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代表司法書士 石川宗徳の 所長ブログ&コラム

【ケース別】株式会社の設立時、定款認証で求められる実質的支配者の特定

株式会社の設立と定款認証

株式会社を設立するには、発起人が定款を作成しなければならず(会社法第26条1項)、発起人が作成した定款は、公証人の認証を受けなければ、その効力を生じません(会社法第30条1項)。

発起人が作成した定款につき公証人の認証を受けるときは、定款認証の嘱託人は、法人成立の時に実質的支配者となるべき者について、その氏名、住居、生年月日等と、その者が暴力団員等に該当するか否かを公証人に申告する必要があります。

≫新たな定款認証制度について – 日本公証人連合会

実質的支配者となるべき者

実質的支配者となるべき者の特定は次のとおりです。なお、株主が「当該会社の事業経営を実質的に支配する意思又は能力がないことが明らかな場合」に該当しないことを前提としています。以下同じです。

設立する会社の議決権の総数の50%を超える議決権を直接又は間接に有する自然人となるべき者(この者が当該会社の事業経営を実質的に支配する意思又は能力がないことが明らかな場合を除く。)
①に該当する者がいない場合は、設立する会社の議決権の総数の25%を超える議決権を直接又は間接に有する自然人となるべき者(この者が当該会社の事業経営を実質的に支配する意思又は能力がないことが明らかな場合又は他の者が設立する会社の議決権の総数の50%を超える議決権を直接又は間接に有する場合を除く。)
①及び②のいずれにも該当する者がいない場合は、出資、融資、取引その他の関係を通じて、設立する会社の事業活動に支配的な影響力を有する自然人となるべき者
①、②及び③のいずれにも該当する者がいない場合は、設立する会社を代表し、その業務を執行する自然人となるべき者

直接保有とは、例えば、自然人Aが、甲株式会社の議決権のある株式を自ら直接有していることをいいます(犯収法施行規則第11条第3項第1号)。

間接保有とは、例えば、自然人Aが、甲株式会社の株主である乙株式会社を介して間接的に甲株式会社の議決権のある株式を有していることをいいます。この場合において、間接保有というためには、自然人Aは、乙株式会社の50パーセントを超える議決権を有していることが要件となります(犯収法施行規則第11条第3項第2号)。
≫実質的支配者リスト制度Q&A 法務省

以下、設立する株式会社の実質的支配者は誰になるのか見ていきます。

発起人が自然人1名

発起人が自然人Aのみである株式会社においては、Aが実質的支配者に該当します。

発起人
Aの議決権比率
実質的支配者
A
100%
A

発起人が自然人2名

発起人が自然人ABの2名である株式会社においては、実質的支配者は次のとおりです。

発起人
Aの議決権比率
Bの議決権比率
実質的支配者
AB
51%
49%
A
AB
50%
50%
AB
AB
0%(無議決権)
100%
B

発起人が自然人3名

発起人が自然人ABCの3名である株式会社においては、実質的支配者は次のとおりです。

発起人
Aの議決権比率
Bの議決権比率
Cの議決権比率
実質的支配者
ABC
51%
26%
23%
A
ABC
50%
25%
25%
A
ABC
50%
26%
24%
AB

発起人が自然人4名

発起人が自然人ABCDの4名である株式会社においては、実質的支配者は次のとおりです。

発起人
Aの議決権比率
Bの議決権比率
Cの議決権比率
Dの議決権比率
実質的支配者
ABCD
51%
26%
12%
11%
A
ABCD
50%
26%
12%
12%
AB
ABCD
30%
30%
30%
10%
ABC
ABCD
25%
25%
25%
25%
代表取締役Z

※設立する株式会社の代表取締役Zが実質的支配者となることにつき、上記③「出資、融資、取引その他の関係を通じて、設立する会社の事業活動に支配的な影響力を有する自然人となるべき者」がいないことを前提としています。以下同じです。

発起人に法人が含まれる場合

発起人に法人(以下、株式会社を想定しています)が含まれる場合は、「議決権を間接に有する自然人」に注意をする必要が出てきます。

設立する株式会社の唯一の発起人たる法人Oにつき、その100%株主が法人Pであり、法人Pの100%株主が法人Qであり、法人Qの議決権の50%超を保有している株主Aは、設立する株式会社の実質的支配者に該当します。

法人を何層に重ねる場合も、最終的な実質的支配者たる自然人を探すことになり、発起人が海外法人だと大変なケースもあります(発起人たる法人の議決権の50%超を保有している株主がいない場合、設立する株式会社の代表取締役が実質的支配者に該当します)。

なお、発起人が国、地方公共団体、上場会社等及びその子会社の場合は、自然人とみなされます。以下、「法人」とは国、地方公共団体、上場会社等及びその子会社でないことを前提としています。

発起人が法人1社

発起人が法人Xの1社である株式会社においては、実質的支配者は次のとおりです。

発起人
Xの議決権比率
実質的支配者
X
100%
※1

※1
1. 法人Xの議決権の50%超を有する者(B)がいる場合は、株式会社の実質的支配者はBです。
2. 法人Xの議決権の50%超を有する者がいない場合は、株式会社の実質的支配者は設立する株式会社の代表取締役Zです。

発起人が自然人1名、法人1社

発起人が自然人A及び法人Xである株式会社においては、実質的支配者は次のとおりです。

発起人
Aの議決権比率
Xの議決権比率
実質的支配者
AX
51%
49%
A
AX
50%
50%
※1
AX
49%
51%
※2
AX
10%
90%
※3

※1
1. Aが法人Xの議決権の50%超を有する場合は、株式会社の実質的支配者はAです。
2. 法人Xの議決権の50%超を有する者(B)がいる場合は、株式会社の実質的支配者はA及びBです。
3. 法人Xの議決権の50%超を有する者はいない場合は、株式会社の実質的支配者はAです。

※2
1. 法人Xの議決権の50%超を有する者(B)がいる場合は、株式会社の実質的支配者はBです。
2. 法人Xの議決権の50%超を有する者がいない場合は、株式会社の実質的支配者はAです。

※3
1. 法人Xの議決権の50%超を有する者(B)がいる場合は、株式会社の実質的支配者はBです。
2. 法人Xの議決権の50%超を有する者がいない場合は、株式会社の実質的支配者は設立する株式会社の代表取締役Zです。

発起人が法人2社

発起人が法人X、法人Yの2社である株式会社においては、実質的支配者は次のとおりです。

発起人
Xの議決権比率
Yの議決権比率
実質的支配者
XY
50%
50%
※1
XY
51%
49%
※2
XY
90%
10%
※3

※1
1. 法人X、法人Yのいずれにもその議決権の50%超を有する者(法人XにおいてB、法人YにおいてC)がそれぞれいる場合は、株式会社の実質的支配者はB及びCです。
2. 法人Xの議決権の50%超を有する者(B)はいるが、法人Yの議決権の50%超を有する者がいない場合、株式会社の実質的支配者はBです。
3. 法人X、法人Yのどちらにもその議決権の50%超を有する者がいない場合は、株式会社の実質的支配者は設立する株式会社の代表取締役Zです。

※2
1. 法人Xの議決権の50%超を有する者(B)がいる場合は、株式会社の実質的支配者はBです。
2. 法人Xの議決権の50%超を有する者はいないが、法人Yの議決権の50%超を有する者(C)がいる場合は、株式会社の実質的支配者はCです。
3. 法人X、法人Yどちらにもその議決権の50%超を有する者がいない場合は、株式会社の実質的支配者は設立する株式会社の代表取締役Zです。

※3
1. 法人Xの議決権の50%超を有する者(B)がいる場合は、株式会社の実質的支配者はBです。
2. 法人Xの議決権の50%超を有する者がいない場合は、株式会社の実質的支配者は設立する株式会社の代表取締役Zです。


この記事の著者

司法書士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

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商業登記不動産登記相続手続き遺言成年後見など、
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