
  • 会計方針の変更、会計上の見積りの変更、修正再表示に関する注記
  • 四半期特有の会計処理に関する注記
  • セグメント情報等の注記
  • キャッシュ・フローに関する注記

「セグメント情報等の注記」については、改正前から多くの企業がすでに決算短信上で開示していたこともあり、制度変更による影響は限定的と考えられます。一方、「キャッシュ・フローに関する注記」は、キャッシュ・フロー計算書を併せて開示する場合には記載義務がなくなります。ただし、第1・第3四半期については、そもそもキャッシュ・フロー計算書を作成していない企業が大半と想定されます。そのため、四半期ごとにキャッシュ・フロー計算書を新たに作成することが負担となる場合は、注記を追加して対応することになります。

従来の四半期報告書制度では、会計監査人によるレビューが必須とされていましたが、制度改正によりこのレビューは任意対応へと変更されました。ただし、以下に該当する企業については、四半期決算短信に対するレビューが引き続き義務付けられます。

  • 直近の有価証券報告書・半期報告書・四半期決算短信(レビューを行う場合)において、無限定適正意見(結論)以外の場合
  • 直近の有価証券報告書において、内部統制監査報告書における無限定適正意見以外の場合
  • 直近の内部統制報告書において、内部統制に開示すべき重要な不備がある場合
  • 直近の有価証券報告書・半期報告書が当初の提出期限内に提出されない場合
  • 当期の半期報告書の訂正を行う場合であって、訂正後の財務諸表に対してレビュー報告書が添付される場合

任意でレビューを依頼する場合、監査法人の作業完了を待ってしまうと、決算短信の持つ速報性が損なわれる可能性があります。そこで、レビューが終わる前にまず四半期決算短信を公表し、後日レビュー報告書を添付した修正版を開示するという、二段階方式が認められています。この方法を取る際は、監査法人との綿密なスケジュール調整が欠かせません。

6.おわりに

決算に関する実務は限られた期間の中で進行するため、対応に苦労している企業も少なくありません。今回の制度改正は第1・第3四半期に限定されたものではありますが、これにより業務負担を軽減できる企業も多いと考えられます。

一方で、実務負担の軽減を重視するあまり、開示内容を安易に省略してしまうと、企業情報の開示水準が全体的に低下し、日本の株式市場の活力が損なわれる可能性があるとの懸念も指摘されています。こうした事態を避けるため、任意開示においても情報提供の質を維持する姿勢が重要となります。

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