商業登記関係 【設立/2024年12月1日】株式会社の定款認証に係る公証人手数料の一部改定
株式会社
株式会社を設立するには、発起人が定款を作成し(会社法第26条1項)、作成した定款は公証人の認証を受けなければ、その効力を生じません(会社法第30条1項)。
株式会社を設立するために発起人が作成した定款につき、公証人の認証を受けるときはその手数料が発生し、当該手数料は公証人手数料令第35条に定められています。
令和6年11月22日に公証人手数料令の一部を改正する政令が公布され、令和6年12月1日から施行されたことにより、この公証人手数料が改定されています。
≫公証人手数料令の一部を改正する政令の公布について(日本公証人連合会)
公証人手数料の改定
公証人手数料令第35条第1号の規定が改正されたことにより、下記のいずれにも該当する場合は、資本金の額等※が100万円未満の株式会社の定款認証に係る公証人の手数料は「3万円」→「1万5000円」となりました。
- 発起人の全員が自然人であり、かつ、その数が3人以下であること。
- 定款に発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける旨の記載又は記録があること。
- 定款に取締役会を置く旨の記載又は記録がないこと。
①100万円未満(上記のいずれにも該当する場合) | |
②100万円未満(上記①以外の場合) | |
③100万円以上、300万円未満 | |
④300万円以上 |
3人以下の個人出資(出資額計100万円未満)に係る発起設立において、取締役会を置かない株式会社の定款認証フィーを半分としたことから、そのような条件における(比較的小規模な)株式会社の設立のハードルを下げたい意図が伺えます。
一例として資本金50万円の1人法人(発起人=取締役=A氏1人)の設立においては恩恵がありますが、資本金の額によって法人口座の開設に影響が出る可能性があることは聞くところであり、また、資本金の額は100万円・300万円等のキリのよい数字とする例も少なくないことから、区切りを「100万円未満」ではなく「100万円以下」とする方がより起業家にとっては恩恵がありそうです。
なお、あくまで会社設立後のビジネスが本線ですので、資本金500万円としてそれに見合った創業融資を受ける、あるいは会社の信用を増す予定であったり、最初から取締役会を設置して大きくスタートしようと思っているところ、公証人の手数料を減額するために上記条件に当てはまる形でスタートするのは本末転倒でしょう。
定款認証におけるその他の費用
電子定款の認証を受け、同一情報の提供(書面による定款の謄本の交付)を受けるというよくあるケースにおいては、上記の公証人手数料以外に次の手数料もかかります。
- 電磁的記録の保存手数料:300円
- 同一情報の提供手数料:1通につき700円+(20円×ページ数)
資本金の額が500万円の定款認証に係る費用は、電子定款の認証を受け書面による定款の謄本も請求する場合、約51,200円程度となります(定款のページ数によって数十円変わります)。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。