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代表司法書士 石川宗徳の 所長ブログ&コラム

これから増資をするが、増加する資本金の額が確定していないことを前提とする資本金の額の減少(減資)

増資を前提とする減資

募集株式の発行により資本金の額が増加(増資)をすることを前提として、その増加した資本金の額を減少(減資)することがあります。

事業年度末が8月31日の株式会社Xにおいて、7月の資本金の額が1億円であり、同年8月中に資本金の額が5億円増加して(増資後の資本金の額は6億円)、同年8月31日までに資本金の額を1億円まで減少させるようなケースです。

減資の手続きにおいては債権者保護手続きの方法及びそのスケジュールを検討することが多く、増資の効力は生じたのに減資が事業年度末までに間に合わないと、株式会社Xは資本金の額が6億円の状態で期をまたぐことになってしまいます。

≫株式会社の資本金の額の減少(減資)手続きと登記

債権者保護手続きと減少する資本金の額

資本金・資本準備金の額の減少に係る債権者保護手続きにおいて、官報に掲載する公告の内容の一つに「当該資本金等の額の減少の内容」があります(会社法第449条2項1号)。

資本金の額の減少手続きにおいてこの「当該資本金等の額の減少の内容」は、「減少する資本金の額」及び「減少する資本金の額の全部又は一部を準備金とするときは、その旨及び準備金とする額」とされており(会社法第447条1項1号、2号)、(a)この「減少する資本金の額」は減資がその効力を生ずる日における資本金の額を超えてはなりません(会社法第447条2項)。

上記(a)はあくまで減資の効力発生日がベースのため、株式会社Xが7月現在の資本金の額1億円でも、(8月に5億円増資することを前提として)5億円減資する旨の債権者保護手続きを7月にスタートさせることは可能です。

増資はするが、増加する資本金の額が確定していない場合

官報公告の申込みをする時点で減少する資本金の額が確定していれば話は早いのですが、8月末までに減資する場合の官報公告の申込期限までに投資家からの出資額が確定しないということもあり得ます。

上記の申込期限は、貸借対照表の公告方法が電子公告かどうか、そうでない場合は決算公告を既にしているかどうかによって異なりますが、公告方法が官報で、かつ、決算公告をしていない株式会社においては7月12日~15日でしょうか。7月・8月の土日祝日も考慮してスケジュールをご検討ください。

なお、公告方法が官報でまだ決算公告をしていない株式会社の場合、決算公告だけ先に(例えば7月上旬までに)済ませておくことで決算公告+減資公告の同時公告せずに済むことから、同時公告をするよりも「減少する資本金の額」の確定を5営業日程度遅らせることが可能となります。

ところで、前述のとおり減資における債権者保護手続きに係る官報公告の内容は「減少する資本金の額」であり、「減少後の資本金の額」だけでは足りません。

総出資額が確定するまで官報公告の申込みを待てれば良いのですが、出資が決算月(8月)に行われ、同月中に減資まで完結したいというニーズも少なくありません。

増加する資本金の額を減少させる旨の公告(募集株式の発行)

株式会社Xが8月に増資はするがその増資額につき、減資における債権者保護手続きに係る官報公告の申込日までに確定しない場合は減資をすることができないのでしょうか。

この場合、「減少する資本金の額」の確定した数字を官報公告に掲載することができない点が気になります。

確定した「減少する資本金の額」は出せませんが、「減少する資本金の額」は「8月に増加する資本金の額」であり、8月に増加する資本金の額以上は資本金の額が減少しない=減少後の資本金の額は確定していると言えます。

このような場合は、8月の募集株式の発行により増加する資本金の額を減少させる旨の官報公告+債権者への個別催告(又はダブル公告)をすることになります。

官報公告の掲載例は次のとおりです(決算公告との同時公告、減少する資本金の額全部をその他資本剰余金に振り替える想定)。公開されている他社事例を参考にしています。

資本金の額の減少公告
 当社は、令和●●年●●月●●日から令和●●年●●月●●日までの日を払込期間とする株式の発行があった場合には、資本金の額を当該株式発行により増加する資本金の額と同額分減少することにいたしました。
 この決定に対し異議のある債権者は、本公告掲載の翌日から一箇月以内にお申し出下さい。
 なお、最終貸借対照表の要旨は次のとおりです。
 令和●●年●●月●●日
  東京都港区東新橋10丁目1番1号
  汐留太郎株式会社 
  代表取締役 汐留太郎

なお、弊社でもこのような減資手続きを行ったことはありますが、この官報公告の掲載内容で減資が確実にできることを弊社が保証するものではありません(下記2項の減資も同様です)

期末ギリギリに効力を生じさせる減資は失敗することができないため、事前に法務局に照会をする等しておくのが無難かと思います。

固定の額+増加する資本金の額を減少させる旨の公告(募集株式の発行)

株式会社Yの現在の資本金の額が2億円で、8月中に増資を予定しているがその増資額が減資に係る官報公告掲載の申込みまでに確定しないけれども、8月末までに資本金の額を1億円としたいようなケースもあるかもしれません。

この場合も、前項と考え方は基本的に同じです。

資本金の額の減少公告
 当社は、資本金の額を●●円減少し、また、令和●●年●●月●●日から令和●●年●●月●●日までの日を払込期間とする株式の発行があった場合には、資本金の額を当該株式発行により増加する資本金の額と同額分減少することにいたしました。
 この決定に対し異議のある債権者は、本公告掲載の翌日から一箇月以内にお申し出下さい。
 なお、最終貸借対照表の要旨は次のとおりです。
 令和●●年●●月●●日
  東京都港区東新橋10丁目1番1号
  汐留太郎株式会社 
  代表取締役 汐留太郎

(決算公告との同時公告、減少する資本金の額全部をその他資本剰余金に振り替える想定)

増加する資本金の額を減少させる旨の公告(新株予約権の行使)

新株予約権が行使されたときに、新たに株式を発行して交付するときは、資本金の額が増加します(会社計算規則第17条)。

株式会社Xにおいて7月後半から8月末にかけて新株予約権が行使され、引き換えに新株を発行して交付するときは資本金の額が増加しますので、8月末時点の着地となる資本金の額につき新株予約権が行使されることを考慮して減資をすることも考えられます。

行使される新株予約権の個数(=増加する資本金の額)があらかじめ分かっているのであれば、官報公告の申込期限までに当該増加する資本金の額を織り込んで減資額を確定し、債権者保護手続きをスタートすることができます。

新株予約権に行使により8月末までに増加する資本金の額が多くとも5000万円ということが分かっているのであれば、減資後の資本金の額を5000万円と設定して減資手続きを進めることで、8月末の資本金の額を1億円以下にすることができるでしょう(株式会社Xにおいては減少する資本金の額:5.5億円)。

一方で、前2項同様に、新株予約権が行使された場合はその行使によって増加する資本金の額を減資する旨の官報公告も可能であると考えられます。


この記事の著者

司法書士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

RSM汐留パートナーズ司法書士法人では、
商業登記不動産登記相続手続き遺言成年後見など、
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