商業登記関係 非公開会社が「電子提供措置をとる旨」を定款に定める・定めている場合の注意点
改正会社法と電子提供措置
令和元年改正会社法の一部が2022年9月1日に施行され、電子提供制度がスタートします。
電子提供制度とは、
株主総会資料を自社のホームページ等のウェブサイトに掲載し、株主に対し、そのウェブサイトのアドレス等を書面により通知することによって、株主総会資料を提供することができる制度
とされています。
この制度は、基本的には上場会社が対象です。定款に定めることにより上場会社以外の株式会社又は特例有限会社においても導入することが可能ですが、株主が少数の会社においては導入は不要かもしれません。
電子提供措置をとる旨の定款に定める
上場会社においては、2022年9月1日付けで電子提供措置をとる旨の定款の定めを設ける定款の変更決議をしたものとみなされます。
上場会社以外の会社が電子提供制度を導入するには、設立時に「電子提供措置をとる旨」を定款に定めるか、定款を変更して「電子提供措置をとる旨」を新たに定める方法によって行います。
≫株主総会資料の電子提供制度の概要と「電子提供措置をとる旨」の登記手続き
電子提供制度を採用することで変わること
非公開会社において電子提供措置をとる旨を定款に定める・定めている会社は、株主総会の手続きにおいて次の3点に注意が必要です。
- 電子提供措置をとる旨を登記する。
- 原則として、電子提供措置を行う。
- 招集通知を2週間前に発する。
1. 電子提供措置をとる旨を登記する
電子提供措置をとる旨は登記事項とされています。
そのため、定款を変更して電子提供措置をとる旨の定めを置いたときは、効力発生日から2週間以内に当該変更登記を申請する必要があります。
2022年9月1日以降、設立時の定款にその定めを置くときは設立の登記申請時に電子提供措置をとる旨も登記すべき事項に記載します。
2. 原則として、電子提供措置を行う
電子提供制度を採用している会社は、その対象となっている事項につき、原則として電子提供措置を講じる必要があります。なお、議決権行使書面については、書面で提供することも可能です(その場合、当該事項は電子提供措置による提供が不要)。
電子提供措置は株主総会の「3週間前又は招集通知発出の早い方」から開始します(改正会社法第325条の3第1項)。
招集通知を株主総会の3週間より前に発することは少ないため、多くのケースでは株主総会の3週間前から電子提供措置をとることになるでしょうか。
また、電子提供措置は株主総会の開催後、3か月が経過するまで継続します。
3. 招集通知を2週間前までに発する
非公開会社は株主総会の1週間前(取締役会非設置会社が定款で定めた場合はそれよりも短い期間)までに招集通知を発する必要がありますが、電子提供制度を採用している会社は、2週間前までに招集通知を発しなければなりません(改正会社法第325条の4第1項)。
多くの非公開会社が株主総会の招集期間を1週間、5日、3日前まで等と定款で定めているかと思いますが、電子提供制度を採用すると株主総会の招集通知を発する期間が2週間前までとなることは理解しておく必要があります。
株主が1-3名程度と少数である会社においては、電子提供制度は採用するメリットが少ない制度と言えるかもしれません。
自社の定款にその記載があるとは知らなかったので登記も株主総会も法律に沿った運用ができていなかった、と経営者が言うことはできませんので、特に設立の段階でインターネット上の定款を利用する場合は気を付けていただければと思います。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。