商業登記関係 取締役2名の特例有限会社において、取締役1名が死亡した場合の登記手続き
取締役の死亡と登記
特例有限会社においては、取締役の氏名及び住所が登記事項とされています。
また、代表取締役を置いたときは代表取締役の氏名も登記事項です。
≫特例有限会社は代表者でも「取締役」?代表者なら「代表取締役」ではないのですか?
特例有限会社の取締役が死亡したときは、会社との委任関係が終了するため(民法第653条)、取締役を退任することになりますので、取締役が死亡したときは死亡による退任登記を申請する必要が生じます。
取締役の員数に関する定款の定め
法律上、特例有限会社の取締役は1名いれば問題ありません。
一方で、定款に「当会社は取締役を2名以上置く」と定めている特例有限会社は、当該定款の定めを変更しない限り、取締役の数を2名以上にしなければ定款違反となってしまいます。
そのため、そのような定款の定めのある特例有限会社において、取締役2名のうち1名が死亡により退任したときは、取締役1名を新たに選任するか、当該定款の定めを変更する必要があるでしょう。
なお、本ページでは定款に取締役の人数についての定めがない、あるいは取締役を1名以上置くと定めている特例有限会社を前提としています。
取締役の死亡を証する書面
取締役の死亡による退任登記を申請するには、取締役が死亡したことを証する書面を添付します。
取締役が死亡したことを証する書面の一例は、次のとおりです。
- 死亡届
- 死亡の記載のある戸籍謄本
- 医師の死亡診断書
- 法定相続情報一覧図の写し
代表取締役を定めていないケース
取締役AB(代表取締役は無し)がいる特例有限会社において、取締役Aが死亡したケースはどうでしょうか。
このケースでは、単に取締役Aの死亡による退任登記を申請します。
Aが印鑑登録をしている場合は、印鑑登録者をBに変更するため、印鑑届書も登記申請と同時に法務局へ提出します。
代表取締役を定めていて、代表取締役が死亡したケース
取締役XY、代表取締役Xがいる特例有限会社において、代表取締役Xが死亡したケースはどうでしょうか。
このケースでは、取締役Xの死亡による退任登記、代表取締役Xの退任登記を申請します。加えて、Yを印鑑提出者とするための印鑑届書も提出することになるでしょう。
取締役を死亡により退任することにより、当然に代表取締役も退任することになるからです。
ところで、特例有限会社においては、代表取締役の登記は、取締役2名以上いるときで、かつ代表権を有しない取締役を置いた場合にのみできます。
そのため、Yの代表取締役に関する登記は行いません。
代表取締役を定めていて、取締役が死亡したケース
上記の取締役XY、代表取締役Xがいる特例有限会社において、取締役Yが死亡したケースはどうでしょうか。
このケースでは、まず取締役Yの死亡による退任登記を申請します。
そして同じ申請において、代表取締役Xにつき代表取締役Xの氏名の登記の抹消を申請する必要があります。
特例有限会社においては、代表取締役の登記は、取締役2名以上いるときで、かつ代表権を有しない取締役を置いた場合にのみできる登記とされているからです。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。