商業登記関係 一般社団法人か特定非営利活動法人(NPO法人)か
非営利法人
法人には大きく分けて「営利法人」と「非営利法人」の2つがあります。この2つの法人形態の違いを理解するには、「営利」という言葉の意味を正しく理解する必要があります。
「営利」とは、構成員(株式会社の株主、合同会社の社員を指します)に対して、当該法人の利益を分配することをいいます。業績のいい(株式)会社は毎年配当を出していますが、この配当(剰余金の分配)を行うことができるのが営利法人です。
このことから「非営利」法人とは、利益の分配をすることができない法人をいいます。よくある誤解としましては、非営利法人は売上を上げてはいけない、事業を行う際に対価を得てはいけない、収益事業を行ってはいけないというものです。
しかし、非営利法人とは、前述のとおり利益を分配しない法人という意味ですので、売上を上げるのはもちろん、対価を得て事業を行うことも、収益事業を行うことも可能です(ただし、法人形態によっては収益事業を行う比率が定められています)。
一般社団法人と特定非営利活動法人(以下NPO法人といいます)
営利法人のうち、≫株式会社と合同会社の違いはこちら。
よくいただくご質問として、ボランティア活動団体を法人化したい、資格ビジネスを立ち上げたい、同窓会を法人化したい、特定の業種の集まりである任意団体を法人化したい、などの理由で非営利法人のうち、一般社団法人とNPO法人のどちらを選択した方がいいのかというご質問があります。
一般社団法人とNPO法人の違い
一般社団法人 | 特定非営利活動法人 (NPO法人) |
|
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設立時最低必要人数 | 2名 | 10名 |
最低必要な役員構成 | 理事1名のみでもOK ※非営利型一般社団法人は、 理事3名、監事1名 | 理事3名、監事1名 ※親族制限あり |
最低必要社員数 | 1名 ※設立時は2名必要ですが、設立後に社員が1名になっても解散しない。 | 10名 ※設立後も常に10名必要です。 |
設立費用 | 約11.2万円 ※登録免許税6万円、公証人費用5.12万円)+専門家報酬 | 専門家報酬のみ ※一般的には専門家報酬が一般社団法人より高く、トータルの費用も一般社団法人より高くなることがあります。 |
設立までの期間 | 約1ヶ月程度 (最短即日可能) | 約5~6ヶ月程度 (縦覧期間2ヶ月、書類審査2ヶ月) |
課税 | 営利型一般社団法人は株式会社や合同会社と同じ「普通法人」扱い 非営利型一般社団法人は収益事業にのみ課税される「公益法人」扱い | 収益事業にのみ課税 |
イメージ | 株式会社などの営利法人に比べると公益性のイメージが強い。 | 公益性、慈善団体、収益事業を行わないというイメージが強い。 |
法人名義での契約 | 可能 | 可能 |
会員の入会制限 | 可能 | 困難 |
定款変更 | 社員総会決議 | 社員総会決議 + 変更内容によっては所轄庁の認証 ※この認証は4ヶ月程度かかります。 |
事業内容 | 自由 ※非営利型一般社団法人除く | 全体の支出額の50%を上回るような規模で収益活動不可 |
所轄庁への報告 | なし ※公益法人は除く | 事業年度終了後3ヶ月以内に事業報告書類を管轄所轄庁への提出する必要があります。 ※事業報告書・収支計算書・貸借対照表・財産目録・役員名簿・正会員名簿を提出 |
一般社団法人に比べてNPO法人は手続きや制約が多い
上記比較表のとおり、一般社団法人は設立が容易であるのに比べ、NPO法人は設立までに約半年かかってしまいますし、最低10名集めなければなりません。
また毎年事業年度末の決算後に収支計算書や貸借対照表などを所轄庁に提出する必要があり、これらの書類は誰でも見ることが可能です。
法人の重要事項を決める社員も、一般社団法人は入会制限を設けることが容易であるのに対し、NPO法人は入会制限を設けることは困難と言われています。つまり、NPO法人の理念に賛同している人なら基本的には誰でも入会でき、その新規入会者は社員総会において議決権1票を持つことになります。
NPO法人のメリット
まずは何といっても「特定非営利活動法人」や「NPO法人」という名称を使用することができる点、NPO法人の情報公開制度による透明性の高さから、公益性の高さをアピールすることが可能です。
また、一般社団法人に比べて税制面で優遇されていることは間違いありません(税金については税理士さんにご確認ください)。
なお、NPO法人と同様に、税制的に優遇される「≫非営利型一般社団法人」というものがあります。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。