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代表司法書士 石川宗徳の 所長ブログ&コラム

株式会社を設立するときに、1株当たりの金額をいくらにするのが良いか

株式会社の設立と発行済株式数

株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立します(会社法第49条)。

設立手続きの過程において、発起人全員の同意によって次の事項を定めます(会社法第32条1項)。

  1. 発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数
  2. 上記1の設立時発行株式と引換えに払い込む金銭の額
  3. 成立後の株式会社の資本金及び資本準備金の額に関する事項

1株当たりの金額

上記のとおり、会社を設立するときは、1株当たりの金額をいくらにするか発起人全員で決定しなければなりません。

1株当たりの金額をいくらにすれば良いのか、あるいは1株当たりの金額をいくらにまで設定することができるのかは、会社法には特に定めがありません。

例えば、資本金が1000万円(出資者Aのみ)の株式会社を設立するときに次のいずれでも可能です。

1株当たりの金額
発行する株式数
ケース①
1000万円
1株
ケース②
5万円
200株
ケース③
1万円
1000株
ケース④
1円
1000万株
ケース⑤
333株当たり1000万円
333株

よく見かける1株当たりの金額

よく見かける1株当たりの金額は、1万円又は5万円です(上記ケース②又はケース③)。

個人事業主から法人成りするケースや、仲間数名で起業してエクイティによる資金調達を考えないケース、資産管理会社としての法人であれば、これらの金額で問題ないのではないでしょうか。

当社で会社設立をサポートするときも、1株当たりの金額を1万円又は5万円とすることが多いです。

1株当たりの金額を大きくするデメリット

上記ケース①のように1株当たりの金額を大きくすると、後日、第三者に向けて募集株式の発行をするときに、出資がしにくいという状況が生じてしまうことがあります。

例えば、1株○○○○万円以上の募集となると、小さい金額での出資が難しくなってしまうかもしれません。

設立後は1株当たりの金額が上下し得ますし、バリュエーションを考慮して調達する場合もあり一概には言えませんが、出資を受けることを検討している場合は1株当たりの金額を小さくしておくと、1株当たりの金額を高くしておくことと比較して色々と融通が利きます。

ベンチャー企業は注意

IPOを目指すベンチャー企業においては、エクイティによる資金調達を行うことが少なくありません。

外部の投資家に株式を交付するとき、1株当たりの金額を創業メンバーと同じにしてしまっては、投資家に議決権の大半を渡すことになり、創業メンバーの士気が下がってしまいます。

そこで、バリュエーション評価をして1株当たりの金額を決定することがあり、設立時の1株当たりの金額よりも高い金額で調達をします。

設立時の1株当たりの金額を10万円等と高額にしてしまうと、エクイティによる資金調達をするときに、株式分割や発行可能株式総数の変更を行う必要となる可能性が生じてしまいます。

株式分割で1株当たりの価値を薄める

もし設立時に1株当たりの金額を大きく設定してしまい、(創業メンバーが保有する株式全体の価値は下げずに)創業メンバーの1株当たりの金額を下げたいとなった場合、その方法としては株式分割があります。

募集株式の発行をするときに、現在の1株当たりの金額である10万円を100円に変更した上で、募集事項たる「1株と引換えに払い込む金銭の額」を1万円として調達したいようなケースです。

1株を1000株に分割することにより、分割前1株=10万円=分割後1000株となり、分割後の1株当たりの金額を100円とすることが可能です。

出資者によって異なる1株当たりの金額を設定する

実務では見かけることは多くありませんが、設立時に、発起人ごとに異なる1株当たりの金額を設定することも可能とされています。

A:1株1万円、500万円出資で500株引受け
B:1株5万円、500万円出資で100株引受け

ただし、法務的には可能であっても、(金額が大きくなるときは特に)税務的に問題がないか税理士に確認をしながら進めることをお勧めします。


この記事の著者

司法書士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

RSM汐留パートナーズ司法書士法人では、
商業登記不動産登記相続手続き遺言成年後見など、
様々なサポートを行っております。


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