商業登記関係 特許業務法人(弁理士法人)の設立登記手続き
特許業務法人の設立
弁理士は、弁理士法第4条1項の業務を組織的に行うことを目的として、特許業務法人を設立することができます(弁理士法第37条)。
特許業務法人は、弁理士法第4条1項の業務だけでなく、定款で定めることにより、第4条条2項及び3項の業務の全部又は一部を行うことができます(弁理士法第40条)。
弁護士、社会保険労務士、司法書士は2020年11月24日現在、1人法人(資格者1名だけで設立する法人)が可能となっていますが、特許業務法人は2名以上の弁理士が共同して設立する必要があります。
また、社員(従業員ではありません)が1人になり、1人になった日から引き続き6ヶ月社員が2人以上にならなかった場合は、その6ヶ月を経過した時に解散してしまいますのでご注意ください(弁理士法第52条2項)。
特許業務法人の設立の流れ
特許業務法人は、その主たる事務所の所在地において設立の登記をすることによって成立します(弁理士法第44条)。
株式会社や一般社団法人と同様に、作成した定款は公証人の認証を受けなければ、その効力を生じません(弁理士法第43条3項、会社法第30条1項)。
特許業務法人の一般的な設立の流れは次のとおりです。
- 書類等の準備
- 定款の作成
- 公証人による定款認証
- 出資の履行
- 法務局へ登記申請
- 成立の届出
準備するもの
まずは、特許業務法人の設立登記のために必要となるものを準備します。
- 法人の実印
- 社員の実印
- 社員の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内のもの)
- 社員の弁理士資格証明書
司法書士に設立手続きを依頼する場合は、次の書類も求められるものと思われます。
- 出資金の入金履歴のある社員の通帳
- 社員の運転免許証の写し
定款の作成
定款に最低限記載する事項は次のとおりです(弁理士法第43条2項)。
二 名称
三 事務所の所在地
四 社員の氏名及び住所
五 社員の出資に関する事項
六 業務の執行に関する事項
定款によって社員のうち特に特許業務法人を代表すべき社員を定めることができるため(弁理士法第47条の2)、特定の社員を代表社員とする特許業務法人が多いでしょうか。
また、総社員の同意によって定款の変更をすることができるところ(弁理士法第47条1項)、代表社員のみの同意によって定款を変更できるよう、定款にその旨の定めを置くこともあります。
公証人による定款認証
作成した定款を、主たる事務所の所在地と同じ都道府県内にある公証役場にて公証人に認証してもらいます。
費用は定款のページ数によりますが、およそ52,000円前後となるのではないでしょうか。
実際に公証役場に行き認証手続きをすることがほとんどかと思いますが、必要書類の郵送+テレビ会議システムによっても認証を行うことができます。
法人設立後の経済産業大臣への届出にも定款を添付しますので、少なくとも定款の謄本は2部以上取得しておきます。
出資の履行
法人を設立するまでに、定款の内容に従い、社員が出資の履行を行います。
金銭出資の場合、社員のどちらかの個人口座に振り込む(入金する)方法によって出資を履行します。
なお、株式会社と異なり、出資の履行が行われたことを証する書面は設立の登記申請の添付書類として求められていません。
法務局へ登記申請
主たる事務所の所在地を管轄する法務局に、設立の登記申請をします。
登記申請日が法人の設立日となり、登記申請から約1-2週間で登記が完了し、登記簿謄本を取得できるようになります。
株式会社と異なり、特許業務法人の設立登記には登録免許税はかかりません。
成立の届出
特許業務法人は、成立したときは、成立の日から2週間以内に、登記事項証明書及び定款を添えて、その旨を経済産業大臣に届け出なければなりません(弁理士法第45条)。
この届出の方法や添付書類につきましては、弁理士会にご確認ください。
この他に、法人設立後は税務署等への法人設立届出等も行っておいた方がいいでしょう。
業務をアウトソースする
弁理士の先生の本業は弁理士業務であり、ご自身はご自身の業務に専念いただきたいというのが当事務所の想いです。
公証人による定款認証も、書類の郵送+テレビ会議システムによって行うことができるため、福岡県や北海道を主たる事務所とする特許業務法人の定款認証も東京に居ながら行うことが可能です。
また、設立登記の申請はオンライン申請で行うため、全国の法務局へ登記申請を行うことができます。
当事務所は東京にございますが、特許業務法人の設立をご検討されている方は、事務所の所在地に関わらず、お気軽にお問い合わせください。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。