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代表司法書士 石川宗徳の 所長ブログ&コラム

株式の譲渡制限規定の設定と株券廃止を同時にするときの公告及び通知

公開会社から非公開会社へ

現在、新たに設立する会社のほとんどが非公開会社(全ての株式につき、株式の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けている株式会社)です。

昭和41年以前に設立され現在も存続する株式会社には、今も公開会社である会社も少なくなく、取締役の員数を3名未満にしたい、監査役を廃止したい、取締役会であるメリットがない等を理由に、公開会社から非公開会社に移行したいというニーズが一定数あります。

公開会社から非公開会社に移行する手続きとは、定款に株式の譲渡制限規定を設ける手続きのことを指しています。

その手続きについては、こちらの記事をご確認ください。

≫公開会社が株式の全部に譲渡制限を設けて非公開会社になる手続きと登記

株券廃止の手続き

会社法が施行された2006年より前は、株券発行会社がデフォルトでした。

そのため、2006年より前に設立された株式会社においては、株券発行会社のままであることがあり、管理コストや株券紛失のリスクを考慮し、株券を廃止したいというニーズが一定数あります。

株券を廃止する手続きについては、こちらの記事をご確認ください。

≫株式会社が株券を廃止するときの手続きと登記

譲渡制限規定の設定と株券廃止を同時に行う

株券発行会社である公開会社が、非公開会社になると同時に株券を廃止することがあります。

株式の全てに譲渡制限を続ける方法も、株券を廃止する方法も、どちらも株主総会の決議(特殊決議・特別決議)によって定款変更を行う方法によります。

ここで株券を実際に発行している会社が上記行為を行う場合、株券に関する公告及び各株主への通知について検討が必要となります。

株券に関する公告

株券発行会社が株式に譲渡制限を設けるときは会社法第219条1項により、株券発行会社が株券を廃止するときは会社法第218条1項により、公告及び各株主への通知(以下、単に「通知」といいます)が求められます。

譲渡制限
株券廃止
公告及び通知期間
1ヶ月前まで
2週間前まで
根拠条文
会社法第219条1項
会社法第218条1項

以下、株券を実際に発行している会社が、株式の譲渡制限規定の設定と株券廃止を同時に行う場合の公告及び通知について記載しています。

どちらの公告及び通知も行う

株式の譲渡制限規定の設定と株券廃止の効力発生を(時間的に)同時に行うのであれば、どちらの公告及び通知も行う必要があるでしょう。

この方法が王道といえば王道ですが、(公告方法が官報の場合)官報公告費用が以下の方法よりもかかります。

また、株式の譲渡制限規定の設定に関する公告及び通知は、効力発生の1ヶ月前に行わなければならず(会社法第219条1項)、以下の方法よりも期間がかかります。

株券廃止に関する公告及び通知のみ行う

株式の譲渡制限規定の設定の効力発生を、株券廃止の効力が発生することを条件として株主総会の決議を得た場合はどうでしょうか。

この場合、株式の譲渡制限規定の設定の効力が発生する時は株券不発行会社になっているため、会社法第219条1項の公告及び通知は不要です。

そのため公告及び通知に関しては、株券廃止に関する公告及び通知(会社法第218条1項)だけで済ませることが可能です。

この場合も株主総会を分ける必要はなく、同じ株主総会で定款変更に関する決議して問題ありません(議案を分けるか分けないかは自由です)。

このケースのスケジュールの一例は次のとおりです(取締役会設置、公告方法は官報)。

日程
株式会社の手続き

6月21日
取締役会の決議(定款変更の承認、株主総会の招集決定)

官報へ株券を廃止する旨の公告の申込み

6月22日
株主総会の招集通知の発送

※株主への通知(会社法第218条1項の通知)も併せる
6月30日
定款変更につき通知公告が掲載(官報)

7月9日
定款変更に関する株主総会の決議
①株券廃止(2021年7月16日付効力発生)
②株式の譲渡制限規定の設定(株券廃止が効力発生条件)

7月16日
株券廃止に関する定款変更の効力発生

株式の譲渡制限規定の設定に関する定款変更の効力発生
7月16日以降
登記申請(2週間以内)

株券不所持の申出を行ってもらう

定款上、株券発行会社になっているけれども、株主全員が株券不所持の申出(会社法第217条1項)を行っている会社であればどうでしょうか。

この場合、公告及び通知に関しては、公告は不要となり株主への通知だけで足りることになります(会社法第218条3項)。

なお、この通知は、公告をもってこれに代えることが可能です(会社法第218条4項)。

株券不所持の申出を組み合わせることにより、次の手続きで完結させることが可能となります。

このケースのスケジュールの一例は次のとおりです(取締役会設置、公告方法は官報)。

日程
株式会社の手続き

6月21日
取締役会の決議(定款変更の承認、株主総会の招集決定)

株券不所持の申出をしてもらう。

6月22日
株主総会の招集通知の発送

※株主への通知(会社法第218条1項の通知)も併せる

7月9日
定款変更に関する株主総会の決議
①株券廃止(2021年7月9日付効力発生)
②株式の譲渡制限規定の設定(株券廃止が効力発生条件)

7月9日
株券廃止に関する定款変更の効力発生

株式の譲渡制限規定の設定に関する定款変更の効力発生
7月9日以降
登記申請(2週間以内)


この記事の著者

司法書士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

RSM汐留パートナーズ司法書士法人では、
商業登記不動産登記相続手続き遺言成年後見など、
様々なサポートを行っております。


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