商業登記関係 J-KISS型新株予約権の転換期限の延長と登記
J-KISS型新株予約権の転換期限
新株予約権はその行使の条件を満たし、その行使することができる期間の範囲において行使をすることができます。
J-KISS型新株予約権(以下、ver.2-0を前提とします)の行使の条件は次の2点です。
(b)前(a)号にかかわらず、次回株式資金調達が転換期限までに発生しない場合における本新株予約権の行使は、本新株予約権(同種新株予約権を含む。以下本(b)号において同じ。)の発行価額の総額の過半数の本新株予約権の保有者がこれを承認した場合に限り行うことができる。
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次回株式資金調達が転換期限までに発生せず、支配権移転取引等を発行会社が承認していない状況においては、J-KISS型新株予約権(同種新株予約権を含む)の発行価額の総額の過半数の当該新株予約権の保有者がこれを承認した場合に限り、転換期限が経過した後にJ-KISS型新株予約権は行使できるようになります。
以下、支配権移転取引等を発行会社が承認していないことを前提とします。
転換期限
J-KISS型新株予約権の転換期限は、デフォルトで「割当日の18ヶ月後の応当日」と定められています。なお、J-KISS型新株予約権を発行する際に、投資家との交渉においてこの転換期限をデフォルトのものから変更することは可能です。
割当日が2026年10月10日である場合、割当日の18ヶ月後の応当日は2028年4月10日です。
転換期限と転換価額
J-KISS型新株予約権の転換価額は、デフォルトでは、次回株式資金調達における1株あたり発行価額にディスカウント率を乗じた額と、ポストキャップを完全希釈化後株式数で除して得られる額のいずれか低い額となるところ、転換期限経過後に行使されるときは、後者が転換価額となります。
転換期限までに次回株式資金調達が生じる予定がなく、発行会社と当該新株予約権者が転換期限を伸長することを望む場合は、転換期限を伸長する手続きをします。
転換期限が到来する前に、転換期限の変更の効力が生じるようスケジュールしておきます。
転換期限の変更手続きと登記
J-KISS型新株予約権の転換期限は新株予約権の内容の一部(会社法第236条)として定められているため、これを変更するときは原則として、当該新株予約権の新株予約権の発行を決議した機関による決議と当該新株予約権者全員の同意が必要です
J-KISS型新株予約権の発行を株主総会で決議した場合における転換期限の変更手続きは次のとおりです。なお、会社法上の手続きではありませんが、株主間契約等において事前通知・承諾が必要な場合は当該手続きも行います。
- 株主総会の招集の決定
- 株主総会の開催
- J-KISS型新株予約権者の同意
- 登記申請
1.株主総会の招集の決定
株主総会においてJ-KISS型新株予約権の内容の変更を決議するため、取締役の決定(取締役会設置会社においては取締役会の決議)により株主総会の招集を決定します(会社法第298条1項)。
株主総会をみなし決議(会社法第319条1項)で行う場合も、会社法上は求められていないものの、株主へ提案する事項を取締役(取締役会設置会社においては取締役会)が決定することも多い印象です。
対象新株予約権の発行を株主総会だけではなくその目的となる株式の種類の種類株主総会においても決議している場合は(会社法第238条4項)、原則として当該種類株主総会の決議も求められます。
2.株主総会の開催
J-KISS型新株予約権の転換期限を変更する株主総会の(種類株主総会も必要な場合は種類株主総会も併せて)特別決議により承認します。変更案の30ヶ月という数字は一例です。
| 前号にかかわらず、割当日の18ヶ月後の応当日(以下「転換期限」という。)以降における転換価額は、ポストキャップを第(5)(b)号に基づく承認がなされた日における完全希釈化後株式数で除して得られる額(小数点以下切上げ)とする。 | 前号にかかわらず、割当日の30ヶ月後の応当日(以下「転換期限」という。)以降における転換価額は、ポストキャップを第(5)(b)号に基づく承認がなされた日における完全希釈化後株式数で除して得られる額(小数点以下切上げ)とする。 |
当該新株予約権の変更日は、株主総会で具体的に定めない限り株主総会決議日が変更日になりますが、当該変更の効力が生じるまでに対象新株予約権の保有者全員から同意を得ておくことが多いでしょう。
株主総会の決議において、新株予約権の内容変更の効力発生日を対象新株予約権の保有者全員から同意を得た日と定めた株主総会議事録をもって登記審査が通った例もあります。
3.J-KISS型新株予約権者の同意
J-KISS型新株予約権者全員から当該新株予約権の内容変更について同意を得ます。
契約等において別段の定めをしていない限り同意の方法の指定はありませんが、同意があったことを証する書面は登記申請の添付書類となるため書面を用意するか、クラウドサイン等の電子署名がされたデータを用意することになります。
この同意の日付は株主総会の前・後どちらでも問題ありませんが、変更の効力発生が生じるまでに同意を得ておくのが良いでしょう。
登記申請
新株予約権の内容の変更日から2週間以内に、その本店の所在地において変更の登記を申請します(会社法第915条1項)。
この登記の添付書面の一例は次のとおりです。事例に応じて変わる可能性があります。
- 株主総会議事録
- 株主リスト
- 変更の対象となる新株予約権者全員の同意書
この登記の登録免許税は3万円です。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。





