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代表司法書士 石川宗徳の 所長ブログ&コラム

いわゆる100%減資

100%減資とは

100%減資とは会社法上の言葉ではなく、行為の総称として100%減資という呼び方をしていましたので、厳密には「いわゆる100%減資」(以下、単に100%減資といいます)ということになります。

100%減資とは、会社再建スキームの一つとして用いられることのある手法で、債務超過に陥ってしまっている会社が、

  1. 既存の株主に責任を取ってもらうべく出て行ってもらうために会社が株式を取得し、
  2. 資本金を欠損の填補に充て、
  3. 取得した株式を消却し、
  4. 新しい出資者に出資をしてもらう

ことによる新しいスタートを切るために、一般的に次のような手続きをすることをいいます。

  1. 既存の株主から株式を全部取得する ⇒ 既存の株主に出て行ってもらう
  2. (資本金を0円とする)減資を行う ⇒ 欠損填補
  3. 上記1.により取得した株式の消却
  4. 会社再建支援者である出資者から出資をしてもらう(新しく株式を発行)
旧商法時代

債務超過に陥っている会社の法的再建手続き以外の方法で資本金をゼロとする100%減資を行うには、株主全員の同意を得ることが必要であり、特に株主が多い会社においては、それが手続き上のネックとなっていました。

目的を達成するには減資は必須ではありません

100%減資という名前のとおり、資本金の全額を欠損填補に充てるために資本金を0円とすることが会社法以前の手続きでしたが(会社法以後も行うことはできます)、出資者が欠損を填補できるだけの出資を行えば、あるいは再生手続きによる負債カットの免除益により欠損填補の必要性がなくなれば上記2.の減資をする必要もありません。

自己株式の消却も必須ではありません

加えて、上記3.(株式の消却)も必ずしなくてはならない手続きではありません。会社法においては、発行済みの株式と資本金は連動しているものではなく、それぞれ手続きを含めて独立したものとなっているため、上記2.の減資と合わせて株式数を減らすことは必須ではありません。既存の株主から取得した自己株式を、新しい株主へ交付することも可能です。

ただし、上記1.については新しい出資者や既存債権者が既存株主が株主として存続OKと言えば必須ではありませんが、そんなことはほとんどありません。債権者としては株主にも債務超過の責任を取ってもらうこと、新しい出資者が自分以外に株主がいることにより議決権が薄まることを嫌がることなどからです。

全部取得条項付種類株式を用いたスキーム

全部取得条項付種類株式を利用した、100%減資(と同様の効果を得る)の方法。(減資も株式消却も行わない場合)

(普通株式)100株の会社
1.種類株式の設定

全部取得条項付種類株式を発行するには、定款に異なる2以上の種類の株式を発行する旨の定めのある会社でなくてはなりません(会社法第108条1項)。そこで、新しく追加で種類株式を発行することができる旨を定款に定めるために、株主総会の特別決議を得ます。

≫種類株式の基本

なお、この新しく追加された種類株式は、実際には発行していなくても構いません。実際に発行することはないため、ここでは新しく追加された種類株式の内容を適当にとりあえず、残余財産の配当劣後株式とします。

普通株式 100株、残余財産配当劣後株式 0株
2.発行済株式を全部取得条項付株式へ変更

既に発行されている株式(普通株式100株)を、全部取得条項付種類株式に変更する旨の定款変更のために株主総会の特別決議を得ます。また、種類株式(普通株式のこと)の内容を変更することになるので、既に発行されている株式(普通株式)の株主による種類株主総会の特別決議を得ます(会社法第111条2項)。

全部取得条項付種類株式 100株、残余財産配当劣後株式 0株
3.全部取得条項付株式の全部取得

株主総会の特別決議によって、会社が全部取得条項付種類株式を取得します。

※平成27年5月1日に施行された平成26年改正会社法により、株主に対する通知または公告(会社法第172条)、事前備置・事後備置手続き(会社法第171条の2会社法第173条の2)の手続きが必要になりました。

全部取得条項付種類株式 100株(自己株式)、残余財産配当劣後株式 0株
4.募集株式の発行

(非公開会社は)株主総会決議及び取締役会決議によって、会社再建支援者(新しく出資をしてくれる人)に募集株式を発行します。上記3)で取得した自己株式である全部取得条項付種類株式を交付することもできるとの見解があります。

全部取得条項付種類株式100株、残余財産配当劣後株式 0株
5.普通株式へと変更

全部取得条項付種類株式を普通株式へと変更し、また残余財産配当劣後株式を消去する定款変更のため株主総会の特別決議を得ます。

普通株式 100株

資本金0まで減資、自己株式消却、募集株式発行、資本金の増加を1セットですると手続き期間が長くなり、登録免許税が高くなる。

従来の100%減資のように、取得した自己株式(全部取得条項付種類株式)を消却し、資本金を減少して欠損に充て、新しく株式を発行することによって資本金を増加させることもできます。

その方が視覚に訴えるというか、分かりやすさがあるようにも思います。

しかし減資の手続きには(増資をすることが決まっていても)債権者保護手続きを取る必要があり、公告申し込みから保護手続き期間が満了するまで約1.5ヶ月かかります。公告費用や債権者への個別催告費用もかかります。

また、減資・増資を同時に行った場合、例えば資本金が4000万円→0円(減資)→5000万円(増資)と変動すると、資本増加分にかかる登録免許税は、手続き前と手続き後の差額である1000万円(5000万円-4000万円)ではなく、5000万円(5000万円-0円)に対してかかることになってしまいます(5000万円×1000分の7=35万円)。
(資本金4000万円から5000万円への変更登記のみをすることはできません。必ず0円を経由します。)

その点、既存の株主から取得した自己株式を、そのまま会社再建支援者に交付することにより、減資の費用及び資本金増加の費用は不要(資本金変動なし)とすることができるという見解があり、この方法によると登録免許税を抑えることができます。


この記事の著者

司法書士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

RSM汐留パートナーズ司法書士法人では、
商業登記不動産登記相続手続き遺言成年後見など、
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