商業登記関係 一般社団法人の基金制度とその募集、引受けに関する手続き
このページでは一般社団法人及び一般財団法人に関する法律を「法人法」といいます。
一般社団法人の基金制度
一般社団法人には資金調達の方法として基金制度があり、その特徴は次のとおりです。
- 利用するには定款の定めが必要
- 引受けるには法定の手続きを踏むことが必要
- 金銭以外の財産を拠出することも可能
- 返還義務がある
- 拠出された金銭等の使途に法令上の制限がない
- 拠出者と社員の地位は必ずしも結びつかない
ここでは、一般社団法人における基金の引受け手続きについて記載しております。
基金に関する定款の定めを設ける
一般社団法人は、基金を引き受ける者の募集をすることができる旨を定款で定めることができます(法人法第131条)。
基金を募集する一般社団法人が定款に上記定めを置いていないときは、この定めを置く必要があります。定款の変更は、社員総会の特別決議(法人法第49条)によって行います(法人法第146条)。
定款に基金の定めを置くときは、次に掲げる事項を定めます(法人法第131条)。
- 基金の拠出者の権利に関する規定
- 基金の返還の手続
募集事項の決定
一般社団法人が基金の募集をしようとするときは、その都度、次に掲げる募集事項を定めます(法人法第132条1項)。
- 募集に係る基金の総額
- 金銭以外の財産を拠出の目的とするときは、その旨並びに当該財産の内容及びその価額
- 基金の拠出に係る金銭の払込み又は前号の財産の給付の期日又はその期間
決議機関は理事会(理事会非設置法人は社員総会又は理事の過半数の一致)とされており、設立前に基金を募集するときは、設立時社員の全員の同意を得る必要があります。
一般社団法人から引受人への通知
一般社団法人は、基金の募集に応じて基金の引受けの申込みをしようとする者に対し、次に掲げる事項を通知します(法人法第133条1項)。
- 一般社団法人の名称
- 募集事項
- 金銭の払込みをすべきときは、払込みの取扱いの場所
- 上記に掲げるもののほか、法務省令で定める事項
引受人からの基金の申込み
基金の引受けの申込みをする者は、次に掲げる事項を記載した書面を一般社団法人に交付します(法人法第133条2項)。これを書面に代えて、一般社団法人の承諾を得て電磁的方法により提供することもできます(法人法第133条3項)。
- 申込みをする者の氏名又は名称及び住所
- 引き受けようとする基金の額
基金の割当て
一般社団法人は、申込者の中から基金の割当てを受ける者を定め、かつ、その者に割り当てる基金の額を定めます(法人法第134条1項)。この割当てにおいて一般社団法人は、当該申込者に割り当てる基金の額につき、申込みのあった基金の額よりも減額することができます。
この決議機関は理事会(理事会非設置法人は社員総会又は理事の過半数の一致)です。
割り当てる基金の額を決定したときは、一般社団法人は、払込期日(払込期間を定めた場合はその期間の初日)の前日までに、申込者に対し、当該申込者に割り当てる基金の額を通知します(法人法第134条2項)。
申込み+割当てに代えて総数引受契約
上記の「一般社団法人から引受人への通知」「引受人からの基金の申込み」「基金の割当て」は、一般社団法人と、基金を引き受けようとする者がその総額の引受けを行う契約を締結する場合には、適用しません(法人法第135条)。
総数引受契約方式を用いると、法人法第134条2項の「前日までに割当ての通知を行う」必要がなくなるため、基金の募集を最短一日で行うことができます。
総数引受契約は、募集事項で定めた基金の総額を引き受ける内容である必要があり、複数名で引き受ける場合は同一の機会に一体的に締結された内容であることが求められます。
基金の拠出の履行
金銭による基金の引受人は払込期日又は払込期間内に、払込みの取扱いの場所において、それぞれの基金の払込金額の全額を払い込みます(法人法第138条1項)。この拠出の履行をしないときは、基金の引受けは、その効力を失います(法人法第138条4項)。
現物拠出財産を窮する基金の引受人は払込期日又は払込期間内に、それぞれの基金の払込金額に相当する現物拠出財産を給付します(法人法第138条2項)。
基金の引受人は、上記払込みをする債務と弁済期限の到来していない一般社団法人に対する債権とを相殺することはできません。
金銭以外の財産の拠出
一般社団法人は、募集事項で金銭以外の財産を拠出の目的としたときは、募集事項の決定の後遅滞なく、その財産の価額を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをしなければなりません(法人法第137条1項)。
募集事項の現物拠出に係る価額の総額が500万円を超えない場合、現物拠出の財産が市場価格のある有価証券の場合、現物拠出財産が一般社団法人に対する弁済期の到来している金銭債権であってその価額が当該金銭債権に係る負債の帳簿価額が超えない場合等、一定の場合は検査役の選任は不要です(法人法第137条9項)。
基金の拠出者となる時期
基金の引受人は、払込期日まで又は払込期間の最終日までに出資の履行をした場合、次の日に基金の拠出者となります(法人法第139条1項)。
- 払込期日を定めた場合:当該期日
- 払込期間を定めた場合:拠出の履行をした日
一般社団法人の成立前に基金を引き受ける者の募集をした場合には、一般社団法人の成立の時に、拠出の履行をした基金の拠出者となります(法人法第139条2項)。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。