商業登記関係 一般社団法人が決算公告を行う方法
一般社団法人と決算公告
一般社団法人は、定時社員総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大規模一般社団法人にあっては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければなりません(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下、「法人法」といいます)第128条1項)。
決算公告を行う期限につき、「定時社員総会の終結後遅滞なく」とありますので、定時社員総会後1週間以内等といった具体的な期限が設けられているわけではありません。
例えば、公告方法が官報である一般社団法人においては、定時社員総会後に公告の申込みをしたとしても、実際に掲載されるまでは2-3週間程度かかりますがそれでも問題はないということになります。
一般社団法人の公告方法
一般社団法人の決算公告は、定款で定められた公告方法によって行います。
一般社団法人は公告方法として、次に掲げる方法のいずれかを定めることができます(法人法第331条1項)。
- 官報に掲載する方法
- 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法
- 電子公告
- 主たる事務所の公衆の見やすい場所に掲示する方法
公告方法は登記事項ですので、公告方法を変更したときは必ずその旨の登記申請をしておきましょう。
貸借対照表の全文?要旨?
決算公告は、定款で定められた公告方法に従い、その媒体に原則として貸借対照表の全文を掲載する方法によって行います。
一方で、公告方法が「官報に掲載する方法」又は「時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法」である一般社団法人は、貸借対照表の要旨を公告することで足ります(法人法第128条2項)。
なお、公告方法が「官報に掲載する方法」又は「時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法」である一般社団法人は、定時社員総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(の全文)を、定時社員総会の終結の日後5年を経過する日までの間、継続して電磁的方法により不特定多数の者が提供を受けることができる状態に置く措置をとることができます(法人法第128条3項)。
公告の掲載期間
公告方法が「官報に掲載する方法」又は「時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法」である一般社団法人は、官報や日刊新聞紙に貸借対照表の要旨を掲載すれば終わりであり、特に掲載期間というものはありません。
公告方法が「電子公告」である一般社団法人は、定時社員総会の終結の日後5年を経過する日までの間、継続して電子公告による公告をしなければなりません(法人法第332条1号)。
公告方法が「主たる事務所の公衆の見やすい場所に掲示する方法」である一般社団法人は、当該公告の開始後一年を経過する日までの間、継続してしなければなりません(法人法施行規則第88条2項1号)。
(損益計算書無し) | ~ 111,497円 | ~ 123,169円 (日刊工業新聞) |
損益計算書も掲載する法人
貸借対照表だけで損益計算書も公告しなければならない一般社団法人もあります。
それは、大規模一般社団法人です。
大規模一般社団法人とは、最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上である一般社団法人のことをいいます(法人法第2条2号)。
損益計算書の全文を掲載するのか、要旨を掲載するかについては、貸借対照表のそれと同様です。
官報にて決算公告を行う
定時社員総会後は、決算公告を掲載する手続きを進めます。
ここでは公告方法が「官報に掲載する方法」である一般社団法人について見ていきます。
官報に掲載を依頼するときは、官報販売所へ申し込むことが一般的です。
当事務所では、官報公告が必要なときは≫株式会社兵庫県官報販売所にいつも依頼をしています。
一般社団法人の決算公告のページはこちらです。
≫一般社団法人・一般財団法人、公益社団法人・公益財団法人の決算公告(官報)【株式会社兵庫県官報販売所】
決算公告の申込みは (1)WEB申込 から行うと分かりやすいかもしれません。
一般社団法人でも、大規模一般社団法人かそうでないか、非営利型一般社団法人かそうでないかによって、決算公告に掲載する内容が異なります。
決算公告の掲載を申し込む一般社団法人のご事情に応じて、官報販売所へ決算公告の掲載をお申込みください。
決算公告を掲載する内容を間違えてしまうか不安だ、決算公告の申込みをしている時間がないという方は、当事務所へこちらの≫お問い合わせページからコンタクトください。
日刊新聞紙にて決算公告を行う
公告方法が「時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法」である一般社団法人は、ほとんどありません。
掲載の申込みをする方法は、各新聞社へお問い合わせください。
なお、公告方法が日刊工業新聞である一般社団法人は、こちらのページの「詳細・お問い合わせ」から申し込むことになります。
WEBにて決算公告を行う
公告方法が「電子公告」である一般社団法人は、登記簿に記載されているURLの先に貸借対照表を(大規模一般社団法人は損益計算書も)掲載します。
一般的には、当該URLをクリックするとすぐに貸借対照表が表示されるよう設定するわけではありません。
当該URLをクリックすると法人HPのトップページに飛び、何回かクリックするだけで貸借対照表の掲載ページにたどり着けるようになっているケースが多いでしょうか。
あるいは、当該URLをクリックすると法人が掲載している公告一覧が表示され、決算公告まで1-2回クリックするだけで貸借対照表の掲載ページにたどり着けるようにしている法人もあります。
登記簿に記載されているURLにアクセスした人が、貸借対照表の掲載されているページまでたどり着けるようにHPを設計しておかなければなりません。
主たる事務所の公衆の見やすい場所に掲示して決算公告を行う
公告方法が「主たる事務所の公衆の見やすい場所に掲示する方法」である一般社団法人はどうでしょうか。
まず、貸借対照表は主たる事務所に掲示しますので、従たる事務所に掲示しても決算公告をしたことにはなりません。
次に、公衆の見やすい場所に掲示しなければなりませんので、公衆が見ることができない場所に掲示するのはNGです
各事務所の形や状況によって、適切な場所に貸借対照表を掲示ください。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。