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代表司法書士 石川宗徳の 所長ブログ&コラム

募集株式の発行において期日後の払込みによる失権と返還請求権の現物出資(DES)

募集株式の発行と払込期日

募集株式を発行するときは、非公開会社は株主総会の決議によって(会社法第199条2項)、公開会社は取締役会の決議によって募集事項を定めます(会社法第201条1項)。

募集株式の引受人は、募集事項の払込期日又は払込期間内に、金銭出資の場合は株式会社が定めた払込みの取扱い場所において払込金額の全額を払い込む必要があり(会社法第208条1項)、現物出資の場合は払込金額の全額に相当する現物出資財産を給付しなければなりません(会社法第208条2項)。

払込期日まで、又は払込期間内に出資の履行を行わなかった引受人は、当該出資の履行をすることにより募集株式の株主となる権利を失います(会社法第208条4項)。

払込期日又は払込期間が経過した後の出資

払込期日又は払込期間が経過してしまった後は、当該期日又は期間を延長することはできません。

払込期日又は払込期間が経過してしまった後に出資の履行が行われた場合、当該出資の履行を募集株式の発行に関する払込みとして扱うことはできませんので、当該引受人は当該募集株式の株主となることができません。

金銭を払い込んだ引受人が失権した場合、会社には当該払込みに係る金銭を返還する義務があり、失権した引受人は当該金銭の返還を請求する権利が生じます。

増資を改めて行うのであれば、払込期日又は払込期間が経過した後の払込みに係る金銭は変換し、改めて株主総会の特別決議等によって募集事項を定め、引受人に再度出資の履行をしてもらうことになるでしょう。

返還請求権をDESする

払込期日又は払込期間を経過した後に会社へ払い込んだ出資金100万円(仮)につき、上記のとおり会社にはそれを返還する義務が生じています。

株式会社の募集株式の発行においては金銭以外の財産を出資の目的とすることもできますので(会社法第199条1項3号)、募集株式の発行を行う会社に対する債権も出資の目的とすることが可能です。

≫DES、です。

引受人はこの100万円の返還請求権という債権を、次の募集株式の発行において出資の目的とすることにより、会社と引受人の金銭のやり取りを省略することができます。

なお、この場合も、再度株主総会等において募集事項の決定を行う必要はあります。

相殺はできない

引受人としての出資履行債務と、以前に出資金として会社に振り込んだ金銭の返還請求権は相殺することができません(会社法第208条3項)。

会社法第208条3項

募集株式の引受人は、第一項の規定による払込み又は前項の規定による給付(以下この款において「出資の履行」という。)をする債務と株式会社に対する債権とを相殺することができない。

一方で、返還請求権という債権を現物出資することは可能です。

募集事項について、会社法第199条1項3号の「金銭以外の財産を出資の目的とするときは、その旨並びに当該財産の内容及び価額」として当該返還請求権を特定し、定めることになります。

DESの登記に関する特有の添付書類

募集事項で現物出資について定めたときは検査役の選任の申立てをしなければならないところ(会社法第207条1項)、会社法第207条9項各号に該当する場合はそれが不要です。

非公開会社において債権を現物出資するときは、次のいずれかに該当することがほとんどであるため、検査役の選任の申立てが行われることはあまりありません。

  1. 引受人に割り当てる株式の総数が発行済株式の総数の10分の1を超えない
  2. 現物出資の価額の総額が500万円を超えない
  3. 発行会社に対する弁済期が到来している金銭債権であって、募集事項として定めた現物出資の価額が当該金銭債権に係る負債の帳簿価額を超えない

検査役の選任が不要であることを示すため、DESの登記申請の添付書類として、上記3に該当する場合は会計帳簿等を添付します。

上記1又は2に該当する場合は、その事実が登記簿や募集事項から分かるため、会計帳簿等を添付する必要はありません。

数字に関しては顧問税理士の先生へ確認

100万円の返還請求権を100万円と評価して良いか、引受人に対して付与する株式数は何株にするか等、数字に関しては顧問税理士の先生へご確認いただきながら進めるのがよろしいかと思います。


この記事の著者

司法書士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

RSM汐留パートナーズ司法書士法人では、
商業登記不動産登記相続手続き遺言成年後見など、
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